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〈Seikyo Gift〉 HSC(人一倍、敏感な子)・不登校の居場所づくり〈信仰体験〉  2024年11月30日

  • 「自由に生きていいんだよ」
  • 人間は本来、学びたい生き物
HSC(人一倍、敏感な子)や不登校の子どもたちのための居場所「つむぐ」。代表の武藤さん㊧は「子どもには自ら成長する力が備わっていると信じています」と
HSC(人一倍、敏感な子)や不登校の子どもたちのための居場所「つむぐ」。代表の武藤さん㊧は「子どもには自ら成長する力が備わっていると信じています」と

 【神奈川県茅ケ崎市】「うちの子どもたちも必ず、学びたくなる時が来るはずです」。10歳の息子を筆頭に、3人の不登校の子育てに励む、武藤夏子さん(45)=副白ゆり長。多くの育児書を読む中で、わが子がHSC(人一倍、敏感な子)であることに気付いた。学校のような集団生活が苦手。ならばと、武藤さんは昨年、自宅を開放し、HSC・不登校の子どもたちのための居場所「つむぐ」を立ち上げた。(9月30日付)

(「HSC」とは、Highly Sensitive Childの略語)

 長男・大城さん(10)=小学4年=の起床は、いつも午前8時ごろ。続いて長女・妙さん(5)が目を覚ますが、次男・光城さん(7)=小学1年=は、まだ布団の中。夜更かしが大好きな少々お寝坊さん。
 3人とも、起きると大抵は朝食よりゲームが先。パソコンやタブレット端末で一遊び。武藤さんは「遊びも学びだから、好きなことをしていいよと伝えています」。
 HSCの子育ては、その子のペースを尊重することが大原則といわれる。人一倍の安心感が必要なのだ。

 「つむぐ」でも、武藤さんは不登校の子どもに同じ接し方を。「私は口出しせず、本人がやりたいことを手伝います」。子どもたちはゲームや工作、料理のほかにも、漫画を読んだり公園で遊んだりと、思い思いに楽しく過ごしている。
 「学校に行きたくなければ休んでもいい。勉強は大事ですが、学びたいという気持ちが一番大切なんです」
 不登校だった児童・生徒の成長体験を数多く学んできた。「とことん自身のやりたいことをすると、子どもは興味をもった分野を自ら勉強し始めるもの。人間は本来、学びたい生き物なんです」

 武藤さんが小学生の頃、好きで始めたものは、体操だった。跳馬・段違い平行棒・平均台・ゆかの4種目。楽しく続けていたが、高校生の時、練習中に左肘の靱帯を損傷。「回復を祈る母を見て、自分も祈ろうと発心しました」
 リハビリに励み、大会に出場できるまでに回復。体育大学に進学できたことが、信心の確信につながった。
 女子学生部時代は、幾度も池田先生との出会いが。師が発表した「教育提言」を学び、教育の道を志した。

 大学卒業後、高校の非常勤講師に。ところが日頃のストレスからか、うつ状態になり、20代で退職。御本尊の前で唱題をしたくても「体がついていかなくて……」。ベッドの上で題目を唱えた。
 脳裏には、以前に研さんした観心本尊抄の一節が。「観心とは、我が己心を観じて十法界を見る、これを観心と云うなり」(新125・全240)。“私の心にある仏界を信じ、自分らしい生き方を見つけよう!”
 この思いは、結婚し生まれたばかりの長男にも注がれた。気付くと、うつの症状は無くなっていた。

 長男が2歳の頃、夫・豊さん(45)=地区部長=が機械設計の会社を設立し、武藤さんは仕事を手伝うことに。「大城を保育園に預けようかしら」
 初めは順調だった。だがすぐに、行き渋るように。やがて嫌がりながら嘔吐し、退園を余儀なくされた。
 “何か障がいがあるようには思えない”。武藤さんは育児書を読みあさり、目に留まったのが、HSCだった。“これでは!?”
 感受性が強く、場の空気や人の感情を敏感に感じ取るHSCは、学校のような環境が疲れやすい。ただ病気や障がいではなく、生まれつきの特性。5人に1人の割合で該当することも分かった。

 とはいえ、「次男も生まれ、仕事と育児を自宅で同時に行うのは難しい……」。長男とのラリーが続いた。
 「幼稚園に行ってよ」
 「行かない」
 6歳の秋には、いちるの望みでランドセルを購入。“来年は、小学校に行ってくれたらいいな”。しかしその思いは打ち砕かれ、入学式から欠席だった。
 「この過程があったからこそ、わが子の居場所づくりを家でやろうと腹が決まったんです」
 自宅で「友達がほしい」と漏らす長男を見て、ある言葉が頭をよぎる。それは師の教育提言。「『社会のための教育』ではなく『教育のための社会』でなければならない」
 「つむぐ」の理念が定まった。

「つむぐ」でスイカ割り大会も
「つむぐ」でスイカ割り大会も

 不登校で始まった長男の小学校生活。夫に相談すると、少し意外な答えが返ってきた。
 「素直でいいな」
 小学生の頃、「自分も学校が好きではなかった」と豊さん。「でも通わなければいけない社会のプレッシャーに、知らず知らず屈していたのかな」と。自分らしく生きる長男を応援したいという。
 「つむぐ」がオープンすると、市外からも子どもが緊張した面持ちで母親と一緒に現れた。子どもは不登校だった。そんな相手の心をくみ取るのが上手なのも、HSCの特性の一つ。「長男は初めての人とも、仲良く遊ぶのが得意なんです」と、武藤さんはほほ笑む。

 かつての不安は希望に変わり、「将来が楽しみ」とも。長男は近頃、ものづくりに興味を持ち始めた。
 「きっと、最後に人生のつじつまが合うように、不登校だったことに価値を見いだす時が来るでしょう。そのためにも、師弟の道は親子で歩みたい」
 今年5月、池田先生の写真展を見るために、家族全員で神奈川池田記念講堂へ。帰り際、長男と一緒にもらった記念カードに、師の言葉がつづられていた。
 「二度とない人生。だれに遠慮がいるものか。花と咲け。花よ咲け。心に咲け。暮らしに咲け。大きく咲け」
 武藤さんは今日も、子どもたちに“自由に生きていいんだよ”と呼びかけている。

“子どもファースト”で皆が笑顔の武藤さん一家(左から長女・妙さん、武藤さん、長男・大城さん、夫・豊さんと次男・光城さん)
“子どもファースト”で皆が笑顔の武藤さん一家(左から長女・妙さん、武藤さん、長男・大城さん、夫・豊さんと次男・光城さん)
励ましの心で女性部の同志のもとへ
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