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〈ブラボーわが人生 信仰体験〉第137回 100歳のコーヒーいかが? 2024年6月1日

  • 「一遍の題目も、百万遍の題目も
  •  『信』が入らんといかんわけ」
客席にコーヒーを運ぶヨシノさん
客席にコーヒーを運ぶヨシノさん

  
 【福岡県筑紫野市】100歳になってどうですかとお尋ねすると、切れ長の目で「昨日の続きっちゅーわけで、何ともないわ」と表情ひとつ変えなかった。「煉瓦屋」という喫茶店を切り盛りする武石ヨシノさん(100)=地区副女性部長=である。整ったお化粧はハイカラで、いすに腰かけて足を組むところはエレガント。そして、今も働く理由がとってもステキ。
  

  
 ◇◆◇
  
 やっぱ、じっとしているのがキライっていうことかもね。休みでじっとしとくとですね、お化粧もしたくないのよ。人に顔を見せるっちゅーことはね、少し緊張するからですね、自分がしゃんとなるわけ。だから無理してもこうやって、店に出てるの。
 お金はいらん。お金よりか、健康なんよね、結局。この店は生きがいだから。コーヒー入れるの、楽しい。でないと、ここまでできない。
 ほら、最近あるじゃないですか、インスタグラムいうんですか。若い方がみえるようになったですね。100歳がサイホンでコーヒー入れよるのが、珍しいのよね。いまだに会計は、私がそろばんパチパチしよるわけ。みんな写真撮って、たまがっとる(たまげている)。
  

営業前にお花に水やりをするヨシノさん
営業前にお花に水やりをするヨシノさん
ヨシノさんの手作り。ときどきお客さんに差し上げるという
ヨシノさんの手作り。ときどきお客さんに差し上げるという

  
 やっぱ、題目のおかげですよ。題目あげることによってですね、前頭葉の刺激があるんだと思います。口を開けることが、ほうれい線に効く。テレビでそげん言いよった。題目あげると口を開けるからですね、美容にも良いみたい。
 小さな喫茶店やって、借金なく暮らせるんやからサイコー。最晩年でこういうステージがあるって幸せですよ。やっぱ、信心を続けてきたからですね、今があるのよね。
 いろいろ苦労しましたよ。
 主人(清さん)は旧家のおぼっちゃん。おじいさんが地方銀行の頭取だったから、道楽ばっかりで、稼ぐ道を知らんでからね。クリーニング、パチンコ店、せんべい屋……行き当たりばったりに手を出すけど、やることなすこと、うまくいかんの。
 借金は増えるし、実家には愛想つかされるし、どん底でしたねえ。それで昭和32年(1957年)に信心したわけ。
 でも主人は思い詰めてからですね、ぷいっと蒸発しちゃったの。
  

サイホンでコーヒーを入れる。正午から午後6時までの営業時間。ほぼ立ちっぱなし
サイホンでコーヒーを入れる。正午から午後6時までの営業時間。ほぼ立ちっぱなし

  
 3年おらんだったですね。昔のこと、思い出したくない。忘れるようにしてる。
 質屋には「天下の武石さんが、何のご冗談を」。近所には「信心しとるのに、苦労ばっかりするたいね」。
 今まで苦労せんかったから、御本尊様が“苦労の味”を味わわせてくれとると思うて、とにかくガンバルしかなかった。
 だけど、妙法ってっ不思議ですね。状況は変わってないのにですね、うれしくなるんですよ。それこそ、娘が3人おりますからね、石にかじりついてでも立ち上がろうって思えたことがですね、うれしかったですね。
 それには一遍の題目も、百万遍の題目も、「信」が入らんといかんわけ。
 主人が帰ってきた日はですね、はっきり覚えてませんけど、夜中に題目あげよった時でした。娘たちが起きてきて「父さん!」いうて、涙の再会でしたよ。
  

店を訪れる客はヨシノさんの笑顔と話に癒やされる
店を訪れる客はヨシノさんの笑顔と話に癒やされる

  
 小倉におったそうです。夕方の町を歩いてたら、創価学会の会合やってたみたいでですね。「御本尊を離れたら、どんなに努力しても生活は良くならん」って言っとる。
 “この人は、わしのために話してくれとるんじゃろうか”いうことで、夜汽車で帰ってきたとです。
 それから精米所とか自動車修理工場とかやってもですね、うまくいかんわけ。
 でも今考えてみると、あれはあれで、良かったのかなあと思います。働くことの尊さをしっかり味わえたからですね。
  

煉瓦屋の前で夫の清さん㊧と(1982年)
煉瓦屋の前で夫の清さん㊧と(1982年)

  
 喫茶店を始めたのが昭和54年です。壁のレンガ、珍しいでしょ。主人がしたんですよ、これ。北九州におった時、溶鉱炉の廃材だっていうから、もらったの。8000個のレンガを半分に割ってですね、はしごかけて、コンクリートで固めたの。
 主人は人のウケがいいからですね、コーヒーのおかわりを何杯もあげよりました。それで人生相談みたいなことするからですね、お客さんが帰らんのですよ。
 私も楽しくなってきてですね、主人が「結婚した時より、今の方がきれいだよ」って言うてくれました。
 昨日の続きを今日生きて、今日の続きを明日に生きて。それなのよ。結局、その積み重ねなのよ。
 主人が亡くなっても店をやりましたけど、100歳になって、ぎっくり腰しましてね。ひとつの引き際だなあと思ったら、みんなが「うわー、やめんでください。ママさんの話をもっと聞きたい」言いんしゃった。
  

長女㊨と次女㊥と一緒に店を切り盛りしている
長女㊨と次女㊥と一緒に店を切り盛りしている

  
 やっぱ、目標は「力あらば一文一句なりともかたらせ給うべし」(新1793・全1361)ですね。毎日、仏法対話できる。命の限りやりたい。感謝の気持ちと恩返し。そのために生きてる。
 私の時代はですね、池田先生とお会いする機会に何回も恵まれたわけです。先生は思いをくんでくださって、学会歌の指揮を執ってくれました。思い出すだけで元気が出るし、知らず知らずのうちに涙が出るねえ。
 それがあるからですよ、私は先生の弟子だ!と思うだけでエネルギーが無限に湧くんです。
 ですからね、会った人に少しでも仏法を語りたい。みんなより、ちょーっと長生きしとるもんで、助言したら喜んでくれますもんね。語れない日もあるけど、それはそれで勤行の時に、胸中の池田先生に報告してる。
 やっぱ、日本が元気になるには、民衆が元気にならないかん思って。そのために私は生かされてると思ってる。
 話すことが私の使命だからですね。ま、100歳のコーヒーば、飲んでってください。
  

「健康であることを一番感謝せないかんし、今あるのは池田先生についてきて頑張った結果だと思う」
「健康であることを一番感謝せないかんし、今あるのは池田先生についてきて頑張った結果だと思う」
後記

  
 あっちにぶつかり、こっちにぶつかりしながら身につけた知恵と経験をブレンドして、さりげない癒やしの言葉を抽出する。そんな人情喫茶店。
 コーヒーを入れるヨシノさんを見て、やっぱりすごい人だと思った。サイホンでコーヒーを入れるたびに、小さいコーヒーカップで必ず味見をしていた。たぶん自分の中で合格点があるのだと思う。
 そして人に合わせて話ができるように、深夜の午前0時までNHKを見て情報を集めおられる。
 まんねりにならないように、常に成長しようとしていること自体、すごいと思う。
 「喜んでもらうことが、広宣流布につながっていけばいい」
 過去に生きていない。今を、未来を生きている。
 至極の一杯。湯気と香りの中に100歳の応援歌を感じる。
 ヨシノさんは「ステージ」という言葉を使った。おぼんに1杯のコーヒーを乗せた100歳の大女優に、店の照明がきらびやかな光となって降り注ぐ。
 青春の若々しさを保つ秘訣は?
 「題目で生命力を出すことと、あとはちょっとのコーヒーね」(天)
  

営業時間前にお話を伺ったとき、100歳の大女優は足をお組みになった。やっぱり、カッコイイ
営業時間前にお話を伺ったとき、100歳の大女優は足をお組みになった。やっぱり、カッコイイ

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