〈医療〉 死亡数が最も多いがん――それは、肺がんです。最大の要因は、喫煙。日本肺癌学会理事長に語っていただきました
〈医療〉 死亡数が最も多いがん――それは、肺がんです。最大の要因は、喫煙。日本肺癌学会理事長に語っていただきました
2026年4月20日
がんの中で罹患数、死亡数ともに上位に挙がる肺がん。日本肺癌学会理事長を務める、和歌山県立医科大学の山本信之副学長(呼吸器内科・腫瘍内科教授)に聞きました。
がんの中で罹患数、死亡数ともに上位に挙がる肺がん。日本肺癌学会理事長を務める、和歌山県立医科大学の山本信之副学長(呼吸器内科・腫瘍内科教授)に聞きました。
〈患者〉60歳を超すと罹患率が急増
〈患者〉60歳を超すと罹患率が急増
肺がんは罹患数、死亡数ともに多い悪性腫瘍です。2021年に診断された患者数はおよそ12万4千人で、大腸がんに次いで2番目に多いがんです(男性3位/女性3位)。男性が女性の約2倍、多くかかります。
全体の5年相対生存率は34・9%で、死亡数は最多です(約7万5千人/24年)。
――どのような特徴を持つがんなのですか。
悪性度が高く、他のがんと比べて転移が起きやすいといわれています。主な転移先は脳、肺内、肝臓、副腎、骨です。
この病に特有の自覚症状はありません。せきや痰といった他の呼吸器疾患と共通した症状が起きます。
――要因は?
最大の要因は喫煙です。非喫煙者に比べ、発症リスクが男性で4・4倍、女性で2・8倍高くなります。男性患者の55・0%が喫煙中で、過去の喫煙歴を含めると92・5%という報告もあります(女性は喫煙中が16・1%。過去を含めると24・9%)。
60歳以上になると、罹患率が急増します。高齢化も、罹患者が増えた大きな要因といえます。
――その他の要因は?
喫煙以外の、エビデンスが強い要因は多くありませんが、アスベスト(石綿)の吸引は挙げられます。受動喫煙も、発症リスクを2~3割高めるといわれます。
以前は、排ガスなど有害物質の吸い込みも要因に挙げられていました。しかし、現在は空気の環境が良くなったこともあり、言われなくなりました。
肺がんは罹患数、死亡数ともに多い悪性腫瘍です。2021年に診断された患者数はおよそ12万4千人で、大腸がんに次いで2番目に多いがんです(男性3位/女性3位)。男性が女性の約2倍、多くかかります。
全体の5年相対生存率は34・9%で、死亡数は最多です(約7万5千人/24年)。
――どのような特徴を持つがんなのですか。
悪性度が高く、他のがんと比べて転移が起きやすいといわれています。主な転移先は脳、肺内、肝臓、副腎、骨です。
この病に特有の自覚症状はありません。せきや痰といった他の呼吸器疾患と共通した症状が起きます。
――要因は?
最大の要因は喫煙です。非喫煙者に比べ、発症リスクが男性で4・4倍、女性で2・8倍高くなります。男性患者の55・0%が喫煙中で、過去の喫煙歴を含めると92・5%という報告もあります(女性は喫煙中が16・1%。過去を含めると24・9%)。
60歳以上になると、罹患率が急増します。高齢化も、罹患者が増えた大きな要因といえます。
――その他の要因は?
喫煙以外の、エビデンスが強い要因は多くありませんが、アスベスト(石綿)の吸引は挙げられます。受動喫煙も、発症リスクを2~3割高めるといわれます。
以前は、排ガスなど有害物質の吸い込みも要因に挙げられていました。しかし、現在は空気の環境が良くなったこともあり、言われなくなりました。
肺がんの最大の要因は喫煙。受動喫煙も発症リスクを上げる
肺がんの最大の要因は喫煙。受動喫煙も発症リスクを上げる
〈種類〉85%占める「非小細胞」型
〈種類〉85%占める「非小細胞」型
がん細胞の形や性質から、小細胞肺がんと、非小細胞肺がんに分けられます。肺がん全体に対する発症比率は、おおよそ小細胞肺がんが15%、非小細胞肺がんが85%です。
発症割合が低い小細胞肺がんは進行が速く、5年相対生存率は全体より低くなります。かかる方は、喫煙者が多くを占めます。
非小細胞肺がんは「腺がん」「扁平上皮がん」「その他」に分けられます。
腺がんは肺がん全体の約半数を占め、非喫煙者も発症します。扁平上皮がんは、肺がんの約30%に当たります。患者の多くは喫煙者です。
非小細胞肺がんは「腺がん」「扁平上皮がん」「その他」に分けられます。
腺がんは肺がん全体の約半数を占め、非喫煙者も発症します。扁平上皮がんは、肺がんの約30%に当たります。患者の多くは喫煙者です。
がん細胞の形や性質から、小細胞肺がんと、非小細胞肺がんに分けられます。肺がん全体に対する発症比率は、おおよそ小細胞肺がんが15%、非小細胞肺がんが85%です。
発症割合が低い小細胞肺がんは進行が速く、5年相対生存率は全体より低くなります。かかる方は、喫煙者が多くを占めます。
非小細胞肺がんは「腺がん」「扁平上皮がん」「その他」に分けられます。
腺がんは肺がん全体の約半数を占め、非喫煙者も発症します。扁平上皮がんは、肺がんの約30%に当たります。患者の多くは喫煙者です。
非小細胞肺がんは「腺がん」「扁平上皮がん」「その他」に分けられます。
腺がんは肺がん全体の約半数を占め、非喫煙者も発症します。扁平上皮がんは、肺がんの約30%に当たります。患者の多くは喫煙者です。
〈治療〉手術や放射線、抗がん剤など
〈治療〉手術や放射線、抗がん剤など
――治療法は?
病期(ステージ)によって変わります。大きな方向性として、ステージが早期では手術が中心で、ステージの進行に応じて、放射線や、抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)を使います。
転移が広がったステージであれば、主に薬剤を使用します。種類は、抗がん剤と、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬などがあります。
小細胞肺がんの一部には近年、二重特異性抗体という新薬が保険適用されました。新しい免疫療法の薬で、高い効果が期待されています。
これら手術、放射線、薬剤といった治療法を、肺がんの進展状況、患者の状態を考慮して、選択したり組み合わせたりします。
――治療法は?
病期(ステージ)によって変わります。大きな方向性として、ステージが早期では手術が中心で、ステージの進行に応じて、放射線や、抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)を使います。
転移が広がったステージであれば、主に薬剤を使用します。種類は、抗がん剤と、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬などがあります。
小細胞肺がんの一部には近年、二重特異性抗体という新薬が保険適用されました。新しい免疫療法の薬で、高い効果が期待されています。
これら手術、放射線、薬剤といった治療法を、肺がんの進展状況、患者の状態を考慮して、選択したり組み合わせたりします。
〈手術〉負担の少ない方式が選択肢に
〈手術〉負担の少ない方式が選択肢に
――手術はどのように?
従来の開胸手術に加え、胸腔鏡手術やロボット支援手術も行われています。胸腔鏡手術やロボット支援手術は小さな切開で済み、手術後の痛み等、合併症リスクも減らせます。
肺の中は、五つの肺葉(右肺三つ・左肺二つ)に分けられます。以前は、腫瘍ができた肺葉は、再発の可能性を減らすために丸ごと取り除いていました。しかし現在は、早期の場合であれば、腫瘍とその周辺の一部の組織のみを摘出するケースも増えています。
手術の方式は、体の負担軽減と再発リスクとを、慎重に検討し判断します。
――手術はどのように?
従来の開胸手術に加え、胸腔鏡手術やロボット支援手術も行われています。胸腔鏡手術やロボット支援手術は小さな切開で済み、手術後の痛み等、合併症リスクも減らせます。
肺の中は、五つの肺葉(右肺三つ・左肺二つ)に分けられます。以前は、腫瘍ができた肺葉は、再発の可能性を減らすために丸ごと取り除いていました。しかし現在は、早期の場合であれば、腫瘍とその周辺の一部の組織のみを摘出するケースも増えています。
手術の方式は、体の負担軽減と再発リスクとを、慎重に検討し判断します。
〈発見〉精度の高い低線量CT
〈発見〉精度の高い低線量CT
――予防や早期発見はできますか。
喫煙者なら、禁煙が最も大事な予防法であることは言うまでもありません。
その上で、国立がん研究センターの肺がん検診ガイドライン2025年度版では、通常のCTと比較して被ばく量の少ない低線量CT検査を強く推奨し始めました。
精度が高いため、現在、健康診断で広く行われている胸部エックス線検査以上に、早期発見による死亡率低下に有効である、とする海外のエビデンスを受けての推奨です。今後、より多くの医療機関が導入する可能性が高まっています。
なお、低線量CTが推奨されるのは、肺がんに対するリスクが高い重喫煙者に限られます。
――重喫煙者?
「1日平均喫煙本数×年数」が600以上の人を、重喫煙者と呼びます。禁煙後15年以上たった人は除きます。なお、禁煙して10年がたつと、肺がんリスクが約半分に下がります。
「喫煙者の減少」に日本より早く取り組んだ欧米各国は、すでに肺がんの罹患率が減少傾向に入りました。喫煙者が減り続けている日本も、いずれは罹患率が減少すると考えられています。
――肺がん治療後の患者が気を付けることは?
禁煙はもちろんですが、その上で、肺を切除した方は呼吸機能が落ちています。肺炎になりやすいため、風邪などの呼吸器疾患にかからないように注意してください。
――予防や早期発見はできますか。
喫煙者なら、禁煙が最も大事な予防法であることは言うまでもありません。
その上で、国立がん研究センターの肺がん検診ガイドライン2025年度版では、通常のCTと比較して被ばく量の少ない低線量CT検査を強く推奨し始めました。
精度が高いため、現在、健康診断で広く行われている胸部エックス線検査以上に、早期発見による死亡率低下に有効である、とする海外のエビデンスを受けての推奨です。今後、より多くの医療機関が導入する可能性が高まっています。
なお、低線量CTが推奨されるのは、肺がんに対するリスクが高い重喫煙者に限られます。
――重喫煙者?
「1日平均喫煙本数×年数」が600以上の人を、重喫煙者と呼びます。禁煙後15年以上たった人は除きます。なお、禁煙して10年がたつと、肺がんリスクが約半分に下がります。
「喫煙者の減少」に日本より早く取り組んだ欧米各国は、すでに肺がんの罹患率が減少傾向に入りました。喫煙者が減り続けている日本も、いずれは罹患率が減少すると考えられています。
――肺がん治療後の患者が気を付けることは?
禁煙はもちろんですが、その上で、肺を切除した方は呼吸機能が落ちています。肺炎になりやすいため、風邪などの呼吸器疾患にかからないように注意してください。
〈取材こぼれ話〉いつ使うか
〈取材こぼれ話〉いつ使うか
がん治療の進歩は著しい。肺がんも診断技術の向上で早期発見が可能となり、新薬の登場で治療成績も大きく向上しているという。
◇
山本理事長の取材とは別に、記者は先月、日本癌治療学会の市民公開講座に参加した(3月14日/https://www.jsco.or.jp/public/public_seminar/から動画視聴も可能)。くしくも、著名な科学誌(「ネイチャーメディシン」オンライン、2026年2月)に出たばかりの、非小細胞肺がんの治療に関する研究が紹介されていた。
それは、免疫チェックポイント阻害剤の点滴投与を、午後3時より前に始めると、薬のさまざまな効果が高まったとする、大規模研究の検証データだ。免疫機能に影響を及ぼすヒトの体内時計が関わっているそう。
がんの薬物治療の検討で、主に重要視する要素は「どの薬を」「どういった患者に」「どれくらいの量で」使うかだという。
そこに点滴を「何時から始めるか」という要素を加えることで、生存率さえ上がる可能性が――同様の臨床実験は他でも行われているというが、追加コストも必要としない衝撃の検証データとして今、注目されている。(聡)
※昭和医科大学統括がん情報センターのHPでは、検証データの解説を掲載しています。
がん治療の進歩は著しい。肺がんも診断技術の向上で早期発見が可能となり、新薬の登場で治療成績も大きく向上しているという。
◇
山本理事長の取材とは別に、記者は先月、日本癌治療学会の市民公開講座に参加した(3月14日/https://www.jsco.or.jp/public/public_seminar/から動画視聴も可能)。くしくも、著名な科学誌(「ネイチャーメディシン」オンライン、2026年2月)に出たばかりの、非小細胞肺がんの治療に関する研究が紹介されていた。
それは、免疫チェックポイント阻害剤の点滴投与を、午後3時より前に始めると、薬のさまざまな効果が高まったとする、大規模研究の検証データだ。免疫機能に影響を及ぼすヒトの体内時計が関わっているそう。
がんの薬物治療の検討で、主に重要視する要素は「どの薬を」「どういった患者に」「どれくらいの量で」使うかだという。
そこに点滴を「何時から始めるか」という要素を加えることで、生存率さえ上がる可能性が――同様の臨床実験は他でも行われているというが、追加コストも必要としない衝撃の検証データとして今、注目されている。(聡)
※昭和医科大学統括がん情報センターのHPでは、検証データの解説を掲載しています。
ご感想や取り上げてほしいテーマはこちらからお寄せください。
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