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不登校が始まるサインや回復過程について聞きました〈教育〉 連載企画 不登校に向き合う② 2026年5月7日

  • 子どものサインや回復過程 ㊤
長崎県立こども医療福祉センター所長 小柳憲司医師

 不登校には、子どもが発するサインがあり、回復するまでには段階があるといわれます。長崎県立こども医療福祉センター所長で、臨床経験が豊富な小児心療科医師の小柳憲司さんに聞きました。(㊦は6月4日付に掲載予定)

「こころのエネルギー」が関係

 ――不登校が始まる時のサインは?
    
 多いのは、具合が悪いとか、表情が暗くなってくることです。なんとなく元気がなくなり、徐々に学校から足が遠のいていきます。
 月曜日に休むことはよくありますが、逆に月曜日は頑張って登校するものの、水・木曜日あたりになると休む子もいます。月曜日に休むのは学校に行きづらい状況があるから、週の半ばに休むのは体力・気力不足で5日間もたないからです。いずれも「こころのエネルギー」が足りていない状態だと言えます。
 「こころのエネルギー」とは、子どもの“元気さの度合い”と考えればよいでしょう。こころのエネルギーが不足すると、意欲が低下し、ちょっとした困難にも踏ん張ることができなくなります。さらには不安やイライラが強くなったり、さまざまな身体症状が出現したりして、不登校が始まります。
 その後、子どもが家で安定した生活を送る中で、少しずつ元気を回復していくケースもあります。大まかな不登校の段階は別掲の図の通りです。
   

図 不登校の経過とこころのエネルギー

 ――「前駆期」の保護者の対応は?
    
 この時期は、「できるだけ学校には行こうよ」と働きかけることが大切です。しんどそうであれば、1日の休養はいいですが、2、3日続けて休ませるのはやめておきましょう。
 前駆期の状態では、全ての例がそのまま学校に行けなくなるわけではないので、周囲の大人が様子を見ながら、適度に登校を促してあげることが重要です。それでも、徐々に登校できない日が増えて混乱期に入ってしまう子もいます。
 その時、保護者は「自分の対応がまずかったから不登校になったのだ」などと自分を責めないでください。

 ――「前駆期」における学校との連携方法は?
    
 担任の先生に「最近、しんどそうなんですが、学校で何か変わったことはありませんか」などと聞いてみるのはいかがでしょうか。先生からは「学校では元気にしていますよ」と言われるかもしれませんが、家に帰ってきてぐったりしていたり、イライラしたりしているのは、こころのエネルギーが低下している証拠です。「家での様子が気になるので、気を付けて見ておいてください」と学校に伝えるといいでしょう。具体的な状況を学校側と共有することで、子どもがサインを出しているということをお互いが理解できます。
   

 ――「混乱期」における保護者の心構えは?
    
 一番大切なのは、子どもを信じ続けることです。
 子どもは楽をしたいから、不登校になったり、引きこもったりしているわけではありません。とてもしんどい状況に置かれていて、「自分はダメな人間だ」「家族に合わせる顔がない」と悩んでいるのです。
 この時期は、保護者も大変心苦しいと思います。混乱を解く鍵は“子どもの苦しみを理解しようとする姿勢”にあります。その上で「おはよう」「おやすみ」のあいさつや、「心配しているよ」「一緒にご飯を食べよう」など温かい声をかけ続けることで、子どもは少しずつ落ち着きを取り戻していきます。
 保護者の方から「つい、ひどく叱ってしまいました」と相談されることがあります。保護者も人間ですから、完璧にというわけにはいきません。小言を言いたくなる時もあるでしょう。でも、その一言だけで親子関係が壊れてしまうわけではありませんから大丈夫です。自分たちだけで抱え込まないで、積極的に専門家に相談してみるといいでしょう。
    

PIXTA
PIXTA

 ――こころのエネルギーを回復させるには?
    
 こころのエネルギーは、人と関わることによって増えていきます。だから、混乱期で部屋にこもりっ放しだとなかなかエネルギーは回復しません。少しずつ家族と話せる時期になると、家族からエネルギーをもらえるようになります。
 そして、回復過程で、関わる人が増えると、エネルギーは一気に増えていきます。
 最近は、インターネット上の人とのつながりもありますが、直接会って話をするのと、リモートで話をするのでは、得られるこころのエネルギー量が大きく異なります。学校に登校できなくても、フリースクールや自治体の支援を利用するなどして、実体のある人との関わりの機会を増やすことが大切です。
    

〈不登校のタイプ分け〉

 ●内因主体型
 もともと不安の強さやコミュニケーションの苦手さがあるため、通常の学校生活でも、ストレスに感じ、徐々に登校できなくなる。
  ▶▶ 発達上の特性がある場合、学校と相談し、特別支援学級の利用など、子どもに合う環境を柔軟に考える。
   
   
 ●家庭環境型
 家庭の養育環境や、家庭内のさまざまな問題が大きく影響していると考えられる。
  ▶▶ 保護者も困難な状況にあるため、家族全体がサポートを受ける必要がある。
   
   
 ●外因主体型
 クラス替えや転校、教師との相性、いじめなど、特に学校環境の影響が大きいもの。
  ▶▶ 保護者は、「無理しなくていい」という姿勢で子どもに寄り添うことが重要。学校には丁寧に相談し、要望を伝える。
   
   
 ●過剰適応型
 周囲の期待に応えようと頑張りすぎて疲弊し、不登校になる。勉強、部活動、生徒会と頑張っていた子が突然体調を崩し、学校に行けなくなる。
  ▶▶ 休み癖がつくのではと心配せず、上手に休養することを学ぶ時期だと捉える。
   
   
 ●未熟・回避型
 これまでの生育過程の中で、ストレス耐性がうまく育たず、ちょっとした困難にぶつかっただけで、登校しなくなる。
  ▶▶ 休ませるよりも、スモールステップを設定するなどして、積極的に登校を促す働きかけが必要。
   

近著『不登校の子どもを支える』(新興医学出版社)
近著『不登校の子どもを支える』(新興医学出版社)

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