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〈SDGs×SEIKYO〉 捨てられるものを生かす――食品ロス削減への挑戦 2022年5月6日

店舗横の倉庫で作業を行う原淵景子さん㊥、甲谷恵美子さん㊨、父・原淵清匡さん
店舗横の倉庫で作業を行う原淵景子さん㊥、甲谷恵美子さん㊨、父・原淵清匡さん

 本来食べられるのに捨てられてしまう食品、いわゆる「食品ロス」の削減への関心が高まっています。原淵景子さん=白ゆり長=は、妹・甲谷恵美子さん=女性部員=と一緒に、NPO法人「幡多障害者自立支援センター」(岡山市中区)を運営し、食品ロスに立ち向かっています。(取材=内山忠昭、石塚哲也)
 

この記事のテーマは「つくる責任 つかう責任」

 現在、国内では年間570万トン(2019年度)の食品ロスが発生している。これは1人当たりに換算すると毎日茶わん1杯分のご飯を捨てていることになる。
 
 食品ロスといえば、家庭、コンビニなどの小売業、外食産業で発生すると思われがちだが、実際は、食品の生産・流通の過程でも多く発生している。また、廃棄される食品の種類も、生鮮食品や総菜だけでなく、比較的、賞味期限の長い飲料や菓子など、実にさまざまだ。
 
 「例えば、パッケージが刷新されると、一つ前のものは流通もされず廃棄されてしまう。そんな商品がいっぱいあるんです」と景子さん。NPO法人では、卸売・小売業者が抱えるそれら廃棄予定の食品を買い取り、自らのショップで安く販売している。
 

景子さんはいつも笑顔を絶やさない
景子さんはいつも笑顔を絶やさない

 原淵さん一家が食品ロス削減に力を入れる背景には、NPO法人設立前に営んでいた和菓子屋での経験がある。
 
 最初は父・清匡さん=本部長=一人で、スーパーなどに卸すまんじゅうや大福を製造していたが、やがて事業が拡大し、家族みんなで手伝うように。その頃から食品ロスの問題に直面する。「精魂込めて作った、しかも、まだ食べられるものを、お金を掛けて廃棄しないといけなかった」と清匡さんは振り返る。
 
 注文を受けて納品しても、売れ残った和菓子が大量に返品されてくる。しかし、事業を継続させるために、製造する量は減らせない。原材料費や人件費もかさみ、経営は逼迫していく。
 
 「父は製造で、私たちは経理や廃棄処理で手いっぱい。家族の心もバラバラで、あの時ほど、苦しかったことはありません」と恵美子さん。09年、一家は廃業を選択した。
 

陳列棚に商品を並べる恵美子さん
陳列棚に商品を並べる恵美子さん

 負債を抱えての再出発。新しい事業を模索する中で、家族でたどり着いた結論。それが、祖父・祥光さん(故人)が常々、言っていた「他者のために尽くすこと」への挑戦だった。
 
 祥光さんは若い頃、結核を患ったことを機に、創価学会に入会。地域の一粒種として、池田大作先生と共に広布の戦いに徹し、学会理解を広げてきた。晩年は、漬物屋をしていた景子さんの曽祖父から受け継いだ製法で、自ら育てた野菜を漬けては地域の人に配り歩いた。長年、町内会長としても地域に尽くし抜いた。
 
 再起を誓い、一家で唱題を重ねた。祈り抜く中で、一家は障がい者就労支援事業の存在を知った。障がい者に就労と生産活動の機会を提供する事業だ。「仕事そのものが他者のためになるならと、みんなで挑戦を決めました」(景子さん)
  
 10年に設立したNPO法人。「福」が「重」なるとの意味から「ふくじゅう」と名付けた目玉の事業は、祖父が守ってきた漬物の製造・販売。自分たちの畑で栽培していた野菜を材料にし、障がい者には簡単な製造工程を担ってもらった。
 
 最初は店舗を構えず、移動販売のみだったが、漬物の味が評判を呼ぶと、地域からも要望され、18年には作業所の隣にショップを開設した。それでも、和菓子屋の経験を生かし、創業以来の少量生産、低価格販売、地産地消は貫いた。
 

 「そんな中で、食品ロスの問題を知ったんです」と景子さん。若くして離婚。シングルマザーとして子どもを育てた時期も。「私には両親の支えがありましたが、地域には、もっと困難を抱えた方がいます。そんな人たちに、より安く商品を届けたいとの思いもありました」
 
 メーカーや量販店などと交渉し、同年から食品ロス関連食品のショップ販売を始めた。一方、販売だけでなく、「賞味期限と消費期限の違い」なども展示し、消費者の意識啓発にも取り組む。恵美子さんは言う。「一人一人に商品の価値を伝えていく。納得して買っていただくには、私たち売る側の振る舞いが大切なんだと思います」
 
 “他者のために”――との一念の変革で、苦境を乗り越えた原淵さん一家の物語。大量生産・大量消費・大量廃棄の社会からの脱却は、買う側である私たち消費者の「捨てられるものを生かす」行動次第でもあることを問い掛けている。
 
 
 
●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ぜひ、ご感想をお寄せください→sdgs@seikyo-np.jp
 
【原淵さんのインタビュー記事はこちら】

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