〈これからのteam論〉 元スターバックス・コーヒー・ジャパンCEO 岩田松雄さん
〈これからのteam論〉 元スターバックス・コーヒー・ジャパンCEO 岩田松雄さん
2024年8月11日
- (株)リーダーシップ・コンサルティング代表
- 何のために働くのか? 皆のやる気を引き出す「共感型リーダー」
- (株)リーダーシップ・コンサルティング代表
- 何のために働くのか? 皆のやる気を引き出す「共感型リーダー」
本人提供
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第2回「これからのteam論」でお聞きするのは、(株)リーダーシップ・コンサルティング代表の岩田松雄さんです。化粧品メーカー「ザボディショップ」やコーヒーチェーン店「スターバックス・コーヒー」の日本法人でCEO(最高経営責任者)を務め、業績を大きく伸ばしました。岩田さんに、これからの時代に求められるリーダーの在り方について語ってもらいました。
第2回「これからのteam論」でお聞きするのは、(株)リーダーシップ・コンサルティング代表の岩田松雄さんです。化粧品メーカー「ザボディショップ」やコーヒーチェーン店「スターバックス・コーヒー」の日本法人でCEO(最高経営責任者)を務め、業績を大きく伸ばしました。岩田さんに、これからの時代に求められるリーダーの在り方について語ってもらいました。
〈インタビューまとめ〉
〈インタビューまとめ〉
・一流のリーダーは聴き上手。話すことは半分に、聞くことは2倍に。
・謙虚さ、ユーモアなど人間的な魅力も大切。私心の無さが周囲の人を動かす。
・企業・団体には存在理由(ミッション)がある。それが隅々まで浸透できれば、マニュアルにない行動が生まれる。
・一流のリーダーは聴き上手。話すことは半分に、聞くことは2倍に。
・謙虚さ、ユーモアなど人間的な魅力も大切。私心の無さが周囲の人を動かす。
・企業・団体には存在理由(ミッション)がある。それが隅々まで浸透できれば、マニュアルにない行動が生まれる。
Jacob Wackerhausen:ゲッティイメージズ提供
Jacob Wackerhausen:ゲッティイメージズ提供
――これまで数々の企業の経営に携わってこられました。
私がスターバックスにいたときに一番意識したのは、「御用聞き」に徹することでした。
店舗を回ったり、エリアごとに店長に集まってもらったときに、「困っていることはない?」と口癖のように聞いていました。「社長がそこまでしなくても」と言われましたが、私は、お客さまに接しているスタッフのおかげで自分の給料がもらえていると本気で思っていました。それに、現場に行くと心が元気になるんです。
スタッフから出た要望は、その場で答えるようにしましたが、自分が分からなければ必ず担当者に確認し、「NO」という返事でも、聞きっぱなしにしませんでした。そうした積み重ねからスタッフとの信頼が生まれ、組織の課題発見や新企画の開発にもつながりました。
一流のリーダーは皆、聴き上手です。人は自分が思っているよりも話し過ぎているので、「話すことを半分にし、聞くことは2倍に」を心がけるようにしました。
大切なことは、まず相手に関心を持つ。相手に体を向けて一所懸命に話を聴けば、自然に相づちも出るし、質問も出たり、メモを取ったりするようになります。時にはスマホの電源を切る気配りも必要でしょう。
――これまで数々の企業の経営に携わってこられました。
私がスターバックスにいたときに一番意識したのは、「御用聞き」に徹することでした。
店舗を回ったり、エリアごとに店長に集まってもらったときに、「困っていることはない?」と口癖のように聞いていました。「社長がそこまでしなくても」と言われましたが、私は、お客さまに接しているスタッフのおかげで自分の給料がもらえていると本気で思っていました。それに、現場に行くと心が元気になるんです。
スタッフから出た要望は、その場で答えるようにしましたが、自分が分からなければ必ず担当者に確認し、「NO」という返事でも、聞きっぱなしにしませんでした。そうした積み重ねからスタッフとの信頼が生まれ、組織の課題発見や新企画の開発にもつながりました。
一流のリーダーは皆、聴き上手です。人は自分が思っているよりも話し過ぎているので、「話すことを半分にし、聞くことは2倍に」を心がけるようにしました。
大切なことは、まず相手に関心を持つ。相手に体を向けて一所懸命に話を聴けば、自然に相づちも出るし、質問も出たり、メモを取ったりするようになります。時にはスマホの電源を切る気配りも必要でしょう。
――大切な姿勢を教えていただきました。これからのリーダーには、どのような資質が求められますか。
今、多くの企業や組織は業務がそれぞれ高度に専門化し、複雑さを増しているため、リーダー一人では全てを解決することはできなくなっています。リーダーはメンバーとコミュニケーションを取りながら、個々の専門家に任せるか、一緒になって考えながら走るしかありません。組織のミッションに共感してもらいながら、命令や規則ではなく、協働を重視し、心理的な安全性を確保しながら共に進む「共感型」のリーダーが求められています。
ゆえにリーダーには、謙虚さや気さくさ、ユーモアなど人間的な魅力も大切です。さらに強調したいのは「私心の無さ」です。リーダーに世のため、人のため、チームのため、お客さまのためという無私の心を感じたら、この人のために何とかしようとなりますよね。
日本が優勝したWBCでのダルビッシュ選手がそうです。チームのために自分の技術を惜しみなく後輩選手に教える姿は、多くの人の心を打ちました。まさしく精神的なリーダーです。
――大切な姿勢を教えていただきました。これからのリーダーには、どのような資質が求められますか。
今、多くの企業や組織は業務がそれぞれ高度に専門化し、複雑さを増しているため、リーダー一人では全てを解決することはできなくなっています。リーダーはメンバーとコミュニケーションを取りながら、個々の専門家に任せるか、一緒になって考えながら走るしかありません。組織のミッションに共感してもらいながら、命令や規則ではなく、協働を重視し、心理的な安全性を確保しながら共に進む「共感型」のリーダーが求められています。
ゆえにリーダーには、謙虚さや気さくさ、ユーモアなど人間的な魅力も大切です。さらに強調したいのは「私心の無さ」です。リーダーに世のため、人のため、チームのため、お客さまのためという無私の心を感じたら、この人のために何とかしようとなりますよね。
日本が優勝したWBCでのダルビッシュ選手がそうです。チームのために自分の技術を惜しみなく後輩選手に教える姿は、多くの人の心を打ちました。まさしく精神的なリーダーです。
――岩田さんは、企業や団体にはミッション(存在理由)が重要だと訴えておられます。
どんな企業・団体にも必ず「何のために存在しているのか」という目的(パーパス)があります。私はそれを「ミッション」と呼びますが、組織の隅々までミッションが浸透しているところは強いです。聖教新聞も紙面を通して人々に貢献するという目的がありますよね。
スターバックスであれば、コーヒーを売って利益を得ることがミッションではありません。コーヒーを通して人と人をつなぎ、豊かさをもたらすことです。それを徹底しているから、スタッフは明るく献身的に接客しますし、長居するお客さまを追い出して回転率を上げるようなことは絶対にしない。
“混んでて席がない”というクレームも多いですが、長い目で見て、スターバックスに対する愛着と信頼につながっているのです。
ミッションの浸透には、まずトップ(リーダー)が繰り返しミッションの重要性を語り、自ら率先垂範することです。社内の教育も当然、必要ですが、その際のキーワードは「当事者意識」です。一人一人に自分の会社、自分の組織、自分の仕事という意識が強くあれば、より良くしようと自発的な行動が生まれます。
ザボディショップでは当初、朝礼にアルバイトの方は参加していませんでした。でも、お客さまからしたら社員かアルバイトかは関係ない。私は働く全員に会社の方向性を理解してほしいと思い、朝礼に参加するよう改めました。
どんな相手にもリスペクト(尊敬)をもって対等に接する。その人が「何のため」という理由を理解すれば、立場に関係なく自覚や責任感が生まれ、マニュアルにはない素晴らしい行動をしてくれるのです。
近年は、特に若い人の中には、仕事にお金ではなく、生きがいを求める人が増えています。大学生の進路先も、社会貢献を目的としたNPOが多くなってきています。世の中全体が、自己実現のため、さらにはより高次な目的のために働きたいという考えにシフトしつつあります。
また昨今、個々の人格を尊重し、多様性を認め合う意識が広がっています。その多様性が進むほど、何をもって皆が一つになるかといえば、私はミッションだと思います。ミッションとは、いわば北極星のようなもの。自分たちは何のために働き、何を目指すのか。変化の激しい時代だからこそ、ぶれない道標が必要なのです。
――岩田さんは、企業や団体にはミッション(存在理由)が重要だと訴えておられます。
どんな企業・団体にも必ず「何のために存在しているのか」という目的(パーパス)があります。私はそれを「ミッション」と呼びますが、組織の隅々までミッションが浸透しているところは強いです。聖教新聞も紙面を通して人々に貢献するという目的がありますよね。
スターバックスであれば、コーヒーを売って利益を得ることがミッションではありません。コーヒーを通して人と人をつなぎ、豊かさをもたらすことです。それを徹底しているから、スタッフは明るく献身的に接客しますし、長居するお客さまを追い出して回転率を上げるようなことは絶対にしない。
“混んでて席がない”というクレームも多いですが、長い目で見て、スターバックスに対する愛着と信頼につながっているのです。
ミッションの浸透には、まずトップ(リーダー)が繰り返しミッションの重要性を語り、自ら率先垂範することです。社内の教育も当然、必要ですが、その際のキーワードは「当事者意識」です。一人一人に自分の会社、自分の組織、自分の仕事という意識が強くあれば、より良くしようと自発的な行動が生まれます。
ザボディショップでは当初、朝礼にアルバイトの方は参加していませんでした。でも、お客さまからしたら社員かアルバイトかは関係ない。私は働く全員に会社の方向性を理解してほしいと思い、朝礼に参加するよう改めました。
どんな相手にもリスペクト(尊敬)をもって対等に接する。その人が「何のため」という理由を理解すれば、立場に関係なく自覚や責任感が生まれ、マニュアルにはない素晴らしい行動をしてくれるのです。
近年は、特に若い人の中には、仕事にお金ではなく、生きがいを求める人が増えています。大学生の進路先も、社会貢献を目的としたNPOが多くなってきています。世の中全体が、自己実現のため、さらにはより高次な目的のために働きたいという考えにシフトしつつあります。
また昨今、個々の人格を尊重し、多様性を認め合う意識が広がっています。その多様性が進むほど、何をもって皆が一つになるかといえば、私はミッションだと思います。ミッションとは、いわば北極星のようなもの。自分たちは何のために働き、何を目指すのか。変化の激しい時代だからこそ、ぶれない道標が必要なのです。
〈memo〉
〈memo〉
さまざまな部活や企業のリーダーを経験した岩田さんだが、一番鍛えられたのは、マンションの管理組合の理事長だという。意見をまとめるのが大変で、企業でやるような合理的なリーダーシップを発揮したら総スカンをくらったそう。また、日産での勤務時代、車の営業で足を棒にして、2万枚の名刺を配ってトップセールスを成し遂げたという。一見、お洒落で華やかなスターバックスのような世界的企業にあっても、人の心を動かすのは心であり、人間味のある振る舞い。岩田さんが最も強調していたのは「徳」だった。
さまざまな部活や企業のリーダーを経験した岩田さんだが、一番鍛えられたのは、マンションの管理組合の理事長だという。意見をまとめるのが大変で、企業でやるような合理的なリーダーシップを発揮したら総スカンをくらったそう。また、日産での勤務時代、車の営業で足を棒にして、2万枚の名刺を配ってトップセールスを成し遂げたという。一見、お洒落で華やかなスターバックスのような世界的企業にあっても、人の心を動かすのは心であり、人間味のある振る舞い。岩田さんが最も強調していたのは「徳」だった。
リーダーシップを学べる岩田さんの著書
リーダーシップを学べる岩田さんの著書
●プロフィル
●プロフィル
いわた・まつお 1958年、大阪生まれ。(株)リーダーシップ・コンサルティング代表取締役社長。日産自動車、外資系コンサルティング会社を経て、コカ・コーラビバレッジサービス役員、タカラ常務取締役などを歴任。アトラス、ザボディショップジャパン、スターバックス・コーヒー・ジャパンでCEOを務めて実績を上げる。著書にベストセラーとなった『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)、『ミッション』(アスコム)、『共感型リーダー』(KADOKAWA)など多数。2012年、UCLAからAlumni 100 Points of Impactに選出される。23年、早稲田大学ビジネススクールからティーチングアワードを受賞。
いわた・まつお 1958年、大阪生まれ。(株)リーダーシップ・コンサルティング代表取締役社長。日産自動車、外資系コンサルティング会社を経て、コカ・コーラビバレッジサービス役員、タカラ常務取締役などを歴任。アトラス、ザボディショップジャパン、スターバックス・コーヒー・ジャパンでCEOを務めて実績を上げる。著書にベストセラーとなった『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)、『ミッション』(アスコム)、『共感型リーダー』(KADOKAWA)など多数。2012年、UCLAからAlumni 100 Points of Impactに選出される。23年、早稲田大学ビジネススクールからティーチングアワードを受賞。
●最後までお読みいただきありがとうございました。インタビューを読んだ感想をお寄せください
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メール wakamono@seikyo-np.jp
ファクス 03-3353-0087
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【記事】五十嵐学、歌橋智也
【記事】五十嵐学、歌橋智也