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神戸での難民映画自主上映会から 大阪常磐会大学講師・金光敏氏の講演(要旨) 2025年10月1日

少子超高齢時代を迎え外国人材との共生が一層重要に 教育や福祉の充実で安心の社会を

 国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)協会が実施している「難民映画祭」のパートナーズ上映会(主催=創価学会平和委員会)が9月20日、神戸市の関西国際文化センターで行われ、大阪常磐会大学講師の金光敏氏が講演した。要旨を掲載する。
 ◇ 
 近年、「少子高齢社会」といわれますが、「高齢社会」とは高齢者の割合が人口の14%を超えた社会で、21%を超えると「超高齢社会」といいます。日本は現在29・4%ですから、いわば“少子超高齢社会”になっています。また、厚生労働省の発表によれば、昨年の日本の合計特殊出生率(一人の女性が産む子どもの数の指標)は1・15です。人口を維持するには2・07程度が目安とされており、人口が減少していく時代に入っています。
 これに伴い、人手不足も課題になっています。コロナ禍前になりますが、このまま労働力不足が進めば深刻な経済危機に陥るということで、経済界は政府に対し、海外から人材を積極的に受け入れてほしいという政策提言をいくつも出しています。こうした状況を踏まえて、政府も外国人材確保のための総合的な対策を進めてきました。「多文化共生」という言葉は、そうした時代状況の中で使い始められたものです。
 アメリカに金融都市シャーロットを含むメックレンバーグという郡があり、多くの難民を受け入れています。かつて私が訪れた際、議員や市役所の職員と懇談する機会があり、多くの方が難民を受け入れることで町が活性化していると語っていました。保護した難民が自立した後、レストランやスーパーマーケットなどの産業を興して、経済を活性化させているというのです。日本における在留外国人は、昨年末時点で約377万人に上っています。これからの社会を考える上で、多様性を受け入れることは重要な点ではないでしょうか。
 残念ながら日本国内では格差が広がっています。日本は経済規模や国際的な地位から見ると豊かな国の一つと見なされがちですが、その一方で所得分配の歪みと「見えにくい貧困」が存在します。統計上、国民全体の相対的貧困率はおよそ15%とされ、他の先進国に比べてやや高めの水準にあります。しかし、この数字は平均化された「全世帯」の姿を示す指標に過ぎず、世帯構造別に見ると、より厳しい現実が浮かび上がります。
 例えば2021年のデータでは、ひとり親家庭の相対的貧困率は約44・5%に達しています。とりわけ母子家庭における収入状況は著しく低く、経済状況はより深刻です。
 経済が停滞していることに加え、格差が広がっている。そうした不安などから「外国人が入ってくると職が奪われる」「秩序が乱れる。治安が悪くなる」といった言動やSNSへの書き込みなどが独り歩きしているのが実態だと思います。こうした不安をいかに軽減できるかが、重要な課題です。
 在留外国人の比率をヨーロッパ諸国と比較すれば、日本は本格的な移民社会とはいえません。しかし高齢化や少子化が進めば、十分な経済活動をするために働き手を迎え入れなければなりません。外国から人材を迎えるに当たり大切なことは、日本が“選ばれる国”になるかどうかです。
 というのも、先進国を中心に少子高齢化が各地で進んでおり、働き手不足に悩み始めています。東アジアでもこれまでの経済規模を維持するために、海外から人材を迎え入れる獲得競争が始まっています。つまり海外の優秀な人々に日本を選んでもらう時代になっているということです。
 そうした視点に立った時に、社会の指標の一つになるのが難民の受け入れです。
 2023年に保護を求めて法務省に難民申請を出した人は、1万3823人に上ります。注目してほしいのは認定された人数で、303人です。日本のような経済力がある国が、受け入れが数百人にとどまっているのは、国力に見合う人道支援とはいえません。
 国際協力というと、貧困や飢餓などに苦しむ国々への支援を思い浮かべるかもしれません。ですが、居場所を追われた人々を受け入れ、教育の機会や、健康で文化的な生活を送る機会を与えていく。日本で知識や技術を身につけ、技術開発や経済発展に貢献する人材を逆に送り出すといった役割も重要ではないでしょうか。教育や保健、福祉、環境――そうしたソフトパワーの分野で、当事国になりかわって国際社会の中で活躍できる若者たちを育んでいくことは、日本が果たしうる大事な貢献ではないかと思います。
 創価学会は歴史的に平和・文化・教育の運動に積極的に取り組んでこられました。今後も揺るぎない信念で、さらに人道支援の輪を広げ、日本国内における多文化共生の担い手にもなっていただきたいと期待しています。

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