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〈世界の体験〉 シンガポールでベンチャー企業のCEOとして奮闘
〈世界の体験〉 シンガポールでベンチャー企業のCEOとして奮闘
2025年9月26日
- 〈Tomorrow 明日へ向かって〉
- 〈Tomorrow 明日へ向かって〉
シンガポール創価学会 胡順傑さん
シンガポール創価学会 胡順傑さん
14年前の9月の、ある日の夜――。胡順傑は、仏壇の扉を開け、御本尊に向かった。しんとした静けさの中で、手を合わせる。生まれて初めて、自らの意志で題目を唱えた。仕事の悩みの雲が、すっと消えていく気がした――。
信心強盛な母のもと、一人っ子として育った順傑。父は、彼が幼い頃に家を出た。母と2人きりの、つつましい生活だった。
「母は、どうにかして、私に信心をしてほしいと願っていました。でも、必要性を感じなかったんです。自分の努力で人生は何とかなると思っていたので」
出世の階段を駆け上がった。最初の勤務先では、すぐに管理職に昇格した。ビジネスのリーダー論をテーマに、各地で講演も行った。
だが14年前、大きな悩みの壁にぶち当たる。ある貪欲な同僚がいた。彼は、会社の上層部に何も知らせず、好き勝手に仕事を進めていた。会社のためを思った順傑は、それを上司に伝えた。だが、逆に順傑が、“告げ口をする陰湿な社員”のレッテルを貼られたのだ。
周囲からの冷たい視線。揺らぐ上司からの信頼……。「何を言っても、ビジネストレーニングで得たノウハウを使っても、どうしてもうまくいかないんです。四面楚歌でした」
ふと、母の姿が頭をよぎる。信心を始めてから、笑顔が増え、穏やかになった。
“この信心には、人を変える力があるのかもしれない”
順傑は、信心にかけてみようと思った。初めて、心を込めて題目を唱えた。なぜか、とめどなく涙があふれた。この日、順傑の胸に、希望の灯がともった。
14年前の9月の、ある日の夜――。胡順傑は、仏壇の扉を開け、御本尊に向かった。しんとした静けさの中で、手を合わせる。生まれて初めて、自らの意志で題目を唱えた。仕事の悩みの雲が、すっと消えていく気がした――。
信心強盛な母のもと、一人っ子として育った順傑。父は、彼が幼い頃に家を出た。母と2人きりの、つつましい生活だった。
「母は、どうにかして、私に信心をしてほしいと願っていました。でも、必要性を感じなかったんです。自分の努力で人生は何とかなると思っていたので」
出世の階段を駆け上がった。最初の勤務先では、すぐに管理職に昇格した。ビジネスのリーダー論をテーマに、各地で講演も行った。
だが14年前、大きな悩みの壁にぶち当たる。ある貪欲な同僚がいた。彼は、会社の上層部に何も知らせず、好き勝手に仕事を進めていた。会社のためを思った順傑は、それを上司に伝えた。だが、逆に順傑が、“告げ口をする陰湿な社員”のレッテルを貼られたのだ。
周囲からの冷たい視線。揺らぐ上司からの信頼……。「何を言っても、ビジネストレーニングで得たノウハウを使っても、どうしてもうまくいかないんです。四面楚歌でした」
ふと、母の姿が頭をよぎる。信心を始めてから、笑顔が増え、穏やかになった。
“この信心には、人を変える力があるのかもしれない”
順傑は、信心にかけてみようと思った。初めて、心を込めて題目を唱えた。なぜか、とめどなく涙があふれた。この日、順傑の胸に、希望の灯がともった。
母親の林麗真さん㊧は、何でも話せる信心の同志
母親の林麗真さん㊧は、何でも話せる信心の同志
未来のための土台を築く
未来のための土台を築く
ほどなくして、地区座談会に足を運んだ。「待っていたよ」との明るい声に包まれ、緊張が吹き飛ぶ。
長年、順傑の成長を祈り、見守り続けてくれた先輩方。創価家族の温もりが胸に染みた。
順傑は、いや増して懸命に祈った。すると、心が澄んでいくように感じた。
「今までは、悪いことは全て、周囲のせいにしていました。でも、自分が全てに責任をもって、誠実第一で生きようと思ったんです」
御書も真剣に学んだ。ある時には、「必ず三障四魔と申す障りいできたれば、賢者はよろこび愚者は退く、これなり」(新1488・全1091)との御文に、心が開かれる思いがした。
“つらい時こそ、未来のための土台を築いている時なんだ”
仕事への姿勢が変わった。自身が率いるチームのメンバーのために、陰の労苦をいとわず働いた。生来の短気な性格も、影を潜めた。
信心を始めて約半年――。順傑のチームは、仕事で著しい結果を出した。そして、黙々と働く順傑に、上司は再び深い信頼を寄せた。一方、あの同僚は、文句を言い散らして会社を去っていった。
「全ての問題が解決したんです。自分自身が変わったからだと確信しました」
2016年、順傑は新たな人生のステージへ進んだ。知人と共に起業したのだ。ウオーターサーバーや寝具を手がける会社を設立した。
滑り出しは順調だった。会社は、自社のイベントホールを持つまでに発展。だが突然、それまでの成功が、音を立てて崩れる事態に陥った。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)である。
打撃は大きかった。経営は毎月赤字。一人また一人と、社員が辞めていく。ちらつく「倒産」の二字。眠れない日が続く。揺れ動く心と戦った。
“顧客の皆さまのためにも、何より自分を信じて、ついてきてくれた仲間のためにも、絶対に会社を守らねば”
ほどなくして、地区座談会に足を運んだ。「待っていたよ」との明るい声に包まれ、緊張が吹き飛ぶ。
長年、順傑の成長を祈り、見守り続けてくれた先輩方。創価家族の温もりが胸に染みた。
順傑は、いや増して懸命に祈った。すると、心が澄んでいくように感じた。
「今までは、悪いことは全て、周囲のせいにしていました。でも、自分が全てに責任をもって、誠実第一で生きようと思ったんです」
御書も真剣に学んだ。ある時には、「必ず三障四魔と申す障りいできたれば、賢者はよろこび愚者は退く、これなり」(新1488・全1091)との御文に、心が開かれる思いがした。
“つらい時こそ、未来のための土台を築いている時なんだ”
仕事への姿勢が変わった。自身が率いるチームのメンバーのために、陰の労苦をいとわず働いた。生来の短気な性格も、影を潜めた。
信心を始めて約半年――。順傑のチームは、仕事で著しい結果を出した。そして、黙々と働く順傑に、上司は再び深い信頼を寄せた。一方、あの同僚は、文句を言い散らして会社を去っていった。
「全ての問題が解決したんです。自分自身が変わったからだと確信しました」
2016年、順傑は新たな人生のステージへ進んだ。知人と共に起業したのだ。ウオーターサーバーや寝具を手がける会社を設立した。
滑り出しは順調だった。会社は、自社のイベントホールを持つまでに発展。だが突然、それまでの成功が、音を立てて崩れる事態に陥った。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)である。
打撃は大きかった。経営は毎月赤字。一人また一人と、社員が辞めていく。ちらつく「倒産」の二字。眠れない日が続く。揺れ動く心と戦った。
“顧客の皆さまのためにも、何より自分を信じて、ついてきてくれた仲間のためにも、絶対に会社を守らねば”
胡さん(右端)が、信頼する青年部メンバーと
胡さん(右端)が、信頼する青年部メンバーと
苦難との“最高の向き合い方”
苦難との“最高の向き合い方”
日夜、池田先生の小説『新・人間革命』をひもといた。この苦闘の月日が「師弟の絆を感じた原点」だと、順傑は述懐する。
今も大切にしている、ある一節がある。
「社会は激動している。事業の失敗もあろう。しかし、決して自分に負けないことだ。人間は、事業に負けるのではなく、自分に敗れる。落胆、逃避、自暴自棄……。その心が自身を滅ぼしてしまう。信仰とは、自らを励まし、奮い立たせる、精神の究極の力である」
“そうだ、心が屈しないことだ。耐え抜くことだ”
日々、社員を励ました。「大丈夫、必ず挽回できるから」。人材の育成にも力を入れ、商機を待った。
半年後、雲間から光が差すように経営状況が好転。やがて苦境を越え、コロナ禍前の水準まで収益が戻った。
結果、シンガポールで著名なビジネスアワードである「SME500アワード」を、2020年をはじめ、23年、24年と連続で受賞。「池田先生の弟子として勝ち取った、信心の実証です」
昨年には、晴れて会社のCEO(最高経営責任者)に就任。さらなる販路の拡大へと意気込む日々だ。
人生は悩みの連続である。だからこそ、苦悩に負けない哲学が必要となる。その鍵は“心の変革”にあると、順傑は力説する。彼の生き方に共感した何人もの友人が今、共に信仰の道を歩んでいる。
順傑は、感慨を込めて語る。
「勝利の人生とは、“悩みがない”ことではありません。苦難との“最高の向き合い方”を学び、全てを成長の肥やしにしていく。それが仏法者の生き方なのだと実感しています」
学会では、男子部部長、また未来部担当者として、友の励ましに走る順傑。広布と人生の勝利者に――その温和な瞳には、誓いの炎が燃えている。
日夜、池田先生の小説『新・人間革命』をひもといた。この苦闘の月日が「師弟の絆を感じた原点」だと、順傑は述懐する。
今も大切にしている、ある一節がある。
「社会は激動している。事業の失敗もあろう。しかし、決して自分に負けないことだ。人間は、事業に負けるのではなく、自分に敗れる。落胆、逃避、自暴自棄……。その心が自身を滅ぼしてしまう。信仰とは、自らを励まし、奮い立たせる、精神の究極の力である」
“そうだ、心が屈しないことだ。耐え抜くことだ”
日々、社員を励ました。「大丈夫、必ず挽回できるから」。人材の育成にも力を入れ、商機を待った。
半年後、雲間から光が差すように経営状況が好転。やがて苦境を越え、コロナ禍前の水準まで収益が戻った。
結果、シンガポールで著名なビジネスアワードである「SME500アワード」を、2020年をはじめ、23年、24年と連続で受賞。「池田先生の弟子として勝ち取った、信心の実証です」
昨年には、晴れて会社のCEO(最高経営責任者)に就任。さらなる販路の拡大へと意気込む日々だ。
人生は悩みの連続である。だからこそ、苦悩に負けない哲学が必要となる。その鍵は“心の変革”にあると、順傑は力説する。彼の生き方に共感した何人もの友人が今、共に信仰の道を歩んでいる。
順傑は、感慨を込めて語る。
「勝利の人生とは、“悩みがない”ことではありません。苦難との“最高の向き合い方”を学び、全てを成長の肥やしにしていく。それが仏法者の生き方なのだと実感しています」
学会では、男子部部長、また未来部担当者として、友の励ましに走る順傑。広布と人生の勝利者に――その温和な瞳には、誓いの炎が燃えている。
※取材協力/シンガポール 「Creative Life・創価人生」誌
※取材協力/シンガポール 「Creative Life・創価人生」誌
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