• ルビ
  • シェア
  • メール
  • CLOSE

〈BUDDY―男子部大学校の絆― 信仰体験〉 祈り、歩き、語る。人生初の弘教を成就 2023年11月2日

  • 弱点と思っていた「繊細さ」 信心で「人を励ます力」に
阿部さん㊧、村上さん㊥、石川さん
阿部さん㊧、村上さん㊥、石川さん

 村上広樹さん(26)=男子部部長=が生まれたのは、山形県酒田市。
  
 幼い頃、会館には、牙城会の任務に就く父・誠さん(65)=副本部長=の姿があった。
 30年以上、聖教新聞を配達。寡黙な父は、その背中で信心を教えてくれた。
  
 母・裕子さん(63)=白ゆり長=は、慈愛の言葉と笑顔で寄り添ってくれた。
 学校での悩みを漏らすと「池田先生はね……」と、いつも師の指針を通し、励ましてくれた。

 高校卒業後、村上さんは鉄道車両の部品製造会社に就職する。
  
 実家を出て、上京。出立の時、伯母(青柳仁子さん)は言った。
 「世界のどこに行っても、創価家族がいる。広樹の支えになってくれるから、縁を切ってはいけないよ」
 その言葉を抱き締め、故郷を後にした。
  
 東京都府中市で始まった1人暮らし。
 高卒1年目の新人。会社で信頼を得ようと懸命に食らいつく。一つ、悩みがあった。
  
 「幼い頃から、生真面目で繊細な性格」。何げない一言も真に受けてしまう。
 「冗談だよ」と言われても、ナイーブな自分の心は変えられない。
 ましてや、慣れない土地で、ゼロからの人間関係。知らず知らずのうちに心が張り詰め、不安が募っていった。

男子部の友と
男子部の友と

 体が悲鳴を上げる。おなかに発疹ができ、かゆくて仕方がない。
  
 赤い斑点と水ぶくれ。寝返りを打つだけで、激痛が走った。
 「帯状疱疹」。ストレスが発症の一因だった。
  
 この頃、村上さんの家を訪ねる人がいた。遠田秀雄さん(男子部部長)。彼の祖母は、村上さんと同郷。近所のよしみで、故郷の話に花が咲いた。
  
 聞き役の遠田さんが、話を引き出してくれるからか、初対面なのに“何でも相談できてしまう”。
 「元気?」「仕事どう?」。玄関の扉を開けると、そこには変わらない笑顔があった。
  
 2カ月がたった頃、村上さんは考えた。
 “僕のことを、どうしてここまで気にかけてくれるんだろう”
 あの日の伯母の言葉を思い出した。
  
 “この人たちと一緒にいたら、コミュニケーションが苦手な自分を変えられるかもしれない”とも思った。

 上京後、初めて座談会に参加する。皆が旧知の間柄のように迎えてくれた。
 話を振られるも、あまりの緊張に、たどたどしくなる。“やっぱり、人前で話すのは怖い”
  
 それでも勇気を振り絞る。“変わりたい。強くなりたい”。阿部貴央さん(男子部部長)の背中について、訪問・激励に歩いた。
  
 ドアが開く。立っているのは初対面の人。
 “僕に話が振られたらどうしよう”。心臓の音が聞こえてきそう。「初めまして……」。自己紹介が精いっぱい。
  
 何軒か回るうち、驚くことがあった。阿部部長は、一人一人の状況をつぶさに把握していた。
 仕事や趣味、家族構成……環境や近況を知っているから、その人にあった言葉を紡ぎ出せる。
  
 “分かってもらえている”という安心感からか、メンバーの表情は自然と穏やかに。
 “なんて、すごいんだろう。僕も、こんなふうになりたい”。素直に、そう思った。

 村上さんにとって、人と会い、語るには、生命力が要る。
 だから訪問する前には、阿部部長が一緒に勤行・唱題をしてくれた。
  
 祈り、歩き、語る。また祈り、歩き、語る。
 二人三脚で歩んだ広布道。その一歩一歩が村上さんの心を鍛え上げた。
 あいさつや自己紹介だけでなく、雑談や信心の話もできるように。そしていよいよ、「次は村上君が前に出てやってみて」と。
 緊張しながらピンポンを押す。言葉に詰まっても真心を尽くした。
 その真剣さを笑う人はいなかった。
  
 「僕、お菓子作りが趣味で、男子部のメンバーや職場の人によくケーキを贈るんです」
 「ケーキ作れるんですか! すごいですね」
  
 話が弾むとうれしかった。“もっとメンバーのことを知りたい”と思った。
 いつの間にか、人と会うことが「楽しみ」になっていた。

 “どんな言葉をかけたら、喜んでもらえるだろう”。繊細な村上さんだからこそ、より相手の立場に立って考えられる。
 学会活動で身に付けた「タフな心」が、“弱点”とさえ思っていた「繊細さ」を輝かせてくれた。
  
 ある日、職場の同僚に言われた。「村上、前より、すごい話すようになったね」
 気付けば、先輩や上司にも、積極的にコミュニケーションを取り、円滑に仕事を進められるようになっていた。
  
 男子部大学校(2期)に入った。
 村上さんの勝利長(育成責任者)は、金子由人さん(現在は埼玉県朝霞市で男子部部長を務める)。
 “悩んでいないか”“仕事や生活で行き詰まっていないか”と、連日、心を寄せてくれた。
 金子さんから届く「絵文字の多い長文のLINE」に、真心の深さを感じた。

牙城会の任務に就き、来館者を迎える村上さん㊨
牙城会の任務に就き、来館者を迎える村上さん㊨

 大学校では、阿部部長、金子さんと3人で集まり、小説『人間革命』をひもとく。
 1年間で、全12巻を読了した。
  
 心揺さぶられたのは、戸田先生の心を心とし、どこまでも「一人」を大切にする池田先生の姿。
 宿命の嵐の中で苦しむ人々に、手を差し伸べ、肩を抱き、勝ち越えるまで励ます。
 池田先生の「師弟の誓願」を知った時、知りたかった答えを見つけたような気がした。
  
 なぜ、男子部の先輩たちは、一人のために尽くすのか。
 それは、きっと「師匠のようになりたい。師匠のように生きていきたい」という願いがあるからなのだろう、と。
  
 “師匠・池田先生の心を継ぎ、僕も、後継の弟子として、一人に尽くしたい”
 村上さんは、学会の中だけでなく、友人にも仏法の魅力を伝えていくようになる。

 大学校を終え、牙城会の一員になる。父に電話した。
 「おやじと同じ、牙城会に入ったよ」。返事は素っ気なかったが、母がこっそり教えてくれた。
 「お父さん、広樹と電話してる時、ニコニコしてね。うれしそうだったよ」。胸の奥がじわっと温まる。
 両親に、少しだけ親孝行できた気がした。
  
 石川宣夫さん(区男子部長)の励ましを力に、勇気を振り絞って、対話を重ねる。
 「学会活動を通して変われたこと」をありのまま伝えた。
 理解し、応援してくれる人もいた。誤解されてしまうこともあった。
 2年間で、対話した友は15人。真心を尽くしたが、同志となって手を携えてくれる友はいなかった。
  
 それでも、村上さんは諦めなかった。
 “折伏させてください。この仏法を求めている人に出会わせてください”

 祈り始めて数カ月後――行きつけの店で、意気投合する人がいた。藏野岐人さん。「仕事の悩みがある」と打ち明けてくれた。
  
 石川さんに言われた。大切なのは「広樹君自身が、藏野さんを必ず幸福にしたいと本気で祈り切れるかどうかだよ」と。
 一心不乱に祈り、男子部の先輩に会ってもらっては、学会の温かさ、学会活動の意義を伝えた。
  
 祈る中で、藏野さんの悩みが解決していく。
 題目の力と同志のぬくもりを実感した藏野さんは「村上さんを信じて、創価学会に入会します!」と。
 昨年10月、村上さんにとって、人生初の弘教が実る。胸が震えるほど、うれしかった。
  
 昨年、藏野さんは教学部任用試験に合格。今は兵庫県姫路市で、信心に励んでいる。

昨年10月に行われた、藏野さん(前列左)の入会記念勤行会
昨年10月に行われた、藏野さん(前列左)の入会記念勤行会

 本年1月、村上さんは、男子部部長の任命を受けた。
 「折伏の功徳か、転入メンバーが多く、新しい人材が次々に育っています」
  
 大学校(6期)にも2人の部員が入り、今度は村上さんが、勝利長を務めている。
  
 今も耳朶に響く、先輩の言葉がある。
 「人間の心は器のようなもの。コップのようなら、小さな悩みも大きく感じる。バケツのようなら、大きな悩みも小さく感じる」
  
 自分のことで汲々としていた村上さんが、今ではメンバーや友人の悩みも“わがこと”として捉え、祈り、励ませるようになった。
  
 心は見えない。だが、その変化は自分の振る舞いに表れる。
 だから、学会活動は楽しい。

 むらかみ・ひろき
 1996年(平成8年)生まれ、97年入会。東京都府中市在住。男子部部長。
  
 あべ・たかおう
 1989年(平成元年)生まれ、90年入会。東京都府中市在住。男子部部長。
  
 いしかわ・のぶお
 1985年(昭和60年)生まれ、同年入会。東京都府中市在住。区男子部長。

動画

SDGs✕SEIKYO

SDGs✕SEIKYO

連載まとめ

連載まとめ

Seikyo Gift

Seikyo Gift

聖教ブックストア

聖教ブックストア

デジタル特集

DIGITAL FEATURE ARTICLES デジタル特集

YOUTH

劇画

劇画
  • HUMAN REVOLUTION 人間革命検索
  • CLIP クリップ
  • VOICE SERVICE 音声
  • HOW TO USE 聖教電子版の使い方
PAGE TOP