〈信仰体験〉　敏腕営業担当者時々ユーチューバー

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〈信仰体験〉　敏腕営業担当者時々ユーチューバー 2025年8月24日

超おせっかいな生き方サイコー
超（ちょう）おせっかいな生き方サイコー

仕事の合間に、高木さんは愛妻弁当でエネルギーをチャージ

　【福井県越前市】ある時は、敏腕の営業担当者。またある時は、福井の飲食店を紹介するユーチューバー。さらには3人の子のパパであり、保育園の保護者会の会長と、いくつもの顔を持つ、高木清紀さん（39）＝総県青年部長。どんな場所でも“いてほしい人”として引っ張りだこ。でも実は、高木さんがこの地に来たのは「どん底の人生をリセットするため」だった。

幼き日の家族写真

和楽の笑顔が咲く高木ファミリー（後列右から妻・ゆずみさん、長女・はなさん、長男・清士郎さん、次男・清人さん、高木さん）

　5人きょうだいの三男として鹿児島県に生まれた。貧しかった暮らしの反動か、高校に入ると遊びほうけて留年。社会人になるとオープンカーを乗り回し、夜の街で豪遊ざんまい。気付けば借金は数百万円。
　21歳の春、何かから逃げるように家を出た。

　「友達が誘ってくるから、お金を使ってしまうんだ、と人のせいにしていました。福井に来た理由ですか？　縁もゆかりもない土地でやり直すつもりだったんです。待っていたのは孤独でした。12時間の労働に加えて、誰も相手にしてくれない。惨めさに、真っ暗な部屋で泣いていました」

　2008年（平成20年）の冬、弟の朋之さん（36）＝圏男子部主任部長＝が家に転がりこんできた。同じように借金を抱えて。カップ麺を分け合い、真冬の公園で髪を洗った。

　“俺ら、どうなっていくんやろ？”。しかし朋之さんは、人生を好転させる1冊の本を持って来ていた。
　「福井のことが書かれているから」と、朋之さんが地元を離れる際、母・つや子さん（76）＝女性部副本部長＝から小説『新・人間革命』第17巻を手渡された。母の祈りほど強いものはない。電車の中で読み始めた朋之さんは、兄に内緒で、地元の創価学会の会館に、ふらりと行ってみたのだった。

　「弟に『おまえが会館に行ったから、創価学会の人間が来るようになったぞ』と、かなり文句を言いましたよ。居留守を使ったり、追い返したりしても諦めず、訪問し続けてくれた。ついに根負けして『ご飯に連れて行ってくれるなら、会合に行くで』って言ったんです。参加した集いでは、体を張って笑いを取ったり、赤裸々に悩みを話し、励まし合ったりしてました。俺、久しぶりに笑ってましたよ」

　09年、高木さんはリーマン・ショックの影響で職場を解雇された。落ち込んでいると、すぐ男子部の先輩がやってきた。

ガッツポーズをする高木さんがいるところには、いつも明るい声が響く。苦楽を共にしてきた男子部の同志らは「皆の人生の節目にキヨさん（高木さんの愛称）がいるんです」と

母の題目を感じた途端「怖いもん無くなった」

　「初めは、やり切れない怒りをぶつけました。それでも先輩は『人や環境のせいにして生き続けていくつもりなのか。自分の人生は自分で切り開くしかないぞ』と引かない。その熱意に心が動きました。それに、信心頑張ったら、母ちゃんが喜んでくれるかなと思ったんです」

　“ボートレーサーになる”。人生で初めて掲げた目標だった。学会活動に励むと、試験勉強や筋トレに熱が入った。母に電話するたび、「苦しくても信心を貫くことよ」とうれしそうな声が返ってきた。
　「“生き方のクセ”はすぐに変わらなくて。ついついパチンコに行っちゃって。そんな時に限って、先輩が『何してる？』って電話をかけてくる。どんな嗅覚してんねん！と驚きましたよ。食事や銭湯に連れて行ってくれました。その真心に応えたいっていうのかなあ。自分を変えて、誰よりも幸せになってやる！と誓いました」
　学会活動に励めば励むほど、かつて追いかけた刹那的な楽しさではない、内面から湧き上がる楽しさで心が晴れ晴れとする。

　一方で、ボートレーサーの試験には7回挑んだが不合格。結婚を機に、夢にスパッと区切りを付けた。そして「おとこのしわざはめのちからなり」（新1316・全975）を、つくづく実感する。高倍率を突破し、日本最大級の中古車情報サイトを運営する会社に営業として採用されたのだから。

　「深夜まで残業しても結果が出せないまま月日がたち、完全に自信を失いました。でも立ち上がるのは、やっぱり題目しかないんですよ。俺、母が使っていたお数珠を使ってるんです。それで題目あげたら、母ちゃんと一緒に唱題してる感じがして、怖いもんが無くなる。それで、同志の所に行くでしょ。“師匠なら、どう声をかけて励まされるだろう”と考えるようになりました。答えを求めて池田先生の著作を学ぶ中で、先生をすぐ側に感じるようになって。そして、とことん同志の人生と向き合うようになりました。そこからじゃないですか、“超おせっかい”な俺が誕生したのは」

母から引き継いだ数珠

どん底からの再起　周囲を照らす自分になれた

　借金を抱える友のためには共に返済計画を練ったり、別れ話がこじれた友と一緒に、頭を下げに行ったりした。多様な悩みと格闘する中で、これまでの経験が他者の痛みや苦しみに共感するための“財産”だと、だんだん感じるようになった。そうして磨いた人格は、職場でも光を放っていく。

　「頭がいいわけでも、特別な力があるわけでもないから、人間性で勝負するしかない。顧客の要望に寄り添い、店の発展のために尽くそうと、朝礼から一緒に働いて改善点を探したこともあります。そうした“伴走型の営業”を心がけ、150店以上の経営者たちと地道に信頼を築いていきました」
　営業成績は北陸地域で常に1位に。全国600人以上の営業担当者の中で5年連続10位以内に入った。昨秋、本社への転勤の話もあったが転職し、新たな舞台でも実証を示している。さらに、愛する地域のために小学校のPTAや壮年団などとしても汗を流す。

　「任せてもらえることがうれしい。全て学会での訓練のおかげです。それに、保育園の行事などで前に立つと『父ちゃん、すごい！』と子どもたちが喜んでくれるから、胸張っていいのかなーって思うんですよ。これまで池田先生、福井の皆さんから受けてきた恩を、縁する人たちに返していきたい」
　高木さんと接した分だけ、こちらが元気になる。その人柄に触れ、これまで14人が創価学会員となった。
　「池田先生の弟子という自覚が、絶対に負けられない根本の力です。とにかく言いたいのは、どんな人でも必ず変われるってことかな。だって、俺が変われたんですから」

　高木さんは変わった。まさか、ユーチューバーになるなんて。
　きっかけは「コロナ禍で、飲食店を営む同志が苦しんでいたこと」。ある日、店を訪れて撮影する高木さんに、その友は「どうしたんですか？」と。
　「ユーチューブの登録者が1000人を超えたら君の店を紹介すると決めててん」
　「泣かせないでくださいよ」

　高木さんが持つ多彩な顔は、“超おせっかい”な関わりの結晶なのだろう。

（関西支社）