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〈教育〉 連載企画 不登校に向き合う① 2026年4月2日

  • 保護者の孤立を防ぐ
和光大学 髙坂康雅教授 公認心理師

 小・中学校の不登校児童・生徒数は12年連続で増加し、過去最多の35万人以上に上ります。連載企画「不登校に向き合う」では、それぞれが抱える不安や課題に光を当て、解決への糸口を探ります。第1回は、「保護者の孤立を防ぐ」をテーマに、和光大学現代人間学部教授の髙坂康雅さんに聞きました。

 ――不登校の保護者は孤立を感じやすいといわれます。その理由はどこにあるのでしょうか。
   
 現在の日本の教育は「子どもは学校に行くのが当たり前」という前提が強く、学校に行かないことを否定的に捉えられやすい状況があります。そのため、子どもの不登校について周囲に打ち明けにくく、相談のハードルが高くなっています。
 仮に相談できたとしても「そのうち行くようになるよ」「もっとこうしたら」といった助言を受けることが少なくありません。しかし実際には、既に試しているケースがほとんどです。結果として「理解してもらえない」という感覚が強まり、孤立感を深めてしまいます。
  
 

「親の会」への参加で安心と情報を

 ――どこに相談すればいいでしょうか。
   
 まずは、担任の先生に相談することが基本です。そこから養護教諭やスクールカウンセラーにつないでもらうのがよいでしょう。教育支援センターや児童相談所などの公的な機関にもつなげ、関わる人を増やしていくことで、子どもと相性が合う人に出会えたり、より良い解決法が見つかったりすることがあります。
  
 インターネット上には玉石混交の情報があふれています。まずは無料で利用できる公的な相談窓口(別掲)を活用することをお勧めします。
 重要なのは「選択肢を増やすこと」です。相談先や支援機関を広げるだけでなく、学校との関わり方にも柔軟性を持たせることが求められます。例えば、朝だけ登校する、校門タッチや職員室に顔を出して帰る、給食のみ参加するなど、多様な関わり方を用意しておくことは有効です。
 こうした選択肢をどれだけ広げられるかが、不登校支援の重要なポイントになります。これを一人で、あるいは保護者だけで抱え込もうとすると、負担は大きくなってしまいます。
  
 「不登校支援は親支援」といわれるように、保護者、特に日常的に関わることの多い母親が疲弊しないことが極めて重要です。そのためには個別の支援に加え、保護者同士がつながるネットワークづくりも欠かせません。その意味で、「不登校 親の会」に参加することを勧めています。
 学校は違っても、同じ悩みをもつ親同士が話し合うことで「うちの子だけじゃないんだ」という安心感が得られます。
  
 

PIXTA
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 ――夫婦で協力するためのポイントはありますか。
   
 共働き世帯が増えているとはいえ、不登校への対応が母親に偏りがちな家庭は少なくありません。仕事を辞める、勤務時間を短縮するといった対応を迫られるのは母親が圧倒的に多くなります。日常的に子どもと向き合い、学校との連絡を担うため、結果として、子どもの状態や不登校に関する知識・理解は母親の方に蓄積されやすくなります。
  
 一方、父親は子どもと接する時間が限られ、情報の多くを母親からの伝聞に頼ることになります。この「情報格差」が、不登校の受け止め方の違いを生みます。
 受け止め方や対応のすれ違いを防ぐためには、情報を多く持つ母親が「してほしいこと」「避けてほしいこと」を具体的に伝え、父親がそれを尊重して行動することが重要です。
  
 さらに、不登校への対応では「ゴール設定」も欠かせません。「半年後」「進学のタイミング」といった中長期的な視点を共有し、その過程で何を目指すのかを夫婦で確認することが求められます。
 こうした話し合いは、スクールカウンセラーや教育支援センターの相談員など第三者を交えて行うことで、より冷静かつ建設的に進めることができます。
  
 

 ――悩みを抱える保護者へのメッセージをお願いします。
   
 まずお伝えしたいのは、不登校は決して「行き止まり」ではないということです。不登校を経験した子どもの多くは高校へ進学し、その先も大学をはじめ、さまざまな進路が開かれています。
 近年では、教員や心理職の中にも不登校経験者が増えており、その経験があるからこそ理解できること、伝えられることがあります。
  
 子どもや家庭にとっては大きな問題に感じられるかもしれませんが、社会に出た時に問われるのは「何ができるか」であり、「不登校だったかどうか」ではありません。
 不登校は寄り道や遠回りに見えるかもしれませんが、その過程で新たな人や場所に出会い、将来に生きる経験となる可能性もあります。実際に、不登校経験者が関わって新たな取り組みが生まれている例もあります。
  
 だからこそ大切なのは、無理をしすぎないこと、頑張りすぎないことです。子どもが安心できる環境の中で自分のペースを取り戻していくことが、次の一歩につながっていきます。
  
 

【保護者が頼る場所 まず公的機関、そして民間の支援網へ】

 ●教育支援センター
 各地の教育委員会が設置しており、一人一人に合わせた個別学習や相談を行っている。
  
 ●児童相談所
 児童福祉司(ケースワーカー)、児童心理司、医師(精神科医、小児科医)、看護師、保健師など、多職種の専門家がチームで問題解決にあたる。
 ※民間のフリースクールや医療機関の受診を検討する際は、上記の専門職に相談しながら進めると安心です。
  
 ●民間の支援ネットワーク
 ウェブサイト(「未来地図」など)からも全国の親の会を探すことができる。
  
 ●地域の親の会
 公民館などで定期開催されることが多い。地域に根差した情報交換の場となっている。
  
 ●オンラインの支援団体
 近くに親の会がない場合や、匿名で参加したい場合に有効。NPO法人「多様な学びプロジェクト」が運営する「とまり木オンライン」など、各地から参加できる親の会や、専門家による動画講座・シンポジウムを提供している団体もある。
  
  

近著『不登校のあの子に起きていること』(ちくまプリマー新書)
近著『不登校のあの子に起きていること』(ちくまプリマー新書)

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