〈防災――身を守る行動〉 大地震時の液状化に備える
〈防災――身を守る行動〉 大地震時の液状化に備える
2026年5月3日
新潟大学災害・復興科学研究所所長
卜部厚志さん
新潟大学災害・復興科学研究所所長
卜部厚志さん
三陸沖や長野県北部で地震が相次いでいる。日本では「いつ」「どこで」大地震が起きてもおかしくない。発生が危惧される南海トラフ巨大地震や首都直下地震では建物倒壊や津波と並び、液状化による甚大な被害が懸念される。液状化による全壊建物は南海トラフでは最大11万棟、首都直下では最大2万棟と想定される。液状化研究の第一人者である新潟大学災害・復興科学研究所所長の卜部厚志さんに備えなどについて聞いた。
三陸沖や長野県北部で地震が相次いでいる。日本では「いつ」「どこで」大地震が起きてもおかしくない。発生が危惧される南海トラフ巨大地震や首都直下地震では建物倒壊や津波と並び、液状化による甚大な被害が懸念される。液状化による全壊建物は南海トラフでは最大11万棟、首都直下では最大2万棟と想定される。液状化研究の第一人者である新潟大学災害・復興科学研究所所長の卜部厚志さんに備えなどについて聞いた。
〈〈リスクの高い地盤とは〉〉
●地表近くに厚い砂粒の地層がある
●地表近くに地下水がある
〈〈リスクの高い地盤とは〉〉
●地表近くに厚い砂粒の地層がある
●地表近くに地下水がある
現象が生じる条件
現象が生じる条件
液状化とは、地震の揺れによって地下水を含んだ緩い砂地盤が、液体のような状態になる現象です。
リスクが高い地盤には、二つの特徴があります。一つ目が、地盤の地下5メートル以内に厚い砂粒の地層があることです。二つ目が、地盤の地下3メートル以内に地下水があることです。
砂の地層と地下水がある地盤では、砂粒が地下水を隙間に含みながら互いに支え合って安定を保っています。
しかし、強い揺れ(震度5弱以上が目安)が伝わることで、砂粒同士の結び付きが崩れ、地下水の圧力が高くなり、砂粒が地下水に浮いたような状態となり、地面が“液体化”してしまうのです。
結果、地上の建物の傾斜、地面の隆起や沈下、盛り土の変形などが発生します。また、圧力の高まった地下水が砂とともに地表へ噴き出す「噴砂」も発生します。地震が収まると、砂粒が再び沈降して地盤が締まり、地下水と砂粒が噴き出した分だけ地面は沈みます。
また、リスクを高める要因に、砂粒の大きさのそろい具合があります。
大きさが比較的均一な砂粒は液状化が起きやすくなる一方、大きさが不均一な砂や、粒子の細かい土は、粒同士がしっかりかみ合うため、液状化のリスクは低下します。
液状化とは、地震の揺れによって地下水を含んだ緩い砂地盤が、液体のような状態になる現象です。
リスクが高い地盤には、二つの特徴があります。一つ目が、地盤の地下5メートル以内に厚い砂粒の地層があることです。二つ目が、地盤の地下3メートル以内に地下水があることです。
砂の地層と地下水がある地盤では、砂粒が地下水を隙間に含みながら互いに支え合って安定を保っています。
しかし、強い揺れ(震度5弱以上が目安)が伝わることで、砂粒同士の結び付きが崩れ、地下水の圧力が高くなり、砂粒が地下水に浮いたような状態となり、地面が“液体化”してしまうのです。
結果、地上の建物の傾斜、地面の隆起や沈下、盛り土の変形などが発生します。また、圧力の高まった地下水が砂とともに地表へ噴き出す「噴砂」も発生します。地震が収まると、砂粒が再び沈降して地盤が締まり、地下水と砂粒が噴き出した分だけ地面は沈みます。
また、リスクを高める要因に、砂粒の大きさのそろい具合があります。
大きさが比較的均一な砂粒は液状化が起きやすくなる一方、大きさが不均一な砂や、粒子の細かい土は、粒同士がしっかりかみ合うため、液状化のリスクは低下します。
※地震調査研究推進本部ホームページ掲載のものを参考に作成
※地震調査研究推進本部ホームページ掲載のものを参考に作成
危険性が高い場所
危険性が高い場所
液状化リスクが高い地盤は、どんな場所に広がっているのでしょうか。
結論から言うと、沿岸部や埋め立て地、低地部、大河川の沿岸部や下流域、そして昔の地形が川や池、沼だった場所など多岐にわたります。こうした場所の多くに共通するのが、砂の地層と地表に近い地下水です。
まず砂の地層が形成される主な経路は二つです。
一つ目が、河川経由です。粗い礫や石は下流までは運ばれにくく、粒子が小さい土砂が下流まで運ばれ、沖積低地が形成されてきました。現代では東京や大阪、名古屋の土地の一部がこれに当たるなど、大都市が立地する人口集積地にもなっています。河川経由だけでなく、海の波によって砂粒が海岸に集まったり、風に運ばれて砂丘になったりすることもあります。
二つ目が人為的に造成されたものです。湾岸沿いの埋め立て地が代表例です。
新潟では砂丘の砂を田んぼに入れていました。1964年の新潟地震で田んぼだった土地が液状化したのは、この産物でもありました。
また、日本各地で大河川の洪水対策として、川底にたまった土砂や泥をすくい取る工事(浚渫)が行われ、掘り出した土砂を周辺の土地に移して宅地を造成することも繰り返されてきました。
地下水の高さは地形や地質に加え、周囲の川や海との関係に左右されます。土地が低い場所では、地下水が地表近くまで上がりやすい傾向があります。
一方で、「標高が高いから安心」とも言い切れません。近くに大きな川があり、その水面の高さとそれほど変わらない高さの土地では、地表近くに地下水がある場合があります。
さまざまな場所に液状化リスクが高い地盤が広がっています。阪神・淡路大震災では神戸市、芦屋市、西宮市の埋め立て地で液状化が発生し、神戸港は大きな被害に見舞われました。
東日本大震災では東京湾岸の埋め立て地や利根川流域で被害が広がり、熊本地震では内陸部でも液状化が確認され、多くの住宅が傾きました。能登半島地震では新潟、富山、石川に被害が広がりました。
土地の成り立ちが、被害の有無に関係しているのが分かっています。
液状化リスクが高い地盤は、どんな場所に広がっているのでしょうか。
結論から言うと、沿岸部や埋め立て地、低地部、大河川の沿岸部や下流域、そして昔の地形が川や池、沼だった場所など多岐にわたります。こうした場所の多くに共通するのが、砂の地層と地表に近い地下水です。
まず砂の地層が形成される主な経路は二つです。
一つ目が、河川経由です。粗い礫や石は下流までは運ばれにくく、粒子が小さい土砂が下流まで運ばれ、沖積低地が形成されてきました。現代では東京や大阪、名古屋の土地の一部がこれに当たるなど、大都市が立地する人口集積地にもなっています。河川経由だけでなく、海の波によって砂粒が海岸に集まったり、風に運ばれて砂丘になったりすることもあります。
二つ目が人為的に造成されたものです。湾岸沿いの埋め立て地が代表例です。
新潟では砂丘の砂を田んぼに入れていました。1964年の新潟地震で田んぼだった土地が液状化したのは、この産物でもありました。
また、日本各地で大河川の洪水対策として、川底にたまった土砂や泥をすくい取る工事(浚渫)が行われ、掘り出した土砂を周辺の土地に移して宅地を造成することも繰り返されてきました。
地下水の高さは地形や地質に加え、周囲の川や海との関係に左右されます。土地が低い場所では、地下水が地表近くまで上がりやすい傾向があります。
一方で、「標高が高いから安心」とも言い切れません。近くに大きな川があり、その水面の高さとそれほど変わらない高さの土地では、地表近くに地下水がある場合があります。
さまざまな場所に液状化リスクが高い地盤が広がっています。阪神・淡路大震災では神戸市、芦屋市、西宮市の埋め立て地で液状化が発生し、神戸港は大きな被害に見舞われました。
東日本大震災では東京湾岸の埋め立て地や利根川流域で被害が広がり、熊本地震では内陸部でも液状化が確認され、多くの住宅が傾きました。能登半島地震では新潟、富山、石川に被害が広がりました。
土地の成り立ちが、被害の有無に関係しているのが分かっています。
能登半島地震の液状化とみられる被害(2024年1月、石川県内灘町)
能登半島地震の液状化とみられる被害(2024年1月、石川県内灘町)
知見がないまま
知見がないまま
日本社会は、液状化リスクの高い土地に街を広げているといっても過言ではありません。液状化現象の科学的理解が深まる前に、日本社会の街づくりが進んでいったからです。
大地震による液状化被害が本格的に認識されたのは64年の新潟地震でした。
関東大震災や江戸時代の記録にも似た現象はありましたが、当時は火災や建物倒壊による甚大な被害の陰に隠れ、重視されませんでした。
新潟地震では最大で震度5であり、多くの建物が倒壊するような強い揺れではなく、液状化被害に目が行くことになりました。震度5の揺れで鉄筋コンクリートのアパートが大きく傾き、「なぜこの揺れで」と世界の研究者が衝撃を受け、地盤工学の転換点となりました。
そこから現象の解明が始まり、対策技術の確立は70~80年代以降となりました。
その間、日本は高度経済成長期でもあり、浚渫した砂で埋め立てる造成工事が急速に広がりました。
規制も知見も十分でないままに、街づくりが進んでしまったのです。
日本社会は、液状化リスクの高い土地に街を広げているといっても過言ではありません。液状化現象の科学的理解が深まる前に、日本社会の街づくりが進んでいったからです。
大地震による液状化被害が本格的に認識されたのは64年の新潟地震でした。
関東大震災や江戸時代の記録にも似た現象はありましたが、当時は火災や建物倒壊による甚大な被害の陰に隠れ、重視されませんでした。
新潟地震では最大で震度5であり、多くの建物が倒壊するような強い揺れではなく、液状化被害に目が行くことになりました。震度5の揺れで鉄筋コンクリートのアパートが大きく傾き、「なぜこの揺れで」と世界の研究者が衝撃を受け、地盤工学の転換点となりました。
そこから現象の解明が始まり、対策技術の確立は70~80年代以降となりました。
その間、日本は高度経済成長期でもあり、浚渫した砂で埋め立てる造成工事が急速に広がりました。
規制も知見も十分でないままに、街づくりが進んでしまったのです。
東日本大震災による液状化で駐車場に突き出たマンホール(2011年3月、千葉県浦安市内)
東日本大震災による液状化で駐車場に突き出たマンホール(2011年3月、千葉県浦安市内)
複数の避難経路を
複数の避難経路を
私たちにどんな対策や備えができるでしょうか。まずは、自身が住む場所や職場などの土地の成り立ちを知ることです。
国土地理院の地理院地図を使えば、土地の成り立ちや標高を無料で確認できます。また、地域によってばらつきはありますが、40年代後半ごろからの空中写真も閲覧でき、「うちは昔、田んぼだったんだ」「川の跡だ」などと確認できます。
また、都道府県などで作成している「液状化しやすさマップ」を確認するといいでしょう。
建物への対策は、建て替えのタイミングが最大のチャンスで、薬剤を入れて地盤の強度を上げたり、地区単位などでは地下水を低下させる工事があったりします。建物が立っている間は制約が大きくなります。
液状化被害は直接的に命に関わることは少ないとされますので、家具固定をしっかり行い、在宅避難できる備蓄を進めることが大切です。道路や橋が液状化によって損壊して自宅から動けなくなるというリスクもあるからです。
さらに、複数の避難ルートを事前に確認しておきましょう。国土地理院地図の使用方法について紹介します(下記)。
私たちにどんな対策や備えができるでしょうか。まずは、自身が住む場所や職場などの土地の成り立ちを知ることです。
国土地理院の地理院地図を使えば、土地の成り立ちや標高を無料で確認できます。また、地域によってばらつきはありますが、40年代後半ごろからの空中写真も閲覧でき、「うちは昔、田んぼだったんだ」「川の跡だ」などと確認できます。
また、都道府県などで作成している「液状化しやすさマップ」を確認するといいでしょう。
建物への対策は、建て替えのタイミングが最大のチャンスで、薬剤を入れて地盤の強度を上げたり、地区単位などでは地下水を低下させる工事があったりします。建物が立っている間は制約が大きくなります。
液状化被害は直接的に命に関わることは少ないとされますので、家具固定をしっかり行い、在宅避難できる備蓄を進めることが大切です。道路や橋が液状化によって損壊して自宅から動けなくなるというリスクもあるからです。
さらに、複数の避難ルートを事前に確認しておきましょう。国土地理院地図の使用方法について紹介します(下記)。
国土地理院地図を使ってみよう!
国土地理院地図を使ってみよう!
①土地の成り立ちを調べる
①土地の成り立ちを調べる
パソコン等から国土地理院地図のサイト(https://maps.gsi.go.jp)にアクセスします。確認したい場所にカーソルを合わせます(住所検索も可)。①標準地図をクリックします。②土地の成り立ち・土地利用→土地条件図を選択します。
パソコン等から国土地理院地図のサイト(https://maps.gsi.go.jp)にアクセスします。確認したい場所にカーソルを合わせます(住所検索も可)。①標準地図をクリックします。②土地の成り立ち・土地利用→土地条件図を選択します。
③数値地図25000(土地条件)を選択すると、地図に土地の成り立ちが表示されます(表示されない地域もあります)。
※青のアイコンを選択すると、配色ごとの土地の成り立ちが確認できます。
凡例の「旧河道」「旧水部」「高い盛土地」「盛土地・埋立地」「干拓地」「海岸平野・三角州」は液状化に特に注意する必要があります。加えて「氾濫平野」「後背低地」「湿地」「砂州・砂堆・砂丘」も起こりやすい地形です。
③数値地図25000(土地条件)を選択すると、地図に土地の成り立ちが表示されます(表示されない地域もあります)。
※青のアイコンを選択すると、配色ごとの土地の成り立ちが確認できます。
凡例の「旧河道」「旧水部」「高い盛土地」「盛土地・埋立地」「干拓地」「海岸平野・三角州」は液状化に特に注意する必要があります。加えて「氾濫平野」「後背低地」「湿地」「砂州・砂堆・砂丘」も起こりやすい地形です。
凡例の一部
凡例の一部
②空中写真で昔の地形を知る
②空中写真で昔の地形を知る
①標準地図を選択した後、年代別の写真をクリックすると、各年代の空中写真を閲覧することができます(重ね合わせも可能です)。
例えば、④1945年~1950年を選択してみます。
標準地図に空中写真が重ねられ、昔の地形を確認することができます(空中写真がない地域もあります)。
①標準地図を選択した後、年代別の写真をクリックすると、各年代の空中写真を閲覧することができます(重ね合わせも可能です)。
例えば、④1945年~1950年を選択してみます。
標準地図に空中写真が重ねられ、昔の地形を確認することができます(空中写真がない地域もあります)。
新潟大学災害・復興科学研究所所長
卜部厚志さん
新潟大学災害・復興科学研究所所長
卜部厚志さん
ご感想や取り上げてほしいテーマは、こちらからお寄せください。
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