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〈世界のザダンカイ〉 イギリス(1面から続く) 2025年8月21日
“温かさ”と“安心感”が人を引き寄せる
「彼女は“信心がしたい”と言ってきてね。私たちがまいた仏の種は、その時すぐに芽が出なくても、いつか必ず花開くと、身をもって感じました。皆さんも何かエピソードはありますか。どんな話でも大丈夫ですよ」
「そういえば」と、キャロル・ブラウンさん(本部総合婦人部長)が口を開く。
「この前、オーストラリアに行った時、タクシーの運転手と世間話をしてね。“私、仏教を信じているの”と伝えたら、彼女は“南無妙法蓮華経?”って! 聞くと、SGIメンバーだけど、しばらく学会活動から離れていたみたい。でも、私との会話を機に再び活動を始めたって、後から連絡をくれたの」
“弘教の闘士”と呼ばれるブラウンさんは、白いワンピースを着こなす80歳。この日も、青年世代の友人を連れて、座談会に参加していた。
流れるように、皆が次々と話していく。「対話とは、相手の言っていることを単に聞くことではなく、“相手の心”に耳を傾けることだと思います」「その模範こそ、池田先生です」
すると、14歳のエティ・ケンプソンさんも会話の中へ。
「この前、友達から“いつも話を聞いてくれてありがとう。大変だった時、あなたのおかげで心が軽くなった”と手紙をもらったよ」
ケンプソンさんは普段から、両親に信心の質問をたくさんするそうだ。そして、座談会等のディスカッションで、いろいろな考え方に触れ、それは時に思春期の悩みへの答えになるという。
話のテーマは「心の対話」に。「直接、会ったことがなくても、池田先生の言葉に感動するのは、先生が心で対話されているからだと思います」「対話とは、自分の心との対話でもある。だから、唱題が大事であり、師匠を持つことが大事なんですね」と、深みを増していった。
笑いあり。でも、時には真剣に。相手の発言は否定しない。話すのが苦手なら、話さなくても大丈夫。互いへの尊敬の心が光る1時間のディスカッションは、瞬く間に幕を閉じた。
今、両地区は2030年に向けて、大きな目標を掲げている。それは“地区を本部に発展させる”ということ――。
止まらない勢い。その秘訣を尋ねると、両地区の地区部長・婦人部長の答えは、いたってシンプルだった。
「池田先生ならどうされるかと、考え抜いてきたからです」
皆で何度も、先生の地区幹部への指導を読み合わせた。“とにかく一対一の励ましに徹しよう”。なかなか会えないメンバーとは、信心の話を抜きに、友人としてつながり続けた。
そして、三代の会長が大切にしてきた座談会――。“また来たい”“話したい”と思ってもらえるよう、一人一人への配慮を忘れず、温かな雰囲気づくりを心がけた。これまで多くの友が、座談会への参加を機に入会している。
午後9時過ぎ。リーダーたちは笑顔で手を振り、こう言った。「明日は早速、きょう来られなかったメンバーに会いに行ってきます。この熱気を伝えなきゃ!」
数日後、向かった先は、大都市ロンドンの北部にあるミルヒル。ここは閑静な住宅街。公園のベンチでは、木漏れ日の中で女性が本を読み、優雅な朝を送っている。車を走らせると、次なる座談会場であるトモコ・イムピーさん(ミルヒル地区・地区部長)の自宅が見えてきた。
都心部から近く、インドや日本出身のメンバーも多い地区。午前10時半、皆で祈りを共にした後、こちらも「対話」をテーマに、語らいに花を咲かせた。
この日、ミルヒル地区には、青年世代の友人2人が参加。彼らは2年間、ほぼ毎月、座談会に参加しているという。きっかけは、座談会に感銘を受けた一人の友人が、もう一人の友人を誘って参加するようになったこと。座談会の魅力を尋ねると、間髪を入れずに、こう言った。
「まず、メンバーのエネルギー! そして、これほど“開かれた対話の場”を見たことがありません」
「温かくて、思いやりにあふれている。幅広い年齢層の人から、人生についての話を聞けるのも貴重です」
この日は、一人の友人の誕生日。座談会終了後、イムピーさん手作りのホールケーキを囲み、皆でバースデーソングを歌った。
「まるで、家族のようでしょう?」。そう記者に語りかけてきたのは、イムピーさんと二人三脚で走ってきた、俳優のパメラ・ノンベッテさん(地区副婦人部長)。
「ミルヒル地区が、皆にとって“第二の家”となるように、メンバーと関わっています。それが池田先生に教えていただいたことですから」
なぜ、これほどまでに、イギリスで座談会が愛されているのか。ある壮年は熱っぽく語った。
「イギリスには今もなお、階級社会の風潮が残っています。昔ほどではないものの、自然と階級ごとに集まってしまう。だけど、SGIの座談会では、そうしたことは関係ない。また、人種や民族も関係ありません。皆が平等に、対等に、何でも話せる。こんな場所はSGIだけです」
今、社会では増加する移民の問題などを巡り、差別や分断の風潮が広がっている。人種や文化など、差異を理由とした対立も次々に生まれている。だが「差異」があるからこそ、「学び」と「尊敬」が生まれるのではないだろうか――。そのことが体現された創価の座談会。きっと、この美しさと安心感が、多くの人を引きつけるのだろう。
かつて、池田先生はつづった。「学会の座談会こそ、多種多彩なメンバーが集い合って場を共にし、皆が平等に語り合う、平和と文化と幸福のオアシスです」
きょうも、イギリスのメンバーのおしゃべりは止まらない。人間共和の縮図が、ここにある。