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〈SDGs×SEIKYO〉 私、人生楽しんでます。――脊髄性筋萎縮症の発信者 2023年6月2日

5:33

 北海道札幌市で暮らす佐々木美紅さん=地区副女性部長、文芸部員=には、幼い頃から「脊髄性筋萎縮症」という病気があり、4歳から車いすで生活しています。徐々に動かなくなっていく体。それでも彼女は、口と手を使って、楽しく生きる姿を世界に発信しています。(今回はSDGsの10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」について考えます。取材=石塚哲也、石井和夫)

この記事のテーマは「人や国の不平等をなくそう」

 佐々木さんは幼い頃から多くの不平等を経験してきた。「自分にできることは少ない」と、ずっと思ってきた。バカにされたり、哀れまれたりすることは、今もある。

 でも、「どんな人も、励まされるだけじゃなくて、人を励ますことだってできる。“障がい者はかわいそう”って思われがちだけど、私、結構、人生楽しんでます。そんな、ありのままを知ってもらいたくて最近、YouTubeも始めました」。

佐々木さんが配信するYouTubeには、夫・善一さん(右)も登場する
佐々木さんが配信するYouTubeには、夫・善一さん(右)も登場する

 1985年、1歳の佐々木さんは「脊髄性筋萎縮症」と診断された。脊髄の運動神経細胞が変性し、全身の筋力低下と筋萎縮が徐々に進行する厚労省の指定難病だ。

 物心つく前から、歩行や立ったり座ったりができなくなり、車いす生活に。長期の入院生活とともに、特別支援学校で小学校から高校時代までの12年間を過ごした。

 入院中は、週に1度の外出が一番の楽しみだった。しかし、子ども用の車いすは、いつも周囲の視線を集めて、恥ずかしい気持ちになった。

 小学校4年の時、駅の階段に設置されているリフトを利用した。いつものように車いすの周りに人だかりができた。

 “せっかくの外出なのに”――。

 そんな時、近づいてきた一人の婦人に話しかけられた。「うちの娘、事故で歩けなくなって引きこもっているの。でも、こうやって堂々と利用している人がいることを娘に伝えるわ」。周囲の視線は、偏見の目だけではないことを知った。

 創価学会の女子部(当時)の先輩たちとの出会いも「人生観を変えてくれた」。学会の先輩は、一緒に座談会や会合に参加するだけではなく、遊びに行ったり、人生相談にも乗ってくれたりと、「一人の友達」として接してくれた。

 「障がいのある私を普通に受け入れてくれたことが、うれしかった。学会は、誰一人として取り残さない“究極の平等な世界”だと思いました」

 それまでは、他人と比較し、自分を卑下しがちだったが、女子部で活動するようになってから、自身の生活の様子や思いをブログで発信するようになった。

「駅のホームでエレベーターを待っていたら、健常者の人たちに割り込まれて、エレベーターを3巡待った」
「いつかウエディングドレスを着たい」
「あの店のスイーツがおいしかった」

 車いす生活の“あるある”ネタや、障がいと関係ない話まで、いろいろ書いた。

 「その全てひっくるめて、“佐々木美紅”なんです」と語るのが、夫の善一さん=地区部長。

 「僕にとっては、心引かれた人が、たまたま障がいがあっただけ。ブログに寄せられたコメントに、障がい者か健常者かなんて関係なく、一生懸命、励ます美紅を私は尊敬しています」

 佐々木さんは、2007年から、ブログに加え、地元のコミュニティーFMラジオのパーソナリティーを務めている。

 放送では車いす生活の苦労話や、夫やホームヘルパー、友人らと楽しく過ごす日常を語る。先日のラジオでは、夫婦で横浜までミュージックライブに出掛けた思い出を語った。

 一昨年からはYouTubeチャンネルを立ち上げ、発信を始めた。
 後日、視聴者から“健常者と障がい者の恋愛について考えました。「一緒にいたい」「好き」だという気持ちに境界線はないと感じました”などといった、多くのコメントが寄せられた。

日常をブログにつづる佐々木さん。AI(人工知能)が搭載されたスマートデバイスも駆使して発信を続ける
日常をブログにつづる佐々木さん。AI(人工知能)が搭載されたスマートデバイスも駆使して発信を続ける

 佐々木さんの病気は、現在も少しずつ進行している。

 「いずれ口も、手先も衰えて、発信ができなくなる日が必ず来ると思っています。だけど、肉体が衰えても“私らしさ”は衰えない! 今は、1分、1秒たりとも無駄にしたくない。そう思って生きています」

 健常者と障がい者。助ける人と助けられる人。そんな区別にとらわれる必要などない。人と人は誰しも励まし合う存在。それが分かれば、不平等はなくなっていくのではないか――。
   

札幌市内の大通公園を散策する佐々木さん夫妻
札幌市内の大通公園を散策する佐々木さん夫妻

 
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●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ぜひ、ご感想をお寄せください→ sdgs@seikyo-np.jp

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