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〈社会・文化〉 「核のごみ」をめぐる課題 高野聡 2026年4月14日

  • 歪んだ原発政策の処分場探し
  • 第三者機関による公論形成こそ
  • 誤った認識の広がりにも懸念
政府が南鳥島の調査申し入れ

 今年の3月3日、経済産業省は「核のごみ」の処分場建設をめぐり、文献調査を南鳥島で実施するために東京都小笠原村に申し入れを行った。4月13日には渋谷正昭村長が文献調査の実施について「国が判断すべきだ」と事実上容認する考えを表明したが、村内には異なる意見もさまざまにあるようだ。
 今後事態がどう推移していくにせよ、この問題にどう向き合うべきなのか、私たちはその本質を捉える必要がある。
 まず核のごみとは何かを確認したい。
 原発の運転により使用済み核燃料が発生するが、政府はこれを再処理し、プルトニウムなどを燃料として再利用する方針だ。その過程で発生する高レベル放射性廃液をガラスと混ぜ、ステンレス製の容器に入れ、ガラス固化体を製造する。これが高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみだ。
 ガラス固化体は現在2530本あり、現存するすべての使用済み核燃料を再処理すれば約2万7000本が生じる。なお1993年に工事が開始された青森県六ケ所村の再処理工場はいまだに完成していない。
 この核のごみを地下300メートル以深に埋める「地層処分」が、2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」で規定されている。地層処分はガラス固化体を金属製の容器で覆い、さらに粘土質の緩衝材で包む人工バリアーと、安定した地下の岩盤で放射性物質を閉じ込める天然バリアーの二重構造からなる。これにより、自然のウラン鉱山と同じ放射線レベルになるまで10万年以上、ガラス固化体を人間の生活圏から隔離する。ガラス固化体4万本程度を処分できる容量を持つ最終処分場を国内に1カ所建設する予定だ。

上空から見た日本最東端の島・南鳥島(2012年11月撮影)
上空から見た日本最東端の島・南鳥島(2012年11月撮影)
地層処分には安全性の問題が

 最終処分場を建設する前には3段階の調査が必要である。第1段階の調査が「文献調査」であり、地下環境に関する文献を収集・評価する。文献調査は市町村からの応募、あるいは国の申し入れを市町村が受諾することにより始まる。20年11月には北海道寿都町と神恵内村で、24年6月には佐賀県玄海町で文献調査が開始され、現在までに三つの地域で調査が進行している。文献調査実施地域には2年で20億円の交付金が付与される。
 これに対し、23年10月、地学研究者ら300人余りが、現在の科学的知見では安全な地層処分を行うことは不可能だという声明を発表している。大地震の発生地域を予測することの困難さ、人工バリアーの機能維持の不確定さなどがその理由だ。日本での地層処分の安全性をめぐっては、専門家の間で合意は取れていないという厳然たる事実が存在する。
 確かに一部の専門家の間では、以前から南鳥島が地層処分の最も有力な候補地と考えられていた。
 南鳥島は、四つのプレートがぶつかり合う日本列島の中で、プレート境界から十分離れた太平洋プレートの上に存在し、地震や火山による影響を受けにくい地域と推測されるからだ。それでも、地層処分を安全に実施するには、他にも留意すべき点はいくつもある。
 今回は地下の岩盤の問題のみ指摘したい。地下の処分施設は6~10平方キロを要し、坑道の総延長は約200キロにも上る。南鳥島は海底火山の上にサンゴ礁が堆積してできており、地下1000メートルくらいまでの岩盤は、多孔性で遮水性が低い石灰岩と推測されている。海水を含んだ大量の地下水の流入が起これば、掘削作業の安全性や長大な坑道の健全性を確保することは困難だ。
 この問題を克服し、太平洋プレートの上に存在する地質学的安全性を生かすなら、地層処分ではなく、数キロ~10キロの地下に埋設するディープ・ボアホール(超深度掘削坑処分)も選択肢になりうる。実際にそれくらいの深さになれば、石灰岩よりも硬くて安定している玄武岩の中に処分できる。
 しかし、現在の法律で規定されているのは地層処分だけだ。またディープ・ボアホールは研究開発段階の技術のため、実現可能性は保証されていない。

東京都小笠原村の父島で開かれた最終処分場選定に関する住民説明会(3月14日、原子力発電環境整備機構提供)
東京都小笠原村の父島で開かれた最終処分場選定に関する住民説明会(3月14日、原子力発電環境整備機構提供)
拙速な決定は地域の分断に

 今回、国はそれらについては説明せず、突然、文献調査実施の申し入れを行った。なぜ南鳥島1カ所に限って申し入れが行われたのか、その明確な基準は示されていない。住民の合意形成を蔑ろにしたまま拙速な調査決定の決断を迫れば、寿都町のように賛否をめぐる地域の分断が起こりかねない。遠く離れた国有地に処分すればいいという認識が社会に広まる可能性もある。
 最終処分政策に関して、自治体の手挙げ方式がいいのか、国が責任を持って進める方がいいのかという表層的な問い立てがされることが多い。しかし、問題の本質はそこではない。現在の法律では、原発を継続的に利用するための環境整備として最終処分を位置付けている。したがって社会的議論を主導するのも経済産業省だ。
 再処理政策の継続、地層処分の安全性、交付金の付与の再検討を含めた根本的な議論をするには、原発の利害関係がない第三者機関が公論形成を担う必要がある。そのための法律の改正が行われない限り、原発推進のための歪んだ最終処分場探しが継続し、地域に分断の火種が撒かれ続けることになるだろう。
 (原子力資料情報室研究員)

 たかの・さとし 1979年、静岡県生まれ。韓国の慶北大学大学院で行政学の修士号を取得。2022年2月から原子力資料情報室のスタッフとして活動。経済産業省の審議会である特定放射性廃棄物小委員会の委員も務める。

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