社会に出て、さまざまな価値観に触れ、任されることも増えていく20代。懸命に過ごしているからこそ、「勇気を出して発言したのに反応が薄かった」「質問したら、面倒くさそうに返された」――そんな出来事が心に引っかかり、人間関係の摩擦に心がチクっと痛むことが多いかもしれません。周囲の反応や相手の態度に振り回されず、心軽やかに過ごすためのヒントを臨床心理士の中島美鈴さんに聞きました。
社会に出て、さまざまな価値観に触れ、任されることも増えていく20代。懸命に過ごしているからこそ、「勇気を出して発言したのに反応が薄かった」「質問したら、面倒くさそうに返された」――そんな出来事が心に引っかかり、人間関係の摩擦に心がチクっと痛むことが多いかもしれません。周囲の反応や相手の態度に振り回されず、心軽やかに過ごすためのヒントを臨床心理士の中島美鈴さんに聞きました。
傷つきやすさの違い
傷つきやすさの違い
頑張っても報われなかったり、誰かの心ない一言に傷ついたり、生きていると、「今日は、もうやってられない!」と思うことってありますよね。けれど、仕事に追われていると、誰かに相談したり、吐き出したりする余裕がなく、そのままやり過ごしてしまうことも多いのではないでしょうか。心のSOSを無視し続けていると、人と関わることが怖くなる、無気力になるといったことがあります。「自分は大丈夫」と見過ごさず、心に刺さったトゲは早めに抜きたいものです。
人は何かを経験する時、出来事そのものの影響も受けますが、それ以上に「どう捉えるか」によって、感じ方は大きく左右されます。例えば、上司からミスを指摘された時。同じように指摘を受けても、「ここを直せばいいのか」と前向きに捉える人もいれば、「こんなこともできないなんて、期待外れだと思われたかもしれない」と不安になる人もいます。これは、その人の「捉え方(認知)」の違いによるものです。
捉え方は、その後の行動にも影響します。すぐにミスを修正して再提出する人もいれば、「他にもミスがあるかもしれない」と一人で抱え込んでしまい、「忙しい上司に声をかけるのは申し訳ない」と動けなくなる人もいます。同じ出来事でも、どのように捉えるかによって、その後の気持ちと行動は変わってきます。
頑張っても報われなかったり、誰かの心ない一言に傷ついたり、生きていると、「今日は、もうやってられない!」と思うことってありますよね。けれど、仕事に追われていると、誰かに相談したり、吐き出したりする余裕がなく、そのままやり過ごしてしまうことも多いのではないでしょうか。心のSOSを無視し続けていると、人と関わることが怖くなる、無気力になるといったことがあります。「自分は大丈夫」と見過ごさず、心に刺さったトゲは早めに抜きたいものです。
人は何かを経験する時、出来事そのものの影響も受けますが、それ以上に「どう捉えるか」によって、感じ方は大きく左右されます。例えば、上司からミスを指摘された時。同じように指摘を受けても、「ここを直せばいいのか」と前向きに捉える人もいれば、「こんなこともできないなんて、期待外れだと思われたかもしれない」と不安になる人もいます。これは、その人の「捉え方(認知)」の違いによるものです。
捉え方は、その後の行動にも影響します。すぐにミスを修正して再提出する人もいれば、「他にもミスがあるかもしれない」と一人で抱え込んでしまい、「忙しい上司に声をかけるのは申し訳ない」と動けなくなる人もいます。同じ出来事でも、どのように捉えるかによって、その後の気持ちと行動は変わってきます。
当たり前を揺さぶる
当たり前を揺さぶる
人は誰でも、捉え方の癖を持っています。その癖に気付くことで「少し調整しよう」と考えられるようになり、行動の幅も広がっていきます。
例えば、自分は完璧にやろうとする傾向があると気付けば、「まずは7割程度でも十分」と考えて取り組めるようになります。つらいことがあった時に深刻に受け止めやすいと分かれば、「こういう時は、外に出て気分転換をしよう」と、行動を選べるようになります。
捉え方の癖に気付くには、自分の中にある思いを“外に出す”ことが大切です。頭の中だけで考えていると、一つの捉え方にとらわれてしまったり、答えのない問いをぐるぐる考え続けてしまったりします。でも、誰かに話す、書き出すなどをすることで、自分の考えを少し離れたところから見られるようになります。
会話や文章に限らず、スポーツをする、絵を描くなど、自分なりのやり方で構いません。自分の思いを外に出すことで、「自分はこんなふうに感じていたんだ」と気付き、気持ちが少し軽くなります。「相手にも事情があったのかも」と別の見方ができるようになることもあります。
誰かに相談したいと思った時は、自分にとっての当たり前(捉え方)を揺さぶってくれる人がおすすめです。私自身、体調不良で自宅のごみ出しができなかったことをアメリカ人の先生にこぼしたことがあります。すると、先生は「ごみは出せなくても大丈夫。出せなくても死なない」とあっさり言いました。当時の私は「体調が悪くても、ごみ捨ては自分ですべき」「出せなかったら終わりだ」ぐらいに思い詰め、完全に視野が狭くなっていました。少し極端な例ではありますが、悩んだ時は視野を広げてくれる人の言葉に触れることも助けになります。
人は誰でも、捉え方の癖を持っています。その癖に気付くことで「少し調整しよう」と考えられるようになり、行動の幅も広がっていきます。
例えば、自分は完璧にやろうとする傾向があると気付けば、「まずは7割程度でも十分」と考えて取り組めるようになります。つらいことがあった時に深刻に受け止めやすいと分かれば、「こういう時は、外に出て気分転換をしよう」と、行動を選べるようになります。
捉え方の癖に気付くには、自分の中にある思いを“外に出す”ことが大切です。頭の中だけで考えていると、一つの捉え方にとらわれてしまったり、答えのない問いをぐるぐる考え続けてしまったりします。でも、誰かに話す、書き出すなどをすることで、自分の考えを少し離れたところから見られるようになります。
会話や文章に限らず、スポーツをする、絵を描くなど、自分なりのやり方で構いません。自分の思いを外に出すことで、「自分はこんなふうに感じていたんだ」と気付き、気持ちが少し軽くなります。「相手にも事情があったのかも」と別の見方ができるようになることもあります。
誰かに相談したいと思った時は、自分にとっての当たり前(捉え方)を揺さぶってくれる人がおすすめです。私自身、体調不良で自宅のごみ出しができなかったことをアメリカ人の先生にこぼしたことがあります。すると、先生は「ごみは出せなくても大丈夫。出せなくても死なない」とあっさり言いました。当時の私は「体調が悪くても、ごみ捨ては自分ですべき」「出せなかったら終わりだ」ぐらいに思い詰め、完全に視野が狭くなっていました。少し極端な例ではありますが、悩んだ時は視野を広げてくれる人の言葉に触れることも助けになります。
一つじゃないと知る
一つじゃないと知る
20代は、アイデンティティー(自分らしさ)を築いている真っただ中です。仕事にもまだ自信が持てず、立場も不安定で、一つ一つの評価が重く感じられることもあります。ささいな指摘でも、自分そのものを否定されたように感じ、足元がぐらつくような感覚になることもあるでしょう。だからこそ、20代に「どんな出来事も捉え方は一つじゃない」と知り、捉え方と行動の幅を広げていくことにとても大きな意味があります。
“いつもとちょっと違う”捉え方と行動を少しずつ重ねながら、自分なりに心のバランスを整えていってもらえたらと思います。
20代は、アイデンティティー(自分らしさ)を築いている真っただ中です。仕事にもまだ自信が持てず、立場も不安定で、一つ一つの評価が重く感じられることもあります。ささいな指摘でも、自分そのものを否定されたように感じ、足元がぐらつくような感覚になることもあるでしょう。だからこそ、20代に「どんな出来事も捉え方は一つじゃない」と知り、捉え方と行動の幅を広げていくことにとても大きな意味があります。
“いつもとちょっと違う”捉え方と行動を少しずつ重ねながら、自分なりに心のバランスを整えていってもらえたらと思います。
こんな時、どうする?
こんな時、どうする?
Q.同僚が、私の仕事ぶりについて「細かすぎてやりづらい」と陰で話していた。直接、言ってくれればいいのに……。(20代女性)
Q.同僚が、私の仕事ぶりについて「細かすぎてやりづらい」と陰で話していた。直接、言ってくれればいいのに……。(20代女性)
A.全員から好かれる人はいない。
「悪口は言われるもの」という前提を持つ。
A.全員から好かれる人はいない。
「悪口は言われるもの」という前提を持つ。
「悪口を言われないことを目指す」より、「悪口を言われても、自分の価値は変わらない」と考えるのが現実的な対処法です。
そもそも、その同僚はいつも正しい判断ができる人でしょうか。あなたの全てを理解しているのでしょうか。「細かい」「やりにくい」というのは、あくまでその人の視点にすぎません。それでも気分が晴れない時は、「悪口の一つも言われないほど、私は完璧なんかーい!」と豪快に自分にツッコミを入れてみてください。
「悪口を言われないことを目指す」より、「悪口を言われても、自分の価値は変わらない」と考えるのが現実的な対処法です。
そもそも、その同僚はいつも正しい判断ができる人でしょうか。あなたの全てを理解しているのでしょうか。「細かい」「やりにくい」というのは、あくまでその人の視点にすぎません。それでも気分が晴れない時は、「悪口の一つも言われないほど、私は完璧なんかーい!」と豪快に自分にツッコミを入れてみてください。
Q.「育休を取りたい」と上司に伝えたところ、「この時期(繁忙期)に取るのか」と嫌みっぽく言われた。(20代男性)
Q.「育休を取りたい」と上司に伝えたところ、「この時期(繁忙期)に取るのか」と嫌みっぽく言われた。(20代男性)
A.上司にも自然な感情があり、あなたにも当然の希望がある。
A.上司にも自然な感情があり、あなたにも当然の希望がある。
上司にとっては忙しい時期に人手が減ることで負担が増えるという現実もあり、一時的にネガティブな感情を抱くのは自然なことです。
同じように、「育休を取りたい」というあなたの気持ちも、夫として父親として抱く自然な感情です。それぞれの感情を大切にしつつ、「上司が困るのも事実。でも、自分が育休を取らないと家庭に影響が出る。だから、上司の感情とは切り分けて、取得しよう」と考えてみてください。
育休に限らず、普段から嫌みを言いがちな上司であれば、「想定通りだぜ」と軽やかに流すぐらいがちょうどいいですね。
上司にとっては忙しい時期に人手が減ることで負担が増えるという現実もあり、一時的にネガティブな感情を抱くのは自然なことです。
同じように、「育休を取りたい」というあなたの気持ちも、夫として父親として抱く自然な感情です。それぞれの感情を大切にしつつ、「上司が困るのも事実。でも、自分が育休を取らないと家庭に影響が出る。だから、上司の感情とは切り分けて、取得しよう」と考えてみてください。
育休に限らず、普段から嫌みを言いがちな上司であれば、「想定通りだぜ」と軽やかに流すぐらいがちょうどいいですね。
なかしま・みすず 臨床心理士、公認心理師、博士(心理学)。中島心理相談所所長。九州大学大学院人間環境学府の学術協力研究員、独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部非常勤研究員を務める。テレビなど各種メディアでも活躍中。『会社でいちいち傷つかない』(日経BP)など著書多数。
なかしま・みすず 臨床心理士、公認心理師、博士(心理学)。中島心理相談所所長。九州大学大学院人間環境学府の学術協力研究員、独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部非常勤研究員を務める。テレビなど各種メディアでも活躍中。『会社でいちいち傷つかない』(日経BP)など著書多数。
【中島さんの写真】本人提供
【イラスト】PIXTA
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【イラスト】PIXTA