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〈名字の言〉 2026年3月22日

 伝統芸能である「能」の世界は深い。ある能楽師が若い頃、鼓の革を買った際に、こう言われたという。「この革はいまは鳴りません。でも、毎日打ち続けて五十年経てば鳴り始め、一度鳴れば、六百年は使えます」(安田登著『あわいの力』ミシマ社)。効率や速度を追う現代の風潮からすると、途方もない時間軸である▼室町時代から続く能。それを根底で支えてきたのは、目先の成果に惑わされず、半世紀先を見据えて技を磨き、道具を丹念に育てる「不断の精進」であった▼私たちが進める広宣流布の運動もまた、千年、万年を見据えた壮大な対話運動だ。日々の語らいは、はた目には地味で、時に結果が見えず、歯がゆい思いをすることもあろう。だが人の心に幸福の種をまき、地道に友情と信頼を広げる挑戦こそ、平和の礎を築く確かな営みとなる▼御書に「根ふかければ枝さかえ、源遠ければ流れ長し」(新1615・全1180)と。華やかな結果を追うより、うまずたゆまず、見えないところで根を張るように努力を続ける人生に、勝利の枝は茂り、幸福の花が咲く▼一人一人の勇気の一歩が、やがて“広布の大河”となり、幾世代先の人々まで潤す。ロマンと誇りを胸に、誠実に対話を広げたい。(訫)

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