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地域に根差す地道な対話は必ず世界を変える力となる 〈識者が語る 未来を開く池田思想〉 2026年5月1日

  • アルゼンチン 池田大作国際平和研究センター ルイス・アルベルト・ネグレティ学術所長(国立ビジャマリア大学総長)に聞く

 アルゼンチンに「池田大作国際平和研究センター」が誕生したのは、2012年のことです。池田先生の名を冠した同センターが目指すもの、先生の思想と行動を研究する意義などについて、本年3月に来日したルイス・アルベルト・ネグレティ学術所長(国立ビジャマリア大学総長)にインタビューしました。(聞き手=加藤幸一、小野顕一)

アルゼンチンの国立ビジャマリア大学から池田先生への名誉教授称号授与式(2014年2月、ブエノスアイレス市内で)
アルゼンチンの国立ビジャマリア大学から池田先生への名誉教授称号授与式(2014年2月、ブエノスアイレス市内で)

 ――池田大作国際平和研究センターは、国立ブエノスアイレス大学や国立コルドバ大学で総長を歴任したフランシスコ・デリッチ博士の「池田博士の平和の精神を後世に永遠に残したい」との思いから2012年に創設されました。はじめに、同センターの活動やネグレティ学術所長が関わるようになった経緯について教えてください。
  
 池田先生は平和構築のために、世界各地で文化・思想・宗教の違いを超えた人間主義の対話を展開されました。
 そして、全ての人の内に眠る無限の可能性を呼び覚まし、一人一人の人生に光をともすための教育にも尽力されました。

 池田大作国際平和研究センターは、そうした先生の偉大な業績と理念を研究し、人間主義の思想の普及と、価値創造の教育の推進を使命とする研究機関で、世界平和に貢献する人材の育成を目指しています。
 これまで「平和のための対話」をテーマとした連続セミナーや、広島・長崎被爆80年シンポジウムなどを行ってきました。

 私が先生のことを深く知るようになったのは、13年に私が勤める国立ビジャマリア大学で、先生に名誉教授称号を授与する審査を行った時のことです。当時、人文学部長だった私も審査に加わったことがきっかけとなり、アルゼンチンSGI(創価学会インタナショナル)の方々との交流が増えました。私はSGIメンバーではありませんが、皆さんとの触れ合いの中で、先生の人間主義の心を教えてもらっています。

 実は、私が総長を務めるビジャマリア大学は人間主義の理念を掲げており、看護師、医師、会計士などになるための知識を教えるだけでなく、人々のために尽くすという人格形成も使命としています。
 この理念がセンターの目指すものとも共鳴するからこそ、18年に学術所長のお話を頂いたのだと思います。

 また、デリッチ博士がコルドバ大学の総長を務めていた1990年代、私はその大学の学生でした。“心から尊敬する博士が創設したセンターならば”と喜んでお受けすることにしたのです。

■民主主義の英雄

 ――デリッチ博士は池田先生とも友情を結んでいます。センターの一員になるに当たり、博士からかけられた言葉などはあったのでしょうか。
  
 残念ながら、私が学術所長に就任したのは、博士が亡くなった数年後のことで、直接のやりとりはありませんでした。しかし、博士はアルゼンチン社会ではとても有名で、博士がどんな社会を目指し、なぜ博士が池田先生に注目していたのかは分かっているつもりです。

 博士は軍事政権と戦い、アルゼンチンに民主主義の基盤をつくった英雄の一人です。
 ちょうど50年前(76年)の3月、軍事クーデターが起きました。わが国の人々にとって、暗く悲しい歴史の一幕です。軍事政権によって、反政府活動とは無関係の人々も捕らわれ、大人だけでなく多くの子どもも行方不明になりました。民主主義を勝ち取るために戦った博士も、迫害を受けました。

 83年に民政移管が行われた後、博士はブエノスアイレス大学やコルドバ大学で総長を歴任しました。前者は約30万人、後者は約15万人の学生数を持つ、アルゼンチンを代表する最高学府です。

 博士は大学運営に携わりながら、もう二度と争いが起こらない社会を築くために、若い世代の育成に力を注がれたのです。それはそのまま、池田先生の思いでもあったと感じます。

■地球の反対側に
アルゼンチンの国立コルドバ大学の名誉博士号が、デリッチ総長(当時)から池田先生に授与された(1993年2月、ブエノスアイレス市郊外で)。90年3月には、国立ブエノスアイレス大学から先生に名誉博士号が贈られている。デリッチ氏は両大学で民政移管後の大学再建担当総長として尽力した
アルゼンチンの国立コルドバ大学の名誉博士号が、デリッチ総長(当時)から池田先生に授与された(1993年2月、ブエノスアイレス市郊外で)。90年3月には、国立ブエノスアイレス大学から先生に名誉博士号が贈られている。デリッチ氏は両大学で民政移管後の大学再建担当総長として尽力した

 ――93年にブエノスアイレス市郊外でコルドバ大学から池田先生への名誉博士号授与式が行われました。当時総長だったデリッチ博士は、滞在中だったイタリアからわざわざ駆けつけて来られました。
  
 まさに、その事実こそ、デリッチ博士が池田先生を信頼していた証しでしょう。
 デリッチ博士と同じく、アルゼンチンで軍事政権と戦った一人に、ノーベル平和賞受賞者のペレス=エスキベル博士がいます。先生はペレス=エスキベル博士とも友好を結ばれ、対談集『希望の力』(邦題『人権の世紀へのメッセージ』)も発刊されていますね。

 その対談集を、私も丹念に読みました。先生がなぜ地球の反対側にいる人とまで友情を結ぼうとされたのか。対談集から、その理由の一端が分かりました。
 先生の戦争に対する思いや、対話で平和を築こうとする信念などを知れたことは、私にとって大きな財産です。

池田先生とペレス=エスキベル博士との対談集の各国語版
池田先生とペレス=エスキベル博士との対談集の各国語版

 ――対談集でペレス=エスキベル博士は「一人一人の心の変革」の重要性を語られています。池田先生は、ビジャマリア大学の名誉教授称号授与式の謝辞(代読)でも、この博士の言葉を紹介し、「人間革命の心のスクラムを」と呼びかけました。
  
 私は常々、池田先生の言葉から多くのことを学んでいます。先生の小説『新・人間革命』を愛読しており、ビジャマリア大学の卒業式などの行事でも、度々引用しています。

 昨年は大学創立30周年で、「人々の人生を変え、社会を変革しよう」とのスローガンを掲げ、記念イベントを行いました。私はこのスローガンは、先生の「人間革命」の思想に共通するものがあると感じ、紹介したところ、来場者から非常に大きな反響が寄せられました。

 人間革命の哲学は、見栄えの良さや社会的成功など、人間の外面を重視する社会的潮流に対するカウンターカルチャー(既成の価値観に対抗する文化)であり、パラダイム(思考の枠組み)を転換する考え方となるからこそ、皆さんの関心を集めたのだと考えています。

 特に今は、社会との関わりの中で自分を磨こうとすることを軽視する傾向があります。アルゼンチンの若者を対象にした調査では“ボランティアなどの社会活動よりも、自分のために時間を使いたい”と考える人が増えていることが分かりました。

 その原因として考えられるのは、SNSの影響です。もちろん、SNSは、気軽に人とつながることができ、自分の成長に寄与する情報もあふれているのでしょうが、それは現実社会での人との関わりから得られる情報に比べれば、わずかなものです。

 その中には、煩わしいこともあるでしょうが、私は、人間は人間同士の中で磨かれていくものであり、心の豊かさなどの内面は、現実での付き合いを重ねる中で育まれていくものだと思います。

 人間革命の思想は、そうした人間と人間の交流の大切さを教えつつも、自身の内面を磨き、心を変革していく中で、社会をも変えていけるような力が生まれることを教えています。

 私が学会の皆さんと接する中で魅力に感じるのは、学会には、この人間革命の思想を現実的に展開し、対話を広げて社会をより良くしていこうとする行動があり、池田先生という模範となる人がいるということです。

 この人間革命の道こそ真に価値ある生き方であり、これからを生きる青年たちに求められていくものだと思っています。

■若者の話を聞く

 ――次代を担う青年を育てるために、学術所長が心がけていることは何でしょうか。
  
 若者と対話する場では、こちらが丁寧に話を聞く姿勢を大切にしています。“上から目線”で何かを教えるのではなく、逆にこちらが学ばせてもらうのです。

 大学の総長として、日頃から多くの学生に話を聞くと、皆、さまざまな問題に直面していることが分かります。

 その上で、池田先生が「皆さんの生命には、無限の力が備わっています」と言われるように、若者の力を開花させるためには、まず“あなたは力ある存在なのだ”との思いを伝えることが大切であると感じます。私は学生にそういった話をし、「必ず悩みにも打ち勝つことができる。最後には大勝利したといえる学生生活を送っていこう」と激励しています。

 また、中には“社会貢献をしたい”と活動する学生も少なからずいます。そうした人には、アリストテレスが説いた「実践知」――状況を適切に判断し、行動することの大切さを伝えています。“何のため”という目的観が大切ということであり、自分が取った行動が社会にどう影響するかをじっくり考えて進むということです。

 この目的観ということに関連して、近年、アルゼンチンでは「共感力」という言葉が流行しています。ただ実際は、自分が興味や関心を持つ分野に限った話で、高齢者や恵まれない子どもたちといった社会的弱者の苦しみに共感しようとしているわけではありません。

 単に言葉だけの共感ではなく、池田先生が「他人の不幸のうえに自分の幸福を築くことはしない」と言われている通り、どこまでも他者のことを思いやることができる心を、青年たちの中に育んでいきたいと思っています。

■創価教育の価値

 ――学術所長は、池田先生が青年たちを育むために創立した創価大学を3月18日に、同月21日には関西創価学園を訪問されました。どのようなことを感じましたか。
  
 短時間ではありましたが、創価の学びやで過ごす学生、生徒たちと交流する中で、一人一人から、負けない心、前向きに努力する心、平和に貢献しようという強い思いを感じました。うまくは言えませんが、これぞ創価教育が行われている現場だという思いがしました。

 平和は当たり前のものではなく、自分たちの手で築くものです。その点において、自らの力で平和や正義といった善の価値を創造していくことを教える創価教育は重要です。

 私は、これからの未来を考えた時、創価教育の役割は、ますます大きくなると考えています。このつながりを今後も大切にしながら、創価教育の価値を私たちのセンターから発信していければと考えています。
  
 ――最後に、日本や世界の学会員に対して、メッセージをお願いします。
  
 残念ながら今、各地で紛争が絶えませんが、歯止めをかけるためにも、“暴力を肯定してはいけない”という思想を広げ、時間をかけてでも対話による紛争解決を進めることが大切だと感じます。

 その意味で、学会の皆さんの尽力は非常に重要です。と言うのも、皆さんが地域に根差し、地道に広げているものこそ、生命尊厳の思想であり、対話の文化だからです。

 隣近所の方や会社の同僚、大学の友達など、どんなにささやかに思える対話でも、それが社会に浸透していけば、必ず世界を変える力となる。どうかそう信じて、先生の精神の継承者として、誇りを持って進んでいただきたいと思います。

 私自身、先生の名を冠したセンターの一人として、さまざまな人との交流を通して対話の重要性を発信し、先生の思想をアルゼンチン、そしてラテンアメリカに広く伝え、世界の平和と人類の幸福のために努力していく決意です。

 〈プロフィル〉
 Luis Alberto Negretti 1972年、アルゼンチン生まれ。池田大作国際平和研究センター学術所長。国立コルドバ大学を卒業後、アルゼンチン教皇立カトリック大学法学博士課程修了。専門は憲法学と民法で、弁護士資格も取得。国立ビジャマリア大学で長年にわたり教職と大学運営に携わり、2015年から総長。

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