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がんサバイバーのチアダンスチーム!? 乳がんを克服し、がん患者への運動支援に生きる 〈スタートライン〉 2026年4月26日

  • 一般社団法人 キャンサーフィットネス
  • 代表理事 広瀬 眞奈美さん

 がんに罹患したら、どうやって体力をつけるのか、術後のリハビリや体のケアはどうすればいいのか――。そんな悩みに運動(フィットネス)を通して支援を続けているのが「キャンサーフィットネス」を立ち上げた広瀬眞奈美さんです。がんと闘いながら道を切り開いた、パワーの源に迫ります。

リハビリできる所がない

 広瀬さんが乳がんと告知されたのは、45歳の時。乳がん検診を受けたのは、その3年前で、乳房に気になる点があったが、医師から「がんになる可能性はないね」と言われ、安心していた。

 「当時、息子は中学1年、母は認知症で、私はライフワークの『笑顔づくり』の仕事が軌道に乗り、これからという時。自分が笑えないのに、笑顔の仕事をする資格があるのかな。私、死ぬのかな……と、不安でした。夫は、5年後の生存率は50%と説明を受けていたそうです」

 そんな時、親友に言われたのが「だからこそ、やるのよ」という言葉だった。

 「『自分が苦しんでる今こそ、本当の笑顔のセラピーができるんじゃないの?』って。それで、だんだん“そうだ!”と前向きに。手術まで2カ月あったので体力万全で受けようと、皇居の周りを走り始めたんです。手術前は、前向きな明るい患者でした(笑)」

 だが、予想と現実は違った。リンパにも転移していた。術後の体を見ると、やはり気持ちは沈む。退院後は孤独感に襲われた。

 「息子は私ががんになったことで『将来、医師になる』と言ってくれて。家族には心配かけたくない。でも腕は上がりにくいし、しびれや痛みもある。この症状は人によって差があり、治らない人もいると聞くと落ち込みました。脇も切ったからリンパ浮腫(がん手術や放射線治療後の後遺症として知られる)の不安もある。体の不調で元の生活ができないことは、告知よりもショックでした。

 何とかしたいのに、当時、スポーツジムからがん患者は断られたんです。“どうして退院後も病院でリハビリしてくれないんだろう?”って。後々調べたら診療報酬の問題とか、いろいろあると分かりました。どこに行っても、リカバリーする方法が見つからなかったんです」

楽しむことが何より大事

 思うように動かない体を、どうにかしたい。気持ちを切り替えた。

 「私は性格的に、納得して成果が出ないと嫌で(笑)。自分で身体機能の勉強をすることにしました。なぜ動かなくなったのか、どうしたら動くようになるのか。どうすれば体力がつくのか。抗がん剤治療が始まった頃から、運動の専門学校に通いました」

 心の奥にある、リンパ浮腫への恐怖。そのケアは保険診療では受けられない。セラピストのサロンにも通い“いつリンパ浮腫になっても大丈夫”というところまで、アフターケアを学んだ。

 その頃、がん患者に運動療法を行うニューヨークの団体「Moving For Life」の存在を雑誌で知り、そこで学ぶことを決意する。

 まず、日本フィットネス協会認定のインストラクター資格を取り、放射線治療が落ち着くと、ニューヨークへ。研修が100時間あるため2回に分けて渡米し、認定指導資格を取得した。

渡米中の広瀬さん(前列右から2番目)
渡米中の広瀬さん(前列右から2番目)

 「本当に素晴らしいプログラムで、若い人、お年寄り、車椅子の人、鼻にチューブをつけている人、皆が笑顔で楽しそうに体を動かしているんですね。体を緩ませたり、音楽に合わせてダンスみたいに動かしたり。“運動”と感じさせないでやるんです。もちろん、きちんとした運動理論に基づいています。

 “これを、日本の全てのがん患者さんに伝えたい!”――そう心に決めました」

 帰国後、運動療法指導者である杉本亮子氏と共に、2014年に「キャンサーフィットネス」を設立。がん患者のための運動教室や講座を開催し、コロナ禍ではオンラインサロンも開講。現在は、認定がん運動指導士の養成、運動によるがん予防啓発、病院・行政・大学などとの研究協力や講演など、幅広い活動を展開している。

リアルとオンラインで学べる「動くからだ作り学講座」の様子
リアルとオンラインで学べる「動くからだ作り学講座」の様子
イチ、ニの、サン!で動く

 「元々、運動が嫌いな人もいます。ましてや病気だと、なおさらです。だから、続けられるようエンタメ系の楽しさが大事です。来てくれるだけでも、移動することで体力がつきますし『笑いながらいつの間にか運動したね』を目指しています」

 活動の中には、全員がんサバイバーのチアダンスも。さまざまな大会でゲスト出演し、プロバスケットボールBリーグの、オープニングにも登場。生きる喜びを爆発させている。

全員がんサバイバーのチアダンスチーム「Pinky☆Smile」(前列左から2番目が広瀬さん)
全員がんサバイバーのチアダンスチーム「Pinky☆Smile」(前列左から2番目が広瀬さん)

 また、オンラインサロンでは、毎朝10分ほど広瀬さんが朗読を発信。本の情報に関連し、がん患者目線からコメントをプラスする。

 最後に、今の思いを聞いた。

 「闘病中、中学1年だった息子は整形外科医になりました。いつか一緒に活動できたらうれしいですね。

 今年は毎月、いろんな分野の医師をお呼びする予定です。リンパ浮腫などの後遺症は、自分で自分の体をケアできるようになることがベスト。次は、体を楽にするための運動の本を出版したいと思います。

 運動と聞くと抵抗がある人が多いため、moveと呼ぼう、まず動こうと、このTシャツを作りました。体を動かせば、心も動きます。じっとしてたら何も始まらない。だけどおっくうな時は『3秒の勇気』がオススメです。『1、2の3!』で立つ、外に出る、散歩する、新しい趣味を始めるなど、3秒で行動開始。私も実践しています。

 多くの人は、がんになって初めて“死”を意識します。でもせっかくの人生、新しい世界に踏み込んだと思って価値観を変え、さまざまなことを楽しみ、新たな人生を歩んでほしいと思います。

 12年間いろんな方に力を貸していただきました。会員の皆さんも、最初は不安そうな顔で来られるんですけど、だんだん“同じ人!?”というくらい元気に変わっていく。その姿を見ることが、一番うれしいですね。目の前の人が苦しんでいたら、少しでも希望を送り、笑ってもらいたい。それが私の仕事です」

チアダンスの練習風景。皆で息を合わせ、楽しく体を動かす
チアダンスの練習風景。皆で息を合わせ、楽しく体を動かす

 ひろせ・まなみ 白百合女子大学を卒業後、医療法人社団矯栄会理事、クリエイトスマイル代表を務め、2008年に乳がんの告知を受ける。12年、ニューヨークの「Moving For Life」認定指導資格を取得。乳がんフィットネスの会代表を経て、14年に設立した一般社団法人キャンサーフィットネスでは「がんと運動全国キャラバン」など多岐にわたる活動を展開中。

●キャンサーフィットネスのHPはこちらから

●オンラインサロンはこちらから

●インタビューを読んだ感想は、こちらからお寄せください。

【記事】加藤瑞子
【インタビュー写真】中野香峯子 その他の写真は広瀬さん提供

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