SGIなどが主催 NPT再検討会議の関連行事から①
SGIなどが主催 NPT再検討会議の関連行事から①
2026年5月22日
- 危機の教訓を核なき世界への力に
- 危機の教訓を核なき世界への力に
SGIとCNSが主催した行事「核兵器の使用と緊張の高まりを食い止める――核戦争の危機の教訓」(1日、ニューヨークの国連本部で)
SGIとCNSが主催した行事「核兵器の使用と緊張の高まりを食い止める――核戦争の危機の教訓」(1日、ニューヨークの国連本部で)
ニューヨークの国連本部で開催中のNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議の関連行事として1日(現地時間)、SGIとミドルベリー国際大学院モントレー校のジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)が主催する「核兵器の使用と緊張の高まりを食い止める――核戦争の危機の教訓」が行われた。登壇者の発言の要旨を掲載する。
ニューヨークの国連本部で開催中のNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議の関連行事として1日(現地時間)、SGIとミドルベリー国際大学院モントレー校のジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)が主催する「核兵器の使用と緊張の高まりを食い止める――核戦争の危機の教訓」が行われた。登壇者の発言の要旨を掲載する。
◇運に任せる安全保障から脱却(オーストリア外務省 ガルホーファー大使)
◇運に任せる安全保障から脱却(オーストリア外務省 ガルホーファー大使)
キューバ危機などの歴史は、核兵器による抑止が「ほぼ失敗していた」ことを教えています。米国のマクナマラ元国防長官がキューバ危機を振り返って語ったように、私たちは“運が良かった”だけなのです。
運は戦略ではありません。にもかかわらず世界の安全保障秩序は今も運に依存しています。オスロ、ナヤリット、ウィーンで3回にわたって開かれた核兵器の人道的影響に関する国際会議は、核の問題を抽象的な戦略の領域から引き離し、本来あるべき“人間の領域”へと戻すことを目的としていました。
いかなる核爆発も、国境や世代を超えて壊滅的な結果をもたらし、国家も国際機関もそれに適切に対応することができません。また、事故や誤作動等のリスクも高まっています。こうした根拠が核兵器禁止条約の基盤になっています。そして核禁条約は、自国の生存を一握りの国の判断や運に依存させることを拒否する、圧倒的多数の国の懸念を法的な形で明確に表現したものです。
「核兵器は二度と使われてはならない」と繰り返す一方で、「使う準備がある」と脅すような偽善では、核のタブー(禁忌)は維持されません。核兵器がもたらす惨状についての核保有国と非保有国との対話、そしてヒバクシャの方々が示してきた道徳的真摯さによってのみ、タブーは維持されます。私たちは子どもや孫たちに、単なる運以上のものを残す義務があるのです。
キューバ危機などの歴史は、核兵器による抑止が「ほぼ失敗していた」ことを教えています。米国のマクナマラ元国防長官がキューバ危機を振り返って語ったように、私たちは“運が良かった”だけなのです。
運は戦略ではありません。にもかかわらず世界の安全保障秩序は今も運に依存しています。オスロ、ナヤリット、ウィーンで3回にわたって開かれた核兵器の人道的影響に関する国際会議は、核の問題を抽象的な戦略の領域から引き離し、本来あるべき“人間の領域”へと戻すことを目的としていました。
いかなる核爆発も、国境や世代を超えて壊滅的な結果をもたらし、国家も国際機関もそれに適切に対応することができません。また、事故や誤作動等のリスクも高まっています。こうした根拠が核兵器禁止条約の基盤になっています。そして核禁条約は、自国の生存を一握りの国の判断や運に依存させることを拒否する、圧倒的多数の国の懸念を法的な形で明確に表現したものです。
「核兵器は二度と使われてはならない」と繰り返す一方で、「使う準備がある」と脅すような偽善では、核のタブー(禁忌)は維持されません。核兵器がもたらす惨状についての核保有国と非保有国との対話、そしてヒバクシャの方々が示してきた道徳的真摯さによってのみ、タブーは維持されます。私たちは子どもや孫たちに、単なる運以上のものを残す義務があるのです。
◇“次の危機”に頼る言説は危険(カリフォルニア大学グローバル紛争協力研究所 ビドグッド博士)
◇“次の危機”に頼る言説は危険(カリフォルニア大学グローバル紛争協力研究所 ビドグッド博士)
核危機における意思決定とリスクの低減に関して、近年の研究の動向を踏まえた私見を述べたいと思います。
このテーマであまり議論されていないと感じるのは、危機の発生が、リスク低減に関する政策決定にどのような影響を与えるかという点です。
指導者が核戦争の瀬戸際に立たされるような出来事は、必然的に軍備管理の強化やリスク低減へ向かわせるというのが、“既定の結論”となっている風潮があります。実際、キューバ危機は常にその例として挙げられます。しかし、危機が軍備拡張を引き起こすように見える事例もあります。
私の研究では、危機は核兵器の危険性の教訓を伝える上でそれほど効果的ではない、という可能性が明らかになっています。むしろ、危機の発生は、指導者が“すでに考えていること”をより強化する傾向があるように見えます。
もし核兵器を廃絶することが核戦争を防ぐ最善の方法だと信じる人物が指導者の中にいれば、危機の発生は軍備管理の強化につながるでしょう。しかし核の増強が必要だと信じる人物ばかりの場合、危機後の結果は全く違うものになり得ます。
したがって、軍備管理を軌道に戻すために「キューバ危機のような出来事がもう一度必要だ」というよく聞かれる言説に対して、私たちは極めて懐疑的であるべきです。次の危機は、私たちを全く別の、はるかに危険な道へと容易に導く可能性があるからです。
核危機における意思決定とリスクの低減に関して、近年の研究の動向を踏まえた私見を述べたいと思います。
このテーマであまり議論されていないと感じるのは、危機の発生が、リスク低減に関する政策決定にどのような影響を与えるかという点です。
指導者が核戦争の瀬戸際に立たされるような出来事は、必然的に軍備管理の強化やリスク低減へ向かわせるというのが、“既定の結論”となっている風潮があります。実際、キューバ危機は常にその例として挙げられます。しかし、危機が軍備拡張を引き起こすように見える事例もあります。
私の研究では、危機は核兵器の危険性の教訓を伝える上でそれほど効果的ではない、という可能性が明らかになっています。むしろ、危機の発生は、指導者が“すでに考えていること”をより強化する傾向があるように見えます。
もし核兵器を廃絶することが核戦争を防ぐ最善の方法だと信じる人物が指導者の中にいれば、危機の発生は軍備管理の強化につながるでしょう。しかし核の増強が必要だと信じる人物ばかりの場合、危機後の結果は全く違うものになり得ます。
したがって、軍備管理を軌道に戻すために「キューバ危機のような出来事がもう一度必要だ」というよく聞かれる言説に対して、私たちは極めて懐疑的であるべきです。次の危機は、私たちを全く別の、はるかに危険な道へと容易に導く可能性があるからです。
◇抑止ではなく「安心」の供与へ(ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院 フリーマン博士)
◇抑止ではなく「安心」の供与へ(ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院 フリーマン博士)
現在、世界的な緊張の高まりは核兵器を保有する国の間で顕著であり、とりわけ米国と中国の関係は深刻です。また、早期警戒や標的捕捉機能への自律型システムの統合が進むにつれ、人間の判断が介入する余地がなくなるかもしれない――そんな局面に私たちは立っています。
こうした中で私が提起したいのは、「安心供与の連鎖」によるリスク低減です。
これは、ライバル間の安心が、安定には不可欠であるという発想に基づいています。抑止力が能力の示威や報復の威嚇によって侵略を防ぐものであるとするなら、「安心供与の連鎖」とは、双方が抑制の意思を示すために、低コストで一方的な措置を段階的に講じていくプロセスです。相手国がそれを認識し、応じることを繰り返すことによって徐々に信頼を築いていく考え方です。
米中関係は現在、互いに対して生じた安全保障のジレンマが国内政治とも相まって、安心感を醸成することが困難な状況になっています。たとえ漸進的であっても、両国が関係改善を図ろうとしていることを相手に示すことで、双方の不安をやわらげるような相互的な行動が生まれる可能性があります。
米中関係は核保有国の中で最も管理されていない関係の一つとなっています。関係が改善されれば、核拡散のリスクを低減し、ひいては世界の核軍縮の取り組みの再活性化にもつながる可能性があると思います。
現在、世界的な緊張の高まりは核兵器を保有する国の間で顕著であり、とりわけ米国と中国の関係は深刻です。また、早期警戒や標的捕捉機能への自律型システムの統合が進むにつれ、人間の判断が介入する余地がなくなるかもしれない――そんな局面に私たちは立っています。
こうした中で私が提起したいのは、「安心供与の連鎖」によるリスク低減です。
これは、ライバル間の安心が、安定には不可欠であるという発想に基づいています。抑止力が能力の示威や報復の威嚇によって侵略を防ぐものであるとするなら、「安心供与の連鎖」とは、双方が抑制の意思を示すために、低コストで一方的な措置を段階的に講じていくプロセスです。相手国がそれを認識し、応じることを繰り返すことによって徐々に信頼を築いていく考え方です。
米中関係は現在、互いに対して生じた安全保障のジレンマが国内政治とも相まって、安心感を醸成することが困難な状況になっています。たとえ漸進的であっても、両国が関係改善を図ろうとしていることを相手に示すことで、双方の不安をやわらげるような相互的な行動が生まれる可能性があります。
米中関係は核保有国の中で最も管理されていない関係の一つとなっています。関係が改善されれば、核拡散のリスクを低減し、ひいては世界の核軍縮の取り組みの再活性化にもつながる可能性があると思います。
◇軍縮義務の推進へ3つの提案(アメリカ・軍備管理協会 キンボール会長)
◇軍縮義務の推進へ3つの提案(アメリカ・軍備管理協会 キンボール会長)
今回の再検討会議が、核軍縮努力について定めたNPT第6条を推進する行動計画について合意に至らなかったり、あいまいな留保等にとどまったりするようであれば、長年にわたる軍縮の停滞を経て、核リスクが高まることになります。
検討すべき具体的なアイデアを三つ、提案したいと思います。
第一に、1973年の「米ソ核戦争防止協定」を思い起こすべきです。この協定は国際的な平和を危うくする可能性のある状況において、武力の威嚇、または行使を控えるよう両当事者に求めています。また、危機的状況における緊急の協議も義務づけています。NPT再検討会議は、核兵器国に対してこの原則を改めて確認し、多国間協定へと拡大すべきです。
第二に、AI(人工知能)に関して、核兵器国は人間による制御の重要性を認識しています。それに加えて本会議は、AIのリスクを低減する好事例を検討すべく、全締約国に開かれた専門的な枠組みを確立することに合意すべきです。
第三に、「消極的安全保証」、すなわち核保有国が非保有国に対して核兵器を使わない、または使うと脅さないと約束することです。その実現方法の一つが非核兵器地帯です。核兵器国が議定書に署名はしても、批准は終えていない地帯があります。これを進めることで法的拘束力のある消極的安全保証が発効し、他の国々が核の脅威にさらされないことを保証することができます。
今回の再検討会議が、核軍縮努力について定めたNPT第6条を推進する行動計画について合意に至らなかったり、あいまいな留保等にとどまったりするようであれば、長年にわたる軍縮の停滞を経て、核リスクが高まることになります。
検討すべき具体的なアイデアを三つ、提案したいと思います。
第一に、1973年の「米ソ核戦争防止協定」を思い起こすべきです。この協定は国際的な平和を危うくする可能性のある状況において、武力の威嚇、または行使を控えるよう両当事者に求めています。また、危機的状況における緊急の協議も義務づけています。NPT再検討会議は、核兵器国に対してこの原則を改めて確認し、多国間協定へと拡大すべきです。
第二に、AI(人工知能)に関して、核兵器国は人間による制御の重要性を認識しています。それに加えて本会議は、AIのリスクを低減する好事例を検討すべく、全締約国に開かれた専門的な枠組みを確立することに合意すべきです。
第三に、「消極的安全保証」、すなわち核保有国が非保有国に対して核兵器を使わない、または使うと脅さないと約束することです。その実現方法の一つが非核兵器地帯です。核兵器国が議定書に署名はしても、批准は終えていない地帯があります。これを進めることで法的拘束力のある消極的安全保証が発効し、他の国々が核の脅威にさらされないことを保証することができます。
(②はこちら)
(②はこちら)