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【創価学園NAVI】東京・創価中学校 弁護士による特別授業 2024年11月29日

  • 学園出身の法律家が行う“生きた法教育”
  • 世界市民に必要な人権感覚を養う

 東西の創価学園では毎年、法曹関係や国際関係をはじめ、さまざまな分野で活躍する卒業生を招き、世界市民を志す学園生へのキャリアガイダンスや進路相談などを行っている。今回は、創価学園・創価大学卒業生の弁護士による特別授業を実施する東京・小平市の創価中学校を取材した。

創価学園・創価大学を卒業した弁護士たちによる社会の特別授業(2024年11月)
創価学園・創価大学を卒業した弁護士たちによる社会の特別授業(2024年11月)

 「袴田巌さんの再審無罪確定が報道されているね。そもそも裁判には何種類あるか、知っているかな?」
 
 今月1日に行われた、東京・創価中学校3年の社会(公民)の「特別授業」での一こま。司法について語るのは、教員ではなく、創価学園や創価大学を卒業した弁護士たちだ。この授業では、1クラスを3人の弁護士が担当し、具体的な事例をもとに、裁判の仕組みと働きを講義する。

 仕事を通して感じる喜びや葛藤などの実体験にも話が及ぶと、生徒たちは興味津々の様子だった。
 
 佐藤凜咲さん(3年)は振り返る。
 
 「弁護士って、テレビドラマみたいに一つの事件に集中して、華々しく解決するイメージがあったんです。でも実際は、何十もの案件に取り組みながら、一人一人の依頼者に寄り添って仕事をしていることを知り、驚きました。いつか裁判の傍聴にも行ってみたいです」

社会の特別授業を終え、講師を務めた弁護士たちを質問攻めにする創価中学校の3年生たち。時間が足りず、昼食を一緒に食べながら話を聞く生徒もいた(2024年11月)
社会の特別授業を終え、講師を務めた弁護士たちを質問攻めにする創価中学校の3年生たち。時間が足りず、昼食を一緒に食べながら話を聞く生徒もいた(2024年11月)

 授業後、弁護士たちを質問攻めしていた生徒の一人に話を聞いた。鈴木佳怜さん(同)は「進路を決めた理由」を尋ねた折、「高校時代、トラブルに巻き込まれた友達を助けたいと思ったことが、きっかけだった」と答えてくれたことが心に残ったという。
 
 鈴木さんは「普段聞けない弁護士の方の思いを知ることができたのが良かったです。将来、学園に戻って後輩に語れるくらいに成長しなきゃって思います」と笑顔で話していた。

いじめと向き合う

 同校では、この3年の社会の特別授業(毎年11月)だけでなく、全校生徒を対象にした「人権教室」(毎年6月)を、創価教育同窓生の弁護士の協力のもとで2年前から行っている。さらに希望する生徒は、弁護士との定期的な懇談の場を持ち、時には裁判の傍聴に連れて行ってもらうこともある。
 
 社会科の高橋正明教諭は「法律家による授業は、教科書に沿って学ぶだけでは得られない“生きた学び”があり、法律や社会を身近に感じるきっかけになっています」と話す。
 
 生徒たちから好評を博す人権教室では、現代的な話題をテーマに人権を考える。過去には「LGBTQ+」や「SNS・表現の自由」について、学びを深めた。

創価教育同窓の弁護士たちが「いじめ」をテーマに内容を練り、行った「人権教室」(2024年6月)
創価教育同窓の弁護士たちが「いじめ」をテーマに内容を練り、行った「人権教室」(2024年6月)

 本年の人権教室のテーマは、「『いじめ』について考えよう」。
 
 文部科学省によると、昨年度のいじめの認知件数は約73万件。生命や心身などに重大な被害のあった「重大事態」は1306件で、それぞれ過去最多となった。
 
 人権教室では、弁護士と教員が登壇し、パネルディスカッションの形式で進めていく。事前にアンケートを取った生徒たちの考えや、弁護士自身の体験も紹介しつつ、「いじめ」と「いじり」の違いなどについて語り合った。
 
 特に反響が大きかった内容は、「いじめの4層構造」(①被害者②加害者③観衆④傍観者)について。被害者と加害者だけの問題だと思われがちだが、はやし立てる「観衆」も、ただ見ているだけの「傍観者」も、いじめを後押しする空気づくりに関わっていると弁護士は指摘する。
 
 そして、教員に通報するなどの具体的な解決例を挙げつつ、周囲の人の行動が重要だと訴えた。最後に、いじめは人間の尊厳を傷つけ、安心や自由を奪う人権侵害だと話し、約1時間の人権教室は幕を閉じた。

人権教室はパネルディスカッション形式で進められ、生徒の代表も意見を発表した(2024年6月)
人権教室はパネルディスカッション形式で進められ、生徒の代表も意見を発表した(2024年6月)

 人権教室の終了後、学校の至る所で、生徒たちが活発に「いじめ」について語り合う様子が見られたという。
 
 海野広明さん(3年)は、地元の小学校でいじめを受けた経験を初めて友達に話した。会話の中で、その友達にもつらい過去があったことを知った。そして、つらさが分かる自分だからこそ、友達が困っている時に声をかけて助けられる存在になろうと決めた。
 
 海野さんは語る。
 
 「小学生の頃は“自分がいけないのでは?”と考え、自分の思いを誰にも話せなかったんです。人権教室を通して、どんな時もお互いの気持ちを伝え合うことが大事だと気付きました」
 
 本年の11・18「英知の日」記念行事の実行委員長を務めた海野さん。行事を迎えるまでに、生徒同士が思っていることを素直に伝え合えるよう、クラスや学年を超えた対話運動を推進した。この取り組みを通し、皆の心の絆を強めることができたと実感する。

卒業生が学園の魅力

 いじめ問題の知識を伝えるだけでなく、生徒たちが自ら考えるきっかけとなった今回の人権教室。
 
 当日を迎えるまでに、弁護士たちが十数回にわたり、オンラインや対面の打ち合わせを重ねてきた。さらに、教員たちと何度も協議を行い、3カ月かけて内容を練り上げている。
 
 中心者の一人である西野正昭弁護士は振り返る。
 
 「大切にしたことは“分かりやすさ”です。当初、模擬裁判、寸劇、講演など、さまざまな手法を考えたのですが、生徒たちの目線に立って、一緒に考えを深めていけるよう、パネルディスカッションにしました。身近な話題を通し、自分と他者の尊厳を認める人権感覚を養ってもらいたいです」
 
 多忙な弁護士業務の合間を縫って内容を考え、予定を調整するなど、準備にも相当な苦労があっただろう。なぜそこまでできるのか?――同じく中心者の大澤栄一弁護士は力を込める。
 
 「一番は、学園生のためであれば、私たち卒業生は何でもしたいという思いがあるからです。そして、学園生が志す世界市民に求められる力を、法や人権を学ぶことで磨いていってほしいと願っています」

社会の特別授業の一こま(2024年11月)
社会の特別授業の一こま(2024年11月)

 同校の藤原耕一副校長は感謝を込めて話していた。
 
 「創立者に育んでいただいた卒業生の連帯こそ、学園の魅力です。今回も創価同窓の弁護士の皆さんのおかげで、生徒が人権感覚を学ぶ、教育の仕組みができました。今後も多分野で活躍する卒業生と連携を深めながら、より一層、魅力ある教育環境をつくっていきます」
 
 創価教育の卒業生は、母校の発展に尽力する友や、後輩の道を開こうと奮闘する友など、各地で輝いている。
 
 池田先生は創価同窓の友に語りかけた。
 
 「変わらざる『母校愛』に、私は創立者として、心から敬意と感謝を表したい。真の優等生とは、『母校を愛し続ける人』である。『同窓の友を、一生涯大切にし続ける人』である」

【学校現場での法教育】 学校現場での法教育 成人年齢の引き下げに伴って、選挙権や裁判員の年齢が「18歳以上」となり、学校現場での法教育の重要性が高まっている。法務省によれば、法律家(裁判官、弁護士等)や関係機関(法務省、弁護士会等)と連携した授業を「実施した」と回答した中学校は、15・2%にとどまった(令和3年度調査)。法務省では、教員向けの教材提供や、職員の出前授業など、法教育推進のための取り組みを行っている。

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