〈ファインダー　信仰体験〉　愛すべき　牛たちよ 〈ファインダー　信仰体験〉　愛すべき　牛たちよ 2025年2月17日

　【群馬県前橋市】赤城山から吹き下りてくる「赤城おろし」が、トラクターに乗り込んだ野口旭洋さん（40）＝男子部副本部長（部長兼任）＝の五体を突き刺す。7年前、酪農家に転身した。

　【群馬県前橋市】赤（あか）城（ぎ）山（やま）から吹（ふ）き下りてくる「赤城おろし」が、トラクターに乗り込（こ）んだ野口旭（てる）洋（ひろ）さん（40）＝男子部副本部長（部長兼任）＝の五体を突（つ）き刺（さ）す。7年前、酪（らく）農（のう）家（か）に転身した。

　まるで恋人。ニッコリしながら優しくヨシヨシ。そして平常心。牛の呼吸のリズムや体温、触った時の反応……違和感はないか。野口さんは「牛は怖いっすね」。命を預かる仕事。一頭一頭への深い「愛情」と「覚悟」を背負っている。

　まるで恋人。ニッコリしながら優（やさ）しくヨシヨシ。そして平常心。牛の呼（こ）吸（きゅう）のリズムや体温、触（さわ）った時の反応……違（い）和（わ）感（かん）はないか。野口さんは「牛は怖（こわ）いっすね」。命を預かる仕事。一頭一頭への深い「愛情」と「覚（かく）悟（ご）」を背（せ）負（お）っている。

　気温マイナス3度。吐く息も凍るような午前5時から始まる。搾乳の間に牛舎の清掃、餌やり、子牛の飼育……。午後4時から2回目の搾乳。同じことの繰り返しみたいだが、「牛乳の質を変えないために、あの手この手を打つから、同じ日はないんですよ」。変わらないための努力が光る。

　気温マイナス3度。吐（は）く息も凍（こお）るような午前5時から始まる。搾（さく）乳（にゅう）の間に牛舎の清（せい）掃（そう）、餌（えさ）やり、子牛の飼育……。午後4時から2回目の搾乳。同じことの繰（く）り返（かえ）しみたいだが、「牛（ぎゅう）乳（にゅう）の質を変えないために、あの手この手を打つから、同じ日はないんですよ」。変わらないための努力が光る。

　2022年（令和4年）に「搾乳ロボット」を導入した。人手が減った分、処理代がかさんでいた、ふん尿処理の問題に着手した。浄化槽の管理会社から、ふん尿を堆肥にする菌の配合法を教わる。研究を重ね、「今では牛と菌の二刀流」。菌と木くず、ふん尿を混ぜ、発酵させる。農家が予約待ちするほど良質。

　2022年（令和4年）に「搾（さく）乳（にゅう）ロボット」を導入した。人手が減った分、処理代がかさんでいた、ふん尿（にょう）処（しょ）理（り）の問題に着手した。浄（じょう）化（か）槽（そう）の管理会社から、ふん尿を堆（たい）肥（ひ）にする菌（きん）の配合法を教わる。研究を重ね、「今では牛と菌の二刀流」。菌と木くず、ふん尿を混ぜ、発（はっ）酵（こう）させる。農家が予約待ちするほど良質。

　会社の雰囲気は明るくて、温かい。多忙であっても、野口さんは社員の話を聞き、勤務体制などを変えてきた。「前職の経験が生きている」。8年前まで繊維商社の営業職。大都市の一番店で、抜群のリーダーシップを発揮した。海外出向の話もあったが、亡き祖父の「地域に生きろ」の志を継ぐ。叔父に誘われ酪農の道へ。「素人だから、初心者の気持ちに寄り添える」。20代の社員も増えている。

　会社の雰（ふん）囲（い）気（き）は明るくて、温かい。多（た）忙（ぼう）であっても、野口さんは社員の話を聞き、勤（きん）務（む）体制などを変えてきた。「前職の経験が生きている」。8年前まで繊（せん）維（い）商社の営業職。大都市の一番店で、抜（ばつ）群（ぐん）のリーダーシップを発（はっ）揮（き）した。海外出向の話もあったが、亡（な）き祖父の「地域に生きろ」の志を継（つ）ぐ。叔（お）父（じ）に誘（さそ）われ酪（らく）農（のう）の道へ。「素人だから、初心者の気持ちに寄（よ）り添（そ）える」。20代の社員も増えている。

　海外から買い付けた牧草にトウモロコシ、国産のおから、フルーツなどを加える。嗅いで口に含めて確かめる。「人は食によって生あり、食を財とす」（新2052・全1596）を拝し、「牛も人も食べ物が大事」と。愛情込めて育てた牛の生乳の乳脂肪率は平均「4・3」（取引先の基準値は3・8）。仕入れ先も感嘆する。

　海外から買い付けた牧草にトウモロコシ、国産のおから、フルーツなどを加える。嗅（か）いで口に含（ふく）めて確かめる。「人は食によって生あり、食を財とす」（新2052・全1596）を拝（はい）し、「牛も人も食べ物が大事」と。愛情込（こ）めて育てた牛の生乳（せいにゅう）の乳脂肪（にゅうしぼう）率は平均「4・3」（取引先の基（き）準（じゅん）値（ち）は3・8）。仕入れ先も感嘆（かんたん）する。

　妻・祐美さん（40）＝女性部員＝に感謝は尽きない。「家のことは全部任せきりだから」。野口さんは一日中、牛舎にいる。池田先生が農漁光部の友に送った「地域の灯台たれ」の指針を抱き締めて。休日、妻の“1人時間”のために、子どもを連れて、スキーへ出かけた。

　妻・祐（ゆ）美（み）さん（40）＝女性部員＝に感謝は尽（つ）きない。「家のことは全部任せきりだから」。野口さんは一日中、牛舎にいる。池田先生が農漁光部の友に送った「地域の灯台たれ」の指（し）針（しん）を抱（だ）き締（し）めて。休日、妻の“1人時間”のために、子どもを連れて、スキーへ出かけた。

2022年に完成した「アラトデイリーファーム」の新牛舎。野口さんは専務取締役として奮闘している

2022年に完成した「アラトデイリーファーム」の新牛舎。野口さんは専務取締役として奮闘している

猛暑対策として新牛舎に導入したハイブリッド式強制換気システム。北海道の酪農家が視察に来る

猛暑対策として新牛舎に導入したハイブリッド式強制換気システム。北海道の酪農家が視察に来る

一つ一つの作業が真剣勝負

一つ一つの作業が真剣勝負

子牛は生後6カ月まで野口さんの牛舎で過ごす。その後、北海道へ。1回目の種付けを行い、生後20カ月ぐらいに戻ってくる

子牛は生後6カ月まで野口さんの牛舎で過ごす。その後、北海道へ。1回目の種付けを行い、生後20カ月ぐらいに戻ってくる

弟・正雄さん㊨が野口さんを支えてくれている。「兄が目をキラキラさせながら、酪農の明るい未来を語ってくれた」と、プロゴルファーから転職してくれた

弟・正雄さん㊨が野口さんを支えてくれている。「兄が目をキラキラさせながら、酪農の明るい未来を語ってくれた」と、プロゴルファーから転職してくれた

「自動搾乳ロボット」で24時間365日の搾乳が可能に。AIカメラが乳頭を探し、搾乳機を取り付け、洗浄、マッサージ、搾乳まで全自動で行う。新牛舎内の全ての牛のデータが全て集約され、牛に異常があれば、知らせてくれる

「自動搾乳ロボット」で24時間365日の搾乳が可能に。AIカメラが乳頭を探し、搾乳機を取り付け、洗浄、マッサージ、搾乳まで全自動で行う。新牛舎内の全ての牛のデータが全て集約され、牛に異常があれば、知らせてくれる

パラレルパーラーでは、一度に16頭の搾乳が可能。ミルカー（乳を搾る機器）の装着や乳頭の拭き取り、消毒などは手作業。腰をかがめずにできることで、体への負担を緩和する

パラレルパーラーでは、一度に16頭の搾乳が可能。ミルカー（乳を搾る機器）の装着や乳頭の拭き取り、消毒などは手作業。腰をかがめずにできることで、体への負担を緩和する

「両親のおかげで今があります」と野口さん（左から妻・祐美さん、野口さん、長女・美結里さん、長男・蓮斗君、父・英雄さん、次女・莉里ちゃんと母・晴美さん）

「両親のおかげで今があります」と野口さん（左から妻・祐美さん、野口さん、長女・美結里さん、長男・蓮斗君、父・英雄さん、次女・莉里ちゃんと母・晴美さん）