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〈信仰体験〉 7代目農家 キュウリで輝く 2026年4月5日

  • 変化は進化の好機なり
「私たちには生産者として高品質を維持し、信頼を守る誇りと責任があります」と寺田さん。長崎南部生産組合のキュウリ部会長も務める
「私たちには生産者として高品質を維持し、信頼を守る誇りと責任があります」と寺田さん。長崎南部生産組合のキュウリ部会長も務める

 【長崎県南島原市】陽光をたっぷりと浴びて、色艶豊かなキュウリがたわわに実る。ハウスの中は一面の緑。葉をかき分けながら、寺田健蔵さん(66)=副圏長=は収穫の喜びをかみ締める。農家の7代目。最近は時代の変化が目まぐるしく、農家としての意識改革を求められることが増えてきた。

お日さまとの勝負

 収穫はほぼ一年中。毎朝、お日さまとの真剣勝負だ。
 気温が上がれば、実が大きくなり過ぎて、味が落ちてしまう。みずみずしさをそのままに、消費者へ届ける。それが丹精込めて育てた農家の使命だという。

 「どれだけ圃場(栽培現場)に立てたかが勝負。枝葉や蔓の状態をつぶさに見て、“今、欲しているもの”を与える。これに尽きますね」

 寺田さんのハウスは、決して広くはないが、温度管理や丁寧な土壌づくりを徹底し、高品質のキュウリを安定して生産している。
 九州をはじめ、関東・関西の20カ所に組合を通じて出荷。なかでも、直売所で寺田さんのキュウリは、すぐに売り切れてしまうという。

 1日の収穫量は季節ごとに違うが、夏場ともなれば1トンを超えることも珍しくない。

みずみずしさをたたえるキュウリは、努力の証し
みずみずしさをたたえるキュウリは、努力の証し

 しかし、猛暑や水害、病虫害など農家を取り巻く環境は厳しさを増す。
 その変化への対応力が、ますます問われる時代になった。

 それでも、「挑戦に次ぐ挑戦が農業の本質」だと学びを重ねる。
 苦楽を共にしてきた妻・由美子さん(64)=女性部副本部長=と、変えてはならない農に生きる“信念”を、次世代に示そうと挑戦を重ねている。

「あーだーこーだ言いながらも、仲良くやっとります(笑)」。妻・由美子さん㊨と選果に励む
「あーだーこーだ言いながらも、仲良くやっとります(笑)」。妻・由美子さん㊨と選果に励む
「一」に徹すれば万の道へ

 農家を継ぐつもりなど毛頭なかった。海外航路の船員だった叔父に憧れ、少年時代は船乗りを夢見た。

 「おまえは跡取りだからな」という周囲の声に反発し、山口県の商船学校に進学した。

 入学後、尊敬する先輩から信心の話を聞いた。家族は創価学会に入会していたが、自身は距離を置いていた。「福運がなければ、重ねた努力も生かすことはできない」との確信あふれる言葉に心を動かされ、1975年(昭和50年)、高校1年の夏、信心を始めた。

 だが、在学中にオイルショックが海運業界を直撃。海上勤務の募集はなくなり、卒業後、やむなく家業に入った。

 当時はキュウリなど畑作に加え、酪農も行う混合農業。父に言われた。
 「答えは全て現場にある。作物から学べ」

 祖父や父から、矢継ぎ早に来るアドバイスには、“そんなの古い価値観だ”と反発した。
 寺田さんは専門書を読んだり、最新の農法を周囲の農家から学んだりしても、「頭でっかち」は通用しなかった。

 寺田さんは現場に徹し、夜は学会活動に励んだ。
 そのサイクルを続ける中で体感したことがあった。祈りが深まると、学んだ農法を自分の圃場や牛舎にあったやり方へとアレンジできた。
 真摯な姿に、父から「土作り」の工程を任されるように。

 収穫量は向上し、飼育頭数も増えていく。信心と努力が結びつく手応えをつかんだ。

商船学校時代の寺田さん(本人提供)
商船学校時代の寺田さん(本人提供)

 「一丈のほりをこえぬもの、十丈二十丈のほりをこうべきか」(新1229・全912)――「一つ」に徹すれば、万の道へと通ずる。それを肌身で感じるようになった。

 3人の子どもが生まれ、大黒柱の責任感を背負うようになると、父からは一切を任されるようになった。
 やがて、長男・大地さん(38)=圏男子部書記長=が家業に入ると、40アールの耕地でのキュウリ栽培一本に絞った。

 「土作りが肝だぞ」「温度管理で生育が決まる」。アドバイスをしながらも、大地さんが学んできた栽培方法などにも耳を傾けた。
 “陰の努力は必ず報われる”――自分が大切にしてきた池田先生の指針を、息子にも体感してもらいたかったからだ。

豊かな自然と歴史が薫る南島原で、同志と共に地域を照らす使命に生きる(左から2人目が寺田さん)
豊かな自然と歴史が薫る南島原で、同志と共に地域を照らす使命に生きる(左から2人目が寺田さん)
父は言った。「答えは全て現場にある」
作業の合間にひと休み(左から妻・由美子さん、長男・大地さん、次男・将隆さん、寺田さん)
作業の合間にひと休み(左から妻・由美子さん、長男・大地さん、次男・将隆さん、寺田さん)
新旧のいいとこ取り

 栽培面積は広がり、高品質と安定した収穫量が続いていた2023年(令和5年)の暮れ。
 寺田さんは、両手の親指から中指にしびれを感じた。国の指定難病「心アミロイドーシス」だった。医師からは、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まると告知された。

 投薬治療が始まると、不安から深夜に目が覚めることもあった。それでも弱気を振り払うように、唱題を重ねるなかで、池田先生の指導が浮かんできた。
 「たとえ、一時は負けたような姿であったとしても、最後に勝てばよい。最後に勝っていけるのが、『法華経の兵法』である」

 毎朝、緑輝くキュウリを収穫するたびに、“俺も負けちゃいられない”と農家魂で奮い立った。病と向き合いながら、さらなる探究に取り組んだ。

 発症から1年後、年間収穫量は130トンを超え、優良農家の仲間入りを果たした。
 祖父の代からの念願だった「地域に実証を示す」ことができた。

 今の喜びは、3人の子どもたちが、農業に携わっていることだ。

 長女・堤春佳さん(37)=女性部員=は熊本・阿蘇でミニトマトとそばを、一昨年からは次男・将隆さん(35)=男子部本部長=がUターン就農し、ピーマン栽培を始めた。

 自ら購入したハウスで、IOT化(数値をデータ収集した自動化・効率化)に取り組む将隆さんの姿に、寺田さんは内心、刺激を受けている。
 「『現場に立ち続けろ』と言いたいところですけど、新しい挑戦を応援したい気持ちもあります。新旧世代の“いいとこ取り”で行こうと思います(笑)」

 変化は進化の好機なり――家族の挑戦を、キュウリは優しく見守っている。

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