〈信仰体験〉 インドの宝石商 福岡に立つ
〈信仰体験〉 インドの宝石商 福岡に立つ
2026年5月12日
- 内面を磨き人生は輝いた
- 内面を磨き人生は輝いた
「宝石も人も、磨いてこそ輝きます」と語るサウラブさん。気さくで誠実な人柄が宝石店のショールームで光り、海外からの顧客も多い
「宝石も人も、磨いてこそ輝きます」と語るサウラブさん。気さくで誠実な人柄が宝石店のショールームで光り、海外からの顧客も多い
【福岡市中央区】博多湾を望むラグジュアリーホテルの一角。ガラスケースの中で、インド直輸入の宝石が輝きを放つ。その店で働く、サウラブ・カウシクさん(44)=先駆長(ブロック長)。父親の宝石商を継ぎ、2018年(平成30年)に来日した。
【福岡市中央区】博多湾を望むラグジュアリーホテルの一角。ガラスケースの中で、インド直輸入の宝石が輝きを放つ。その店で働く、サウラブ・カウシクさん(44)=先駆長(ブロック長)。父親の宝石商を継ぎ、2018年(平成30年)に来日した。
ショーケースに並ぶ色とりどりの宝石。ルビー、サファイア、エメラルドなど、インドから直接仕入れた一品が輝く
ショーケースに並ぶ色とりどりの宝石。ルビー、サファイア、エメラルドなど、インドから直接仕入れた一品が輝く
インド・デリー。ヒンズー教徒の家庭に生まれた。
父は北インドの小さな村から単身日本に渡り、宝石商として身を立てた、たたき上げの人。母は、「お父さんを敬いなさい」と繰り返した。
だが少年時代のサウラブさんは、その期待に背を向けた。学校の授業にまるで身が入らず、素行も悪かった。
「ほとんど全科目で落第点でした」と、流ちょうな日本語で当時を語る。仲間とつるんでは、街をうろついた。「あの子とは関わるな」と、うわさされるほどだった。
心には孤独感と、言いようのないむなしさがあった。日本で懸命に働く父の努力に、自分が泥を塗っている。分かっていながら、荒れた。自己嫌悪が少年の胸を締めつけていた。
インド・デリー。ヒンズー教徒の家庭に生まれた。
父は北インドの小さな村から単身日本に渡り、宝石商として身を立てた、たたき上げの人。母は、「お父さんを敬いなさい」と繰り返した。
だが少年時代のサウラブさんは、その期待に背を向けた。学校の授業にまるで身が入らず、素行も悪かった。
「ほとんど全科目で落第点でした」と、流ちょうな日本語で当時を語る。仲間とつるんでは、街をうろついた。「あの子とは関わるな」と、うわさされるほどだった。
心には孤独感と、言いようのないむなしさがあった。日本で懸命に働く父の努力に、自分が泥を塗っている。分かっていながら、荒れた。自己嫌悪が少年の胸を締めつけていた。
尊敬する父のクマール・ラジェシェさん㊨と
尊敬する父のクマール・ラジェシェさん㊨と
転機は19歳の頃だった。
母の知人の紹介で創価学会の信仰に触れた。「Nam―myoho―renge―kyo(南無妙法蓮華経)」と書かれた紙を渡されたが、奇妙な呪文にしか思えず、突き返した。
両親も信心には反対した。だが、暮らしは暗転していく。姉夫婦の不和、母の精神疾患の発症、父の経営難。現実は容赦なく押し寄せた。
そんな中、一人の青年と出会う。事故で足の親指を失ったばかりの体で、毎日のように自宅を訪ねては、一家を気遣ってくれた。
引きずるような足取り。絶やさぬ笑顔。
「その姿が、少しずつ自分の中の壁を壊していきました」
その青年は、池田先生の長編詩を教えてくれた。
「社会を離れて仏法はない/人間を忘れて信仰はない/ゆえに智慧を磨き 人格を磨き/社会に人間性の枝葉を茂らせていこう」
胸の奥にささった。“変わるなら今しかない”
勤行・唱題を習い、続けるうちに、荒れた生活は次第に収まっていく。勉学に励むようになり、名門のデリー大学に合格できた。
“まさか、落ちこぼれだった自分が”。その現実が、信心の確信へと変わった。
やると決めたらとことんやるのが、サウラブさんの元来の性格。
創価班のメンバーとして汗を流し、音楽隊にも加わった。未来部の激励や座談会の企画など、インド広布に奔走した。
転機は19歳の頃だった。
母の知人の紹介で創価学会の信仰に触れた。「Nam―myoho―renge―kyo(南無妙法蓮華経)」と書かれた紙を渡されたが、奇妙な呪文にしか思えず、突き返した。
両親も信心には反対した。だが、暮らしは暗転していく。姉夫婦の不和、母の精神疾患の発症、父の経営難。現実は容赦なく押し寄せた。
そんな中、一人の青年と出会う。事故で足の親指を失ったばかりの体で、毎日のように自宅を訪ねては、一家を気遣ってくれた。
引きずるような足取り。絶やさぬ笑顔。
「その姿が、少しずつ自分の中の壁を壊していきました」
その青年は、池田先生の長編詩を教えてくれた。
「社会を離れて仏法はない/人間を忘れて信仰はない/ゆえに智慧を磨き 人格を磨き/社会に人間性の枝葉を茂らせていこう」
胸の奥にささった。“変わるなら今しかない”
勤行・唱題を習い、続けるうちに、荒れた生活は次第に収まっていく。勉学に励むようになり、名門のデリー大学に合格できた。
“まさか、落ちこぼれだった自分が”。その現実が、信心の確信へと変わった。
やると決めたらとことんやるのが、サウラブさんの元来の性格。
創価班のメンバーとして汗を流し、音楽隊にも加わった。未来部の激励や座談会の企画など、インド広布に奔走した。
デリーにて、インド創価学会(BSG)の同志と共に(後列左から一人目がサウラブさん、本人提供)
デリーにて、インド創価学会(BSG)の同志と共に(後列左から一人目がサウラブさん、本人提供)
2004年に母のスシュマ・カウシクさん㊨を連れて、関西文化会館へ(本人提供)
2004年に母のスシュマ・カウシクさん㊨を連れて、関西文化会館へ(本人提供)
18年、海を渡り福岡へ。父は「この店を託せる自慢の息子だ」と喜んでくれた。
だが、理想と現実の隔たりは大きかった。言葉の壁、商習慣の違い、取引先との信頼関係にも苦労した。
さらに追い打ちをかけたのが、コロナ禍だった。
20年(令和2年)、客足は途絶え、蓄えは底をつく。
静まり返った店内で唱えた題目が、心をつなぎ留めた。
生き延びるために一時帰国し、宝石とは畑違いの仕事も請け負った。日本の病院へ、介護人材の調整も担った。懸命に食いつなぎ、2年がたった。
インバウンド(訪日旅行)需要が戻り、福岡で宝石商を再開することに。サウラブさんの「対話力」と「誠実さ」が力を発揮する。
18年、海を渡り福岡へ。父は「この店を託せる自慢の息子だ」と喜んでくれた。
だが、理想と現実の隔たりは大きかった。言葉の壁、商習慣の違い、取引先との信頼関係にも苦労した。
さらに追い打ちをかけたのが、コロナ禍だった。
20年(令和2年)、客足は途絶え、蓄えは底をつく。
静まり返った店内で唱えた題目が、心をつなぎ留めた。
生き延びるために一時帰国し、宝石とは畑違いの仕事も請け負った。日本の病院へ、介護人材の調整も担った。懸命に食いつなぎ、2年がたった。
インバウンド(訪日旅行)需要が戻り、福岡で宝石商を再開することに。サウラブさんの「対話力」と「誠実さ」が力を発揮する。
店にはインドの工芸品も
店にはインドの工芸品も
地元のメンバーと共に、広布の第一線を駆ける(右から2人目がサウラブさん)
地元のメンバーと共に、広布の第一線を駆ける(右から2人目がサウラブさん)
●「誇りの息子よ」――父が感謝を口にした日
●「誇りの息子よ」――父が感謝を口にした日
苦境の日々を支える土台となったのは、インドでの原体験だった――。
気温45度を超える炎天、バス代を浮かせるために食事代を削り、破れた靴で10キロ以上を歩いて会合に集う友。会合の日程を伝えるために、二日がかりで山道を歩く友もいた。病や貧しさを抱えながら、それでもみんな、明るく笑っていた。
「あの姿が、自分の原点です」
相手の立場に立ち、徹底して向き合う。遠回りに見えても、確かな道。その積み重ねが信頼を呼び、店はようやく本来の輝きを取り戻していった。
うれしいことがあった。
「父が私の働きぶりを認めてくれたんです。熱心なヒンズー教徒の父が、御本尊に向かって感謝を口にした時は胸がいっぱいになりました」
信心に長く反対してきた父だった。理屈ではない。どん底から這い上がり、店を守り抜く息子の姿が、父の心を開いた。
「この店は、私の夢そのものだった。おまえの信仰が守ってくれたんだろう」
はっきりした声で父は続けた。
「誇りの息子よ」
苦境の日々を支える土台となったのは、インドでの原体験だった――。
気温45度を超える炎天、バス代を浮かせるために食事代を削り、破れた靴で10キロ以上を歩いて会合に集う友。会合の日程を伝えるために、二日がかりで山道を歩く友もいた。病や貧しさを抱えながら、それでもみんな、明るく笑っていた。
「あの姿が、自分の原点です」
相手の立場に立ち、徹底して向き合う。遠回りに見えても、確かな道。その積み重ねが信頼を呼び、店はようやく本来の輝きを取り戻していった。
うれしいことがあった。
「父が私の働きぶりを認めてくれたんです。熱心なヒンズー教徒の父が、御本尊に向かって感謝を口にした時は胸がいっぱいになりました」
信心に長く反対してきた父だった。理屈ではない。どん底から這い上がり、店を守り抜く息子の姿が、父の心を開いた。
「この店は、私の夢そのものだった。おまえの信仰が守ってくれたんだろう」
はっきりした声で父は続けた。
「誇りの息子よ」
父とショールームにて
父とショールームにて
父から受け継いだ確かな目利きで、一石一石を見極める
父から受け継いだ確かな目利きで、一石一石を見極める
サウラブさんが大切にしている「一生成仏抄」の一節がある。
「闇鏡も磨きぬれば玉と見ゆるがごとし」(新317・全384)
悩みの壁にぶつかった時、必ずこの御文に立ち返るという。
「大事なのは、ビジネスで勝つこと以上に、自分の心に負けないこと。題目で信心を磨き続ければ、人生が開かれる瞬間は必ず来ますから」
サウラブさんはそう語ると、ショーケースの宝石を手に取り、丁寧に磨き直した。かつての荒れた少年は、自らの内面を磨き続ける職人となった。(九州支社)
サウラブさんが大切にしている「一生成仏抄」の一節がある。
「闇鏡も磨きぬれば玉と見ゆるがごとし」(新317・全384)
悩みの壁にぶつかった時、必ずこの御文に立ち返るという。
「大事なのは、ビジネスで勝つこと以上に、自分の心に負けないこと。題目で信心を磨き続ければ、人生が開かれる瞬間は必ず来ますから」
サウラブさんはそう語ると、ショーケースの宝石を手に取り、丁寧に磨き直した。かつての荒れた少年は、自らの内面を磨き続ける職人となった。(九州支社)