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〈名字の言〉 2026年2月19日

 誰しも“忘れられない記憶”がある。作家の向田邦子氏は、その一つに「鉛筆を削る音」を挙げた。幼い頃、夜中に目を覚ますと、決まって母が食卓で鉛筆を削っていた▼翌朝、学校で筆箱を開けると、整えられた鉛筆が長い順に並んでいる。それは小学校を卒業するまで一日も欠かさず続いた。氏が懐かしく思い返した“愛の記憶”である(『父の詫び状』文藝春秋)▼あるメンバーに“発心した瞬間”を尋ねた。仕事や人間関係に苦しんでいた20年前、足しげく訪ねてくる学会の先輩がいた。居留守を使い、会うことを拒んだが、ポストには必ず励ましの言葉を添えたメモが入っていた▼全く読む気もなく放っておいたが、悩みが深まり、八方ふさがりの中で、部屋の片隅に積まれたメモの山に目を通す。短くも温かい一言一言から真心を感じ、前に踏み出す勇気が生まれた。その後、信心で悩みを乗り越えた彼は今、同志を“励ます側”に。20年前のメモは彼にとって決意の源であり、“宝の記憶”と輝く▼池田先生は「誠実さをもって、気遣いと対話を積み重ねていくなかで、友好の花は咲き、信頼の果実は実る」と記した。胸中の確かな思いを自分なりの形にして、友に届けよう。真心は必ず通じる。(靖)

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