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〈介護〉 軽度認知障害から対策を㊦ 2024年8月14日

  • 早期発見できれば治療も可能
横浜市立大学 保健管理センター センター長・教授
小田原俊成さん

 認知症の予防には、軽度認知障害(MCI)の段階で気付き、対処することが重要です。今回は、横浜市立大学保健管理センターのセンター長・教授の小田原俊成さんに、MCIの原因や早期発見のメリットなどについて聞きました。(㊤は8月7日付に掲載)
 
 

認知症になるとは限らない

 軽度認知障害(MCI)になると、認知症の初期症状と同様、物忘れなどの「記憶障害」や、集中力や意欲の低下、家事の段取りが悪くなるといった症状が出ますが、日常生活は支障なく送ることができます。
 また、うつ病や身体疾患によって、脳機能が低下することで、MCIと同様の症状が出ることがあります。MCIだからといって、必ず認知症に進むというわけではないのです。
 認知症になると、“恥ずかしい”“人に知られたくない”と、隠そうとする人がいますが、早期発見を妨げる原因になります。認知症は、誰もがいつかはなり得る身近な病気です。MCIの段階で自覚し、恥ずかしがらず、早めの対策を取ることが重要です。
 “最近、物忘れが多くなったな”と感じたり、家族の様子が以前と異なったりする場合は、物忘れ外来や認知症外来のある病院で、ぜひ診察を受けてみてください。

MCIの時期があるもの、ないもの

 認知症には、さまざまな種類があり、MCIの時期があるものと、ないものがあります。
 脳梗塞などの脳血管障害後になる血管性認知症では、MCIの時期がないまま、急に認知症になることがあります。
 一方で、アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患は、ゆっくり進行していくため、MCIの時期があります。ここで注目したいのが、アルツハイマー型の場合、MCI段階での早期発見・治療が可能という点です。
 認知症の原因疾患として一番多いのが、アルツハイマー病で、さまざまな研究が進んでいます。アルツハイマー型認知症の検査では、医師の問診の他、認知機能や血液、脳画像、脳脊髄液などを調べます。MCI段階で分かった場合、治療薬を使用することもできるのです。
 認知機能に不安がある家族に対しては、「早期であれば、治療をすることも可能らしいよ。一緒に検査に行ってみよう」と促してみてはいかがでしょうか。

家事をすることが気付くきっかけ

 MCIは、薬による治療だけでなく、生活習慣を見直すことで、認知症の発症を遅らせる効果も期待できます。
 まず大事なのが栄養管理です。バランスが良く、規則正しい食生活は、健康の基本です。糖尿病や高血圧症といった生活習慣病があると、認知症のリスクが高くなることが分かっています。まずは、食事の改善からスタートしましょう。
 また、日常生活の中で家事に取り組むことは重要です。料理や洗濯などの家事は、順序立てて、物事を進める必要があります。予防になるだけでなく、“できなくなったこと”に気付くきっかけにもなります。
 長年、家事をしてこなかった男性が、MCIの段階で気付けず、認知症が進行してから気付くケースが多いのも、家事への不参加が理由の一つかもしれません。ぜひ日常的な家事に取り組んでほしいところです。

コグニサイズに注目集まる

 認知症の予防には、適度な運動も大切です。筋力トレーニングやランニングなど、さまざまな運動がありますが、MCIの改善には、まず有酸素運動から始めてみましょう。特に、ウオーキングは特別な準備も必要なく取り組みやすいので、お勧めです。
 老人ホームやデイサービスなどで注目されているのが、国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」です。これは、運動と認知課題を組み合わせた運動療法です。
 例えば、足踏みをしながら計算やしりとりをしたり、ステップ運動をしながらジャンケンをしたりします。
 軽く息が弾む程度の運動をしながら、たまに間違えてしまうような問題にも挑戦。少しずつステップアップしていくのも、コグニサイズの特長です。
 認知機能の改善に効果があるだけでなく、複数人で取り組むことで、人とのつながりをつくれることも、大きなメリットではないでしょうか。

 「コグニサイズ」の実践方法は、9月4日付で掲載予定。

原稿募集
こころの絆

 読者の体験談「こころの絆」では、皆さまの介護体験を募集しています。内容は自由です。“わが家流”の介護の取り組みなど、皆さまの体験談を聞かせてください。

介護のホンネ
認知症介護 ビックリした話

 認知症の方を介護する時、会話のキャッチボールがうまくいかなかったり、徘徊で突然いなくなったりと、想定外の出来事が起こりがちです。介護をしていてビックリしたエピソードを教えてください。

〈要項〉

 ■応募するコーナー(「こころの絆」か「介護のホンネ」のいずれか)、氏名、住所、年齢、性別、職業、電話番号を明記してください。
 ※介護のホンネは、匿名希望でも応募できます。
 ■字数の目安は400字程度。氏名入りで掲載された方に、図書カードを進呈します。
 ■趣旨を変えない範囲で添削させていただく場合があります。
 ■原稿が当社のウェブサイトに掲載されることもご了承ください。
 ■原稿は返却しません。同内容のものを他紙誌に送ることは、ご遠慮ください。

〈宛先〉

 [郵送] 〒160-8070 聖教新聞「介護」のページ係
 [メール] dokusha@seikyo-np.jp
 [ファクス] 03(5360)9610

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