• ルビ
  • 音声読み上げ
  • シェア
  • メール
  • CLOSE

〈Seikyo Gift〉 390グラムで誕生した命〈信仰体験〉 2024年10月26日

  • 咲き誇れ 可能性を広げて

 【東京都三鷹市】その日記は「成長の記録」が克明に、柔らかな筆致でつづられていた。「これだけ応援してもらったことを将来、この子に伝えたくて」。2020年(令和2年)4月2日、望月啓子さん(37)=副白ゆり長=は、二女・咲生さんを390グラムで産んだ。愛情と感謝が詰まった日記は、池田先生の言葉と共にあった。(9月10日付)

プールで水遊び。ひんやりと涼しく、気持ち良さそう(右から長女・架歩さん、望月さん、二女・咲生さん、夫・勇作さん)
プールで水遊び。ひんやりと涼しく、気持ち良さそう(右から長女・架歩さん、望月さん、二女・咲生さん、夫・勇作さん)

 20年4月2日(妊娠22週0日)
 20時ごろから本陣痛が始まって、分娩室に入って10分後……生まれた。微弱だが脈があった。逆子で足からの出産だったが、ストンと出てきてくれた。
 尊い、尊いわが子。小さいけど、強い子。強い生命力。すべてが未熟で……。絶対、一緒に生きたい。信じたい。
  
 〈母の祈りには、限界がない。行き詰まりもない。臆病も弱々しい迷いもない。ひたぶるな祈りの底には、絶望やあきらめを追い払う勇気が燃えている〉
 (随筆「我らの勝利の大道」)
  
 4月3日(生後1日)
 なまえは「咲生」と決めた。桜が咲くころに生まれ、生きて、生きて、生きてほしいから「生」を入れた。

 4月6日(生後4日)
 薬の治療で動脈管がふさがった。一安心。鼻に入れた管から母乳を送る治療を再開。栄養がたっぷりいくように。3日の山を乗り越えた。
  
 〈どこまでも、たくましい『楽観主義』で悠々と人生を切り開いていけばよい。苦労や試練に、一喜一憂せず乗り越えていくならば、崩れない『心の強さ』を、子どもだけでなく、親自身も培うことができる。根本は祈りである〉
 (「四季の励まし」)
  
 4月13日(生後11日)
 母乳は午後1時から再開。0・4~0・5㏄ずつ入れているとのこと。咲生はよーく動いていた。担当医とお話。「私たちにできることって本当に少し。あとはこの子の生命力次第。すごい生命力を持ってる」と。本当に祈りが大事なんだ、本当に。

 5月2日(生後1カ月)
 左肺は手術のダメージが強く、まだ全然とのこと。「咲生」と呼ぶと、何度も目を開けてくれた。まだ何も見えてはいないだろうけど、視線をこっちに向けてくれたりした。
  
 7月28日(生後117日)
 今日、初めて咲生の泣き声を聞いた。か細い声で鳥が鳴いているような、そんな声。だけど一生懸命。
  
 〈どんなに幼い命でも、「生きよう。生きよう」と瞬時も休まず闘っている〉
 〈ならば、周りの家族が、苦悩に押しつぶされてはいけない。「希望を捨てない」こと、「家族が力強く生きる」ことです〉
 (『21世紀への母と子を語る』)

 21年2月4日(生後308日)
 気管切開術、無事に終了。顔周りがスッキリした。ミルクは30㏄からスタート。
  
 4月12日(生後375日)
 足と首がすごく動いていて、上半身と首は自分で動かし、寝返りしていた。成長がすごい。
  
 5月15日(生後408日)
 眼の手術後の経過は良好で、チャンピオン並とのこと。でも未知数だとも言っていた。ならば信じて祈っていくしかない。「妙とは蘇生の義なり」(新541・全947)

 22年3月3日
 おうちで初めてのひな祭り。うつ伏せから仰向けがなかなかできないと思っていたら、1月に初めてできた! 皆びっくり! まだまだ咲生ちゃんの勢いは止まらない。すくすく育て!
  
 6月22日
 誤嚥性肺炎の疑いで入院。脈が40まで落ち、無気肺になる、酸素吸入が必要な状態に。3週間の入院。
  
 〈人生の勝敗は、途中では決まらない。最後に勝つ人が、真の勝利者なのである〉
 (「四季の励まし」)
  
 7月3日
 呼吸器、外れた!
 自分で呼吸、頑張っている。むくみが早く取れるように。
  
 23年5月
 七五三、撮れたー! 家族写真では、スタッフの人が感動したと言ってくれた。咲生はいつも人に恵まれるね。
  
 24年4月2日
 いろいろ大変だったけど、4歳まで育ってきてくれたね。3歳は、胃ろうの手術で3カ月入院。腹圧で手術の糸が何度も切れてしまい、絶食をして輸血もして。痛くてずっと泣いてたね、よく乗り越えたね。やっぱり咲生はママの誇りです。

 今夏、初めての外泊旅行に出かけた。夫の勇作さん(39)=区男子部主任部長(部長兼任)=が吸引器や酸素ボンベを車に積み、長時間の移動に備えた。
 
 車中、すやすやと眠る咲生さんの隣では、待ちきれない長女の架歩さん(7)=小学2年=が前のめりに、パパとママへ話しかけた。「ねえ、今日は花火が見られるんだよね?」「そうだよ」「咲生ちゃん、驚くかなー」

 咲生さんは、生後27日で心臓の手術を受けた。脳室内出血があり、未熟児網膜症の手術は2度。あまりの小ささゆえ、「症例がない」との説明のたび、望月さんは不安に押しつぶされそうだった。
 
 聖教新聞に掲載される、池田先生の言葉を支えにした。夫妻は創価大学の通信教育部で出会った。望月さんの揺れ動く心を、勇作さんはいつも穏やかに受け止めようと努めた。義父母も一緒に暮らし、支えてくれた。
 
 咲生さんは、生後1年3カ月で退院。自宅では、吸引などの医療的ケアが24時間欠かせず、3歳で胃ろうを造設した。「目が見えてないかも」「耳も聞こえてないかも」。両親の不安を打ち破ったのは、咲生さんだった。

 顔をグンと上にあげ、勢いよく寝返りを打つ。音の鳴るおもちゃを好み、床に打ち付けて楽しむ。知らない声がすると、自ら指でまぶたを押し上げ、つぶらな瞳をのぞかせた。「絶対、見えてるよね?」とささやきあった。
 
 越せなければ助けられないと言われた4月1日の夜、題目に包まれた咲生さんは、おなかの中で生きようとしていた。「父母となり、その子となるも、必ず宿習なり」(新1269・全902)
 
 今も家族で唱題していると、咲生さんが腹ばいで、近づいてくる。「題目の響きが心地いいのかな……」。いつも信心の大切さを教えてくれる。
 咲生さんにできることが増えるたび、望月さんの心に、希望が一つまた一つと、ともった。つかまり立ちも、座るのも、どんどん上手に。今は嚥下機能ができるよう、トレーニングに励む日々。
 

 旅館から見える夜空。ヒュルヒュルと光の筋が上がり、閃光の花が咲いた。
 
 初めて味わう音圧に、咲生さんはまぶたを指で上げた。この子の世界は、ますます広がっている。咲生さんの大きな瞳に映る花火を見つめ、望月さんはそう思う。

長女・架歩さんがおつかいに
長女・架歩さんがおつかいに

動画

創価大学駅伝部特設ページ

創価大学駅伝部特設ページ

SDGs✕SEIKYO

SDGs✕SEIKYO

連載まとめ

連載まとめ

Seikyo Gift

Seikyo Gift

聖教ブックストア

聖教ブックストア

デジタル特集

DIGITAL FEATURE ARTICLES デジタル特集

YOUTH

劇画

劇画
  • HUMAN REVOLUTION 人間革命検索
  • CLIP クリップ
  • VOICE SERVICE 音声
  • HOW TO USE 聖教電子版の使い方
PAGE TOP