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烈風 199~202ページ 【小説「新・人間革命」】第14巻 2024年9月9日

 医師は、「すぐには行けないが、なるべく早く駆けつけましょう」とのことであった。
 三、四十分すると、山本伸一の看護をしていた峯子が、また、部屋から出てきた。
 いつも、決して笑顔を絶やさない峯子が、春木文子に、切迫した顔で尋ねた。
 「お医者さまは、まだでしょうか……」
 春木は、峯子の表情から、伸一の病状は、容易ならぬ事態であることを感じ取った。
 医師が着いたのは、午後八時前であった。直ちに診察が始まった。
 伸一は、咳が出て胸が締めつけられる感じがすることを告げた。
 医師が体温を測った。
 四〇度五分──。
 大変な高熱である。口の中も、熱のために真っ白になっていた。
 医師は、聴診器を伸一の胸に当てた。バリバリという異常な呼吸音が聞こえた。
 “これは、ひどい!”
 肺が、かなり炎症しているにちがいない。
 急性気管支肺炎と診断を下した。
 抗生物質の注射をし、薬を飲ませ、しばらく様子を見ることにした。
 峯子は、医師の処方した薬を、一つ一つ確認すると言った。
 「この薬とこの薬は、副作用が強すぎて、主人の体には合いません」
 医師は、驚きを隠せなかった。
 “山本会長の体質を知り尽くしておられる。また、薬に対する知識も豊富だ。日々、会長の健康を気遣い、献身的に支え続けてこられたにちがいない……”
 しばらくして、容体を見に来た医師に、伸一は念を押すように言った。
 「明日は和歌山に行くんだが、行けるね!
 みんなが待っていてくれるので、どうしても行かなければならない。大丈夫だね!」
 翌二十一日の夕刻、和歌山県立体育館で行われる幹部会に、彼は出席することになっていた。医師は答えに窮した。当然、とても行ける状況ではない。いや、行かすわけにはいかないと思った。
 しかし、伸一の気迫に押され、駄目だとは言えなかった。また、空気のきれいな和歌山の方が、体によいのではないかという考えが頭をよぎった。

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