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〈Seikyo Gift〉 皮膚筋炎、間質性肺炎に挑む〈生きるよろこび 信仰体験〉 2024年9月28日

  • 生命の歓喜は三世永遠
現在、3カ月に一度、検査を行う。「不安や疑いの心がでることもある。でも、同志のみんなの顔を思い出すと、やっぱり題目だって、勇気が湧くんです」と濱さん(左から2人目)
現在、3カ月に一度、検査を行う。「不安や疑いの心がでることもある。でも、同志のみんなの顔を思い出すと、やっぱり題目だって、勇気が湧くんです」と濱さん(左から2人目)

 【神奈川県相模原市】「いただいた命ですから、広宣流布のために生き切ります」。濱久美子さん(71)=支部副女性部長=は、一日一日の尊さを知っている。誰かを思う、祈りの力のすごさを実感している。病によって奪われかけた明日を、師子吼の題目でつかみ取った。命を懸けた真剣勝負の末に、一つの確信にたどり着く――。(7月29日付)

 病に苦しんだ青春時代だった。20歳の時、重度の結核で入院。高熱にうなされ、寝たきりの生活が4年半続いた。

 見舞いに来てくれた友人は、きれいに化粧をしていた。結婚した友もいた。“私は、ここから出ることすらできない”。自らの境遇を嘆いた。

 沈む心を持ち上げてくれる人がいた。同じ病院に入院している、少し年上の女性。「自由になるには、題目と折伏しかないよ」

 濱さんは、幼い頃に母と創価学会に入会していたが、信仰からは遠ざかっていた。彼女の真剣さに胸を打たれた。

「恩返しの毎日です」。濱さん㊧は今日も友のもとへ
「恩返しの毎日です」。濱さん㊧は今日も友のもとへ

 ベッドの上で懸命に題目を唱える。看護師から、このままでは長くは生きられないと言われた。濱さんは、会う人会う人に、信心の話をして歩く。誰も聞く耳を持たなかった。それでもよかった。湧き上がる生命力を、自身の中に確かに感じたから。

 半年後、濱さんは結核を乗り越えた。感謝の思いで、広布一筋の人生を誓った。

 27歳で結婚。子どもはできなかった。奔放な夫に悩み、離婚した。人生、荒波の連続。支えてくれたのは、いつも学会の仲間だった。常に題目。常に師と同志と共に、強く生きてきた。だが病魔が忘れかけた頃に襲いかかる。

 2019年(平成31年)4月。ひどいせきに悩まされ病院へ。肺のエックス線写真は、広範囲にわたって白い影に覆われていた。

 医師から厚労省の指定難病である「皮膚筋炎」と告げられた。皮膚と筋肉に炎症が起きる自己免疫疾患の一つで、膠原病の一種。間質性肺炎を併発していた。

 即日入院。体は急速に弱まっていった。筋力が低下し、階段を少し上るだけで息が切れた。のみ込む力が弱まり、鼻から管を通しての流動食となった。数カ月後には、ベッドから起き上がれなくなった。死の気配を感じた。

 心の支えは、ボイスレコーダーに録音された同志の題目の声。皆からのものだ。濱さんはイヤホンをつけて、何度も何度も聞いた。病魔にあらがう力をくれた。

 1年半に及ぶ入院。しかし、治療の効果は見られないまま、自宅へ戻った。

 20年10月。鹿児島に住む妹が来て、身の回りの世話をしてくれた。酸素吸入が欠かせず、寝たきりの状態。妹は足が悪く、つえを突きながらの介護だった。

 「来年の桜は見られないかもって……」。医師と話をした妹が、悲しげに教えてくれた。“負担をかけたくない”。同年12月、濱さんは緩和ケア施設への入所を決めた。

 横になり、時間の流れに身を任せる。「悲しみも、寂しさも、焦りも感じない。ただただ“無”でした」

 ふと、鼓膜が震えた気がした。繰り返し聞いた、同志の題目の響き。かすれる声で唱題した。止まっていた心が、再び動き出す。

 桜が見たい。旅行にも行きたい。会いたい人もたくさんいる。“それが全て、できなくなるかも……”。全身が恐怖におののいた。未来を奪う魔物。“死とは、こういうことか”。死魔と真正面から対峙した。

 やっとの思いでベッドから車椅子に座る。挑むように前を見据え、背筋を伸ばした。祈りの一音一音に全てをたたき込む。生死の次元を超えた、生命の闘争だった。

 池田先生の言葉をノートに書き写した。

 〈嘆いていても何も変わらない。後ろを振り返っても何も進まない。まず題目だ。題目の中に一切が含まれている〉

 限りある命。今日という一日の尊さ。自分にできることは何か。

 師の言葉に続けて、思いつく限り、友人の名前を書いた。順番に電話をかける。現状をありのまま伝え、最後は明るい声で「私、負けないから」と。

 それは自らに、生きる力を鼓舞するエールでもあった。一回一回の電話で“絶対に勝つ!”と命に刻印していった。

 翌年の3月末。施設周辺を、車椅子で散策する濱さんの姿があった。4カ月ぶりの外出。温かな風が頰をなで、春の匂いがした。

 ほとんど遊具もない空き地のような公園。その一角から目が離せなくなった。地面から力強く伸びる幹。青空を覆うように広がる薄紅色の花。

 「人生で一番、きれいな桜でした」。厳寒の風雪を乗り越え、美しく咲き誇る。満開の生命力に、心を奪われた。風のささやきに、花びらが舞う。散りゆく桜の一瞬の輝きに、濱さんは一つの答えにたどり着く。

 生も歓喜、死も歓喜。「それは生命の歓喜。この喜びは三世永遠なんだ」

 入所から1年半後、再び検査を受けた。肺を覆っていた白い影は、目に見えて小さくなっていた。酸素投与量、ステロイド薬の量も、少しずつ減っていき、22年7月に退所した。

闘病中に出合った桜の木(2021年撮影。本人提供)
闘病中に出合った桜の木(2021年撮影。本人提供)

 現在、外出時は酸素吸入が必要ないまでに回復した。引き続き、薬を服用しながら、病との闘いを続けている。

 闘病中、色紙で、電話で、オンラインの画面越しで、励ましを送り続けた多くの同志がいた。

 「今度は私の番。相手を思う心からの一言が、題目が、必ず通じていくことを実感しちゃっているんだもん」

 濱さんは今年、人工股関節への置換手術を受けた。苦しいリハビリにも、喜々として挑んだ。励ましたい人がいた。

 その女性は、筋力の低下と、薬の副作用で骨がもろくなり、車椅子に乗っていた。「一番の味方になろうって決めたんです」

 濱さんは先日、自分の足で彼女の元を訪ねた。「一緒に、病魔を乗り越えていきましょう」。そう言った時、彼女の瞳には、闘う炎が宿っていた。それが濱さんには、何よりもうれしい。

 「人のいのちをのぶれば我がいのちののぶなり」(新2150※新規収録)。誰かのために祈り、語る。その中で生命が躍動していくのが分かる。だから「今が一番、楽しいし、最高に幸福なんです!」。

 この喜びだけは、何をもっても決して崩れない。

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