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〈信仰体験〉 失明をはね返す「楽しんだもん勝ち」のド根性 2026年5月4日

  • 師弟という究極が、幸せを見せてくれる
大好きなピンクの服でおめかしをした服部さん㊥。夫・重行さん㊧のおちゃらけに、「また変なこと言ってるわ」と長男・伸行さん。春の笑顔がそこにある
大好きなピンクの服でおめかしをした服部さん㊥。夫・重行さん㊧のおちゃらけに、「また変なこと言ってるわ」と長男・伸行さん。春の笑顔がそこにある

 【大阪市中央区】その目が映すのは「薄い光だけ」。病に視力を奪われてなお、美術鑑賞はするし、メールで絵文字も使いこなす。服部惠子さん(67)=副白ゆり長=には、関西仕込みの「楽しんだもん勝ち」のド根性がある。

なんでも楽しむ服部さん。アニメ「名探偵コナン」が好きで、映画鑑賞は欠かさない。最近はスマートフォンに挑戦中
なんでも楽しむ服部さん。アニメ「名探偵コナン」が好きで、映画鑑賞は欠かさない。最近はスマートフォンに挑戦中

 本も読めた。自転車にも乗れた。
 人よりも、ちょっと見えにくいだけ。
 その「ちょっと」が、高校のある時期から静かに崩れ始める。

 教科書の文字が追えなくなった。
 虫めがね越しに言葉を拾い上げ、フェルトペンでノートに大きく書き写す。

 20歳の時に、網膜色素変性症と診断された。「失明しますか?」と医師に尋ねると、曖昧に濁された。

 視覚障がい者のための職業訓練所に通った。そこで始まったのは、点字の習得などの生活訓練だった。
 「まだ見えてんのに、何でこんなんせなあかんの?」
 渡された直杖を、新聞に包んで隠して持ち帰った。

若き日のアルバムから
若き日のアルバムから

 降りかかる将来への不安。うつむく服部さんに、高校時代の恩師が仏法の話をし、「幸せになれる」と言い切ってくれた。
 「半信半疑。でも、信じてみたいと思った」。
 1981年(昭和56年)に信心を始めると、間もなくして電話交換手の仕事が決まった。

 誠実を尽くす声の振る舞い。清涼感のある声と褒められた。
 「その声に、わしも引かれてん」と、夫・重行さん(67)=副支部長。なれ初めを語り、小さく一言。
 「目が悪いんは何のこっちゃない。問題は怒らした時や。鬼に化けよる」

 笑いと愛の雷がこだまする、にぎやかな日々。そんな幸せの陰で、視界は緩やかに、でも確実に削られていった。

年がら年中、陽気な夫・重行さん。痛みにはめっぽう強いのに、「歯医者の音だけは怖くて、あきませんねん」
年がら年中、陽気な夫・重行さん。痛みにはめっぽう強いのに、「歯医者の音だけは怖くて、あきませんねん」

 長男・伸行さん(32)=男子地区リーダー=が生まれ、手探りの子育てが始まる。
 哺乳瓶の目盛りに点字を貼った。
 「明かりにかざせば、お湯の量はぎりぎり見えた」
 ハイハイからヨチヨチ歩きになると、外出時はリードひも付きの服を着せ、視界から外れないようにした。

 電話交換手を続けながらの子育て。夕飯はいつも重行さんが作った。
 二人三脚の愛を浴び、優しい心の芽が育つ。買い物に行けば、息子が母の手を取り案内する。小さな手が頼もしかった。

点筆で多くの言葉を刻んできた
点筆で多くの言葉を刻んできた
●温かな笑顔の輪郭

 服部家の原点がある。
 2005年(平成17年)9月。
 関西創価小学校に通っていた伸行さんが、修学旅行で創価大学へ。思いがけず創立者・池田先生との出会いを結んだ。

 朝一番で同志からの電話が鳴った。
 「早く、今朝の聖教新聞、見てみい!」
 服部さんは、顔すれすれに新聞を引き寄せた。おぼろげな視界の中で、温かな影が輪郭を結ぶ。

 ぎゅっと生徒を包み込む池田先生。その隣で、最高の笑顔で喜んでいる息子がいた。
 服部さんは、感謝の涙が止まらなかった。毎日、御本尊の前で写真に目を凝らした。
 「見えなくなっても、ずっと心で見えるように」。幸せの一枚を、命のカンバスに焼き付けた。

 そこからは急激に視野がしぼみ、危険な目にも遭った。
 電車とホームの隙間に、何度も足がはまった。雨の日に水路に落ち、脚を7針縫ったこともある。

 ひたひたと迫るわが宿命。
 白杖をついて歩いていると、スマホに夢中な女性とぶつかり、「どこ見てんの!」と、なじられた。
 それでも服部さんは、負けじ魂の根を、命に深く広げてきた。

 自在会(視覚障がい者のグループ)の一員。自らの境遇を言い訳にはしない。誰よりも努力を積み上げ、人を励ます。
 先輩たちの姿に学んだ「仏法は勝負」の快活な行進。その鼓動の真ん中に、池田先生がいる。

 〈(自在会の)皆さん方こそ「如蓮華在水」の原理からみれば、最高の幸福の条件をもった尊い方々と、私は確信申し上げたい〉

 師という究極の光が、幸せのありかを教えてくれた。

●心に「智慧の眼」を

 嘆きの心を放り投げ、白杖を手にぐんぐん進む不屈の女王。
 会合に行けば、その場で点字を打ち、思いのままに感動を記した。同志に手を引いてもらい、悩める友のもとへ激励に。
 「学会の中でしか、境涯は高まらへん」
 路面電車に乗り込み、広布へ歩き抜いた。

 10年前、ついに視界から日常が消えた。
 心裂かれるその時に、服部さんは「なったもんは、しゃあないやん」と笑ってみせた。
 以前と変わらず海外旅行を満喫し、異国の音や空気を楽しんだ。
 一昨年まで、大阪府職員の電話交換手として働き、最後の年には優良職員表彰を受けた。

題目、また題目で、進んできた
題目、また題目で、進んできた

 新たな趣味も、どんどん見つける。
 音の鳴る球で行う卓球を始め、「奥が深い」と夢中でボールを追いかける。
 息子と一緒に美術館へも行くように。「音声ガイドで声優さんらが、ええ声で案内してくれはるんです」。見えないはずの絵画が、芸術品が、輪郭を持って浮かび上がる。
 心の景色は広がるばかり。

 かみ締める言葉がある。
 〈妙法を持った自在会の人たちが、最高の「智慧の眼」を開いて、幸福になれないわけがない〉

 まぶたの裏には、いつも笑顔の師匠がいる。新しい景色を、新しい自分を、今でもずっと教えてくれる。
 人生上々、笑顔上々。「こんなに楽しくさせてもらって、ええんやろか」。毎日が、まぶしさで満ちている。

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