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時代を超えて愛される「源氏物語」が東京富士美術館へ 2024年3月9日

 東京富士美術館(八王子市)の開館40周年を記念する特別展「源氏物語 THE TALE OF GENJI――『源氏文化』の拡がり 絵画、工芸から現代アートまで」が、好評開催中です(3月24日まで)。

 今回は、平安文学好きの学生記者むうが、同展の開幕前、展示作業など準備に当たる学芸課長の鴨木年泰さんにインタビューしました。

■数センチ単位の調整!? 展示の作業を見学

 ――大河ドラマ「光る君へ」が放送されているタイミングでの展示開催、すごいですね!

 実は、この展示企画自体は4年前から始まっていたので、展示とドラマの放送が同時期になったのは、たまたまだったんです。

 ――偶然だったんですね!

 ドラマは「源氏物語」の作者・紫式部の人生を追うストーリーになっていますが、本展では、ドラマにも取り入れられている「源氏物語」の名場面を描いた絵巻や屏風を展示しているので、ドラマの場面と見比べることも楽しみ方の一つかもしれません。

 先日、放送されたシーンの元になっている「帚木」の「雨夜の品定め」を描いた作品も、たくさんあるので、ぜひ探してみてください。
 

 ――こちらの狩野養信の「源氏物語図屏風」は、とても貴重なんですよね。

 この作品は、香川県の法然寺からお借りした重要文化財で、十一代将軍・徳川家斉の娘の嫁入り道具なんです。
 裏面にも彩色がされていて、すごく手が込んだ作りになっていますので、展示が始まったら、屏風の裏面も見ることができるように、鏡を置こうと考えています。

狩野晴川院養信「源氏物語図屏風」 江戸時代、文政9年(1826)法然寺蔵 重要文化財
狩野晴川院養信「源氏物語図屏風」 江戸時代、文政9年(1826)法然寺蔵 重要文化財

 
 ――200年近く前の作品にもかかわらず、色鮮やかですね。

 基本的に日本画の顔料は鉱物由来のものが多く、鮮やかに発色します。中でも、この屏風は将軍家の嫁入り道具ということもあって、良い材料をふんだんに使って作られています。

 また、この作品は、他の屏風よりも丈が低いので屏風の高さが揃うように、台座を少し高く設置します。ガラスケースに入れてから、外からどう見えるのか確認し、数センチ単位で調節をしていくんです。

■「源氏物語」を読んだことがない人でも、楽しめる展示に

 ――ずばり、展覧会の見どころを教えてください。

 展覧会は、第1部~第4部・エピローグで構成されています。
 特に第2部は、「源氏物語」のあらすじを絵画とともに読むことができ、ストーリーを知らない人でも楽しめると思います。

 ――第2部に展示されている「源氏物語」の人物系図も迫力がありますね。

 よく気が付きましたね! 人物系図は、正確に作ることがかなり難しいんです。登場人物が死んでしまったり、役職名が変わると名前も変わったりするので、どの名前で表記するべきかも研究者で意見が分かれてしまうくらいなんです。
 今回は、文学の先生方が確認してくださったので、太鼓判を押せるものになっています。

 ――今回の展覧会には、新たに発見された絵画もあると伺いました。

 最初の部屋に展示している「源氏物語小色紙宿木」です。平安時代の「源氏物語」を描いたと推測されている作品で、今回初公開になります。

 これまでに判明している「源氏物語」を描いた平安時代の絵画は、有名な国宝「源氏物語絵巻」(本展には不出展)に続いて2例目が、この「源氏物語小色紙宿木」ということになります。

「源氏物語小色紙宿木」 平安時代、12世紀 個人蔵
「源氏物語小色紙宿木」 平安時代、12世紀 個人蔵

 
 ――想像以上に小さくて驚きました。

 当時の人々は、物語が頭に入っていて、物語の詞書を読みながら、手元で絵を見て楽しんでいたんだと考えられています。

 「源氏物語」の描写の中にも「絵合わせ」という、絵を比べる場面がありますが、平安時代、“王朝貴族”の女性たちの生活の中では、物語の小さな絵画に需要があったんだと思います。

 ――当時の楽しみ方を知ると、展示をより身近に感じながら鑑賞できますね。

 本展では、第1~2部で画帖や絵巻を、第3部で大きな装飾品が多く残っている室町時代以降の作品を展示しています。
 第4部では、近代の「源氏物語」に関連する作品を展示し、時代を追いかけながら楽しんでいただけるようになっています。

■東京富士美術館史上初!? 生成AIの導入

 ――この機械は、なんですか?

 今回、東京富士美術館として、初めて生成AIを導入しました。

 ――新しい取り組みですね!

 展示を見て、気になったことを質問すると、AIが回答してくれます。「源氏物語」のあらすじや、和歌、読み仮名などのデータが入っているので、かなり精度が高いです。

 皆さんと同じような若い世代の方にも、「源氏物語」に親しみを持って楽しんでもらえるよう、工夫をしています。関連イベントも準備していますので、ぜひ多くの方に来ていただければと思います。
 
 

■関連イベント紹介

 2月25日に開催された、講座「姫君の空間――御簾の下からこぼれ出る女房装束」と「十二単着装実演会」(主催:一般財団法人民族衣裳文化普及協会)に、学生記者のむうが参加してきました。

 講演会では、当時の宮殿の空間の使い方など、「打出(女性の着る十二単の袖口が御簾の下から出ているしつらえ)」の魅力などが語られました。

 展覧会の入り口には、「打出」の再現展示がされています。講演を聴いた後に鑑賞すると、本展への理解が深まるのではないでしょうか。他にも「打出」を描いた源氏絵を探してみるのも、展覧会の楽しみ方の一つです!

衣紋者が十二単を着せる様子
衣紋者が十二単を着せる様子

 
 実演会では、「衣紋者」と呼ばれる方が、前と後ろから十二単を着せていく様子を生で見ることができ、写真撮影も可能でした!

 十二単を着た女性が、檜扇で顔を隠して歩く姿は、まるで平安時代のお姫様みたい! 直衣を着た公達と並んだ姿は、平安時代にタイムスリップしたようでした。

 今回使われた袿には、八重梅の紋様が入っていて、濃い桃色から薄い桃色へと重ねられていきます。一番上に重ねられた御衣は、最も豪華なものを着ることになっていて、御衣にも梅の紋様があり、最後に唐衣・裳が重ねられ、十二単の完成です!

 その後、「今回着せた十二単は、合計何キロか?」というクイズが!
 前方に座っていた女の子が「20キロ!」と答えてくれましたが、惜しくも不正解。正解は、ぜひ実際に実演会に参加して聞いてみてください!

◆講座「姫君の空間─御簾の下からこぼれ出る女房装束」&十二単着装実演会

【次回の開催日】 
 2024年3月17日(日)
 ①11:00〜11:45
 ②14:00〜14:45
 (開場はそれぞれ30分前)

 講師:赤澤真理(大妻女子大学准教授)
 実演:一般財団法人民族衣裳文化普及協会

◆「源氏物語」展
 会期は3月24日(日)まで。月曜休館。
 開館時間は午前10時~午後5時(入館は同4時30分まで)。

 【東京富士美術館ホームページ】

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