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◆価値創造への挑戦 話し合いで学ぶ「国際法と平和学」 学外のコンテストで2年連続最優秀賞 2023年4月6日

  • 【創大・短大マガジン】
法学部 中山ゼミ
「人間の安全保障」実現へ 行動する世界市民を育成

 「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」――創価大学の設立に際し、創立者の池田大作先生は、「建学の精神」の一つに平和への願いを示した。その精神を受け継ぎ、国際法と平和学の視点から未来の国際秩序について考える、創大・法学部の中山雅司ゼミの取り組みを追った。

ゼミで取り入れているLTD(話し合い学習法)。楽しげに語り合う学生たちを中山教授(右から4人目)が見守る
ゼミで取り入れているLTD(話し合い学習法)。楽しげに語り合う学生たちを中山教授(右から4人目)が見守る
目の前の人に尽くす

 平和の実現――この人類共通の願いとも言える難題に、果敢に挑む学生たちがいる。
   
 法学部の中山雅司教授のゼミは「SDGsと人間の安全保障――国際法と平和学の視点から人類の未来を考える」とのテーマで探究を続ける。
   
 「人間の安全保障」とは、国家だけでなく、人間に焦点を当て、紛争、貧困、感染症、災害などの脅威から一人一人を守り、支援する考え方。「SDGs」(持続可能な開発目標)が掲げる「誰一人取り残さない」社会も、「人間の安全保障」の理念に基づいている。
   
 ゼミでは、この理念を柱に、「力の支配」ではなく「法の支配」による新たな国際秩序の構築を模索し、その重要なツールである「国際法」の役割を学ぶ。
   
 とはいえ、コロナ禍やウクライナ危機、気候変動など、平和実現への道は険しい。記者が難しい顔をしていると、昨年度、ゼミ幹事を務めた熊倉貴之さん(4年)が、笑顔で話してくれた。
   
 「平和って難しいですよね。国際情勢は複雑で、学ぶほどに課題が見えてしまう。でも中山ゼミは、平和に臨む姿勢を前向きにしてくれます。学生同士が語り合う中で、目の前の人に尽くすことが平和への道だ、まだまだできることがあるぞって思えるんです」
   
 ゼミでは、各自が教材等を学んで予習ノートを作成し、授業で発表・検討するLTD(話し合い学習法)を導入。自分の言葉で語り、他者の意見を聞くことで、理解の幅が広がるという。
   
 一昨年からは、学外コンテストである大学コンソーシアム八王子主催の「学生発表会」に出場。ゼミで数チームをつくり、身近な社会課題を研究。その改善策を行政や企業に向けて提案する。
   

「大学コンソーシアム八王子」主催の「学生発表会」では、中山ゼミから3チームが入賞した(東京・八王子市内で)
「大学コンソーシアム八王子」主催の「学生発表会」では、中山ゼミから3チームが入賞した(東京・八王子市内で)

   
 昨年度は、中山ゼミのチーム「TSUNAGU」(リーダー=大前遥さん、4年)が、「ヤングケアラー」が幸せに暮らせるまちづくりについて提案し、申し込まれた284件の中で最も優れた発表に贈られる「学生が八王子市長へ直接提案」部門の最優秀賞を受賞。その他2チームも入賞した。中山ゼミのチームが最優秀賞を受賞したのは、2年連続となった。
   
 熊倉さんが振り返る。
 「まさに『シンク・グローバリー、アクト・ローカリー(地球規模で考え、地域で行動する)』の実践の場です。ゼミのチーム同士で連携し、発表の練習や内容のチェックをし合ったので、多様な知識や価値観を吸収できました。私は別のチームでしたが、仲間の最優秀賞が、自分のことのようにうれしかったです!」
   

半数が海外留学

   
 世界の現状を知ることが、平和への第一歩。積極的に留学を推奨する中山ゼミでは、学生の約半数が海外留学を経験するという。
   
 「中山ゼミの特長は、国際性と主体性、そして、友と励まし合う中で人間性が磨かれることです」
   
 そう語る三浦文江さん(4年)は、小学校から創価一貫教育に学び、創大で留学することを夢見て、懸命に英語を学んできた。
   
 しかし、コロナ禍の影響で、決まっていた交換留学が、2度にわたって中止に。失意に沈む三浦さんに、ゼミの仲間が寄り添い、励ましてくれた。創大で学ぶ使命を改めて自覚し、どんな状況でも希望を生み出す強い自分になろうと決意。高い志で勉強に励んだ。
   

中山ゼミの友
中山ゼミの友

   
 そんな中、イギリスの大学から異例の第2次募集があり、半期の間だけ、留学に行けることに。さらに、イギリス滞在中、一度は中止となったオーストラリアの大学が、後期のみ、留学生を受け入れるとの連絡が。特例で2カ国に交換留学できることになった。
   
 留学先では、文化や環境の異なる生活に苦労もしたが、仲間の応援を思い起こし、すべてを成長の糧に変えて勉学に励んだ。
   
 また、試験の課題として執筆した「ビジネスとSDGs」に関するエッセーでは、文章の内容や論理的な構成が評価され、“現地の学生でもなかなか取れない”と言われる高評価を獲得した。
   
 三浦さんは瞳を輝かせる。
 「留学を通して、自身の強みと課題がはっきりすると同時に、創大の学びは“世界基準”だと自信が持てました。今後も恩返しの思いで、後輩の道を開ける人材に成長していきます」
   

多彩な分野で活躍

   
 これまで、社会に多くの人材を輩出してきた中山ゼミ。卒業生は550人を超え、国内外の各種企業や、国際機関の職員、外交官、公務員、法曹界、大学教員など多彩な分野で活躍している。
   
 綿貫美幸さん(2019年卒業)は、日本を代表する総合電機メーカーの営業職として、社会・生活の基盤となる、安全で安定的な水環境の整備事業に携わる。
   
 「困っている人に貢献したい」という漠然とした思いを具体化してくれたのは、ゼミの学びだった。
   
 途上国の現状を学ぶ中、人々が何を必要とし、自分に何ができるのかをこの目で見たいと、3年の夏にインドの大学に留学。現地の友人たちの実家を訪れた際、同じ地域に住む家庭の間で、電気や水道の整備に大きな差があったことに胸が痛んだ。
   
 「電気がつけば夜も勉強できる。きれいな水が飲めれば長く健康でいられる。社会の基盤を開発することが、もう一歩進んだ人権保障につながると感じたんです」
   
 “開発のプロになる”と決め、テクノロジーの力で、社会の基盤構築と課題解決に取り組む現在の会社に就職。水環境の整備に携わるとともに、職場環境の向上を目指して、各部署の事業や社員の活躍を紹介する、社内ウェブサイトの立ち上げに参画。その貢献が評価され、昨年、社内表彰を受けた。
   
 綿貫さんは誓う。
 「世界の人々が安心して暮らせる生活の土台を築くため、創大で培った世界的な視野と人間主義の視座を生かして、社会の発展に貢献します」
   

夏には恒例のゼミ合宿で“研究発表大会”を実施。英知と友情をともに育めることもゼミの魅力の一つ
夏には恒例のゼミ合宿で“研究発表大会”を実施。英知と友情をともに育めることもゼミの魅力の一つ

   
 橋本優人さん(2012年卒業)は、国連職員として、ジンバブエやアフガニスタンに赴任し、調達・物流担当官として奮闘する。
   
 「中山ゼミで身に付けたリーガルマインド(法的思考力)は、人道支援の現場でも生きています。紛争は『善と悪』の争いではなく、それぞれの『正義と正義』のぶつかり合いです。だからこそ、人間主義を基調とした『正義と秩序のバランス』が重要なんです」
   
 母子家庭で育った橋本さんは、厳しい経済状況の中で、国立大学を受験するも不合格。母の願いで進学した創大で、創立者・池田先生の「大学は、大学に行けなかった人々のためにこそある」との信条に触れ、苦しむ人に尽くす人生を歩もうと誓った。
   
 卒業後、グローバル企業等でキャリアを積み、米デューク大学大学院修士課程(国際開発政策)とマサチューセッツ工科大学大学院修士課程(サプライチェーンマネジメント)を修了。現在、国連職員として人道支援の最前線を走る。
   
 「創大は“思った以上の自分”になれる場所です。“創価大学を世界一に”との誓いを果たすため、報恩の人生を歩み抜きます」
   
 母校を誇りに、一人一人が“今いる場所”で、価値創造の挑戦を続ける――これが、創大生の最大の特長ではないだろうか。
   
 「究極的には、世界を変えられるのは『人』しかいません」
   
 中山教授が感慨深く語る。
   
 「今までも、またこれからも、ゼミの目的は、平和のために行動する『世界市民の育成』という一点にあります。それは、華やかに活躍する人でも、大きな仕事をする人でもなく、本当に苦しんでいる人に寄り添いながら、共に成長の道を歩める、人間主義の人だと思います。私自身も、学生と共に、創立者・池田先生の平和思想を体し、教育と研究を通じて、平和の実現に全力を尽くします」
   

◆NEWS&TOPICS
創大・短大オープンキャンパス
5月3日(水・祝)、4日(木・祝)開催!

   
 創価大学、創価女子短期大学では、5月3日(水・祝)、4日(木・祝)に、オープンキャンパスを開催する。詳細は、各ホームページを参照。
 問い合わせは「創大アドミッションズセンター」〈042(691)4617〉、「創価女子短期大学入試事務室」〈042(691)9480〉まで。

 創価大学
   
 創価女子短期大学
   

創大・法科大学院 文科省の審査で私大トップに

   
 3月17日、文部科学省が法科大学院の機能強化を目的に実施する「令和5年度法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム」の審査結果を発表した。創大・法科大学院は、補助金の「配分率」で、一橋大学と京都大学の120%に次ぐ110%(大阪大学、早稲田大学と同率)となり、私立大学としてはトップの評価を得た。
   
 文科省が平成27年度予算から導入した同プログラムでは、司法試験合格率や入学者数等を指標に、法科大学院を3類型に分類して「基礎額」を決めるとともに、各法科大学院が提案した5年間の機能強化構想と実現への取り組みを評価し「加算額」を設定。この基礎額算定率と加算率を合わせて補助金の「配分率」を算出する。創大は、3類型で最高ランクとなる「第1類型」に入り、基礎額算定率は90%に。加算に関する総合評価は「A+」で、加算率20%を獲得し、配分率が110%となった。

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