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〈文化〉 使いにくいテクノロジー 速水健朗(ライター) 2026年5月14日

  • 本当の使いやすさとは
  • 使えない人の視点を取り入れる
速水さん
速水さん
淘汰され消える

 皆さんはセルフレジやタッチパネル式の券売機で困ったことはありませんか。
 どこをどう操作したらいいのか。目的の品物が表示されなかったり、ポイントカードの登録を求められたり、キャッシュレス決済の方法を聞かれたり。しかも、モタモタしていると後ろに並んでいる人に迷惑がかかりそうだし。中には、購入を諦めて、買わずに帰ってしまう人も。
 苦もなく利用している人もいるかもしれません。でも、多くの人は、これらの最近の機械が、使い勝手が良いとは、到底思えないはずです。
 いくら使いにくくても、回数を重ねれば慣れていくもの。それでも慣れない人は、自分ができないのは恥ずかしいと思ってしまう。特に、現代社会では、機械を扱うことと仕事が一致しています。つまり、機械操作ができないと、仕事ができないと思われてしまうのです。
 これらの機械は、コロナ禍で急速に全国に広まりました。そのため、ユーザーインターフェース(利用者の使いやすさ)に難があるのです。それでも導入されたのは、取りあえずこれを使って、対応しておこうという感じでしょうか。
 本来であれば、さまざまな方式・方法が生み出され、淘汰による競争原理で、良いものだけが残っているはず。その意味からすると、まだ定着したばかりで、これから洗練されていく技術と言えるでしょう。

規格化と独自化

 工業製品の歴史を見ると、一般的に工業製品が普及する中で、まず規格が統一化され、次に、自分たちの製品のシェアを伸ばすために特別化していきます。その中で、より普及したものが残っていくわけです。
 例えば、自動車。最初に、普及していく時、自動車メーカーのフォードは、どこでも手に入る規格化された部品を使っていました。ネジにしても、ごく一般的なネジ。そうして街の修理業者でも直せるようにしていたのです。
 また、車の操作方法は統一されています。右足はアクセル、真ん中がブレーキ、左がクラッチ。方向指示器の出し方も一緒です。これも普及していくための規格化なのです。
 しかし、普及してしまうと、今度は、性能やスタイルの競争になります。つまり独自化が進むわけです。
 私たちは、テクノロジーが社会を変えるという幻想を持っています。だからこそ、使いにくい機械も受け入れていかなければいけないと思い込んでいるのです。確かに、大きな流れは受け入れていくべきです。しかし、個々の機械は別です。
 例えば、電子マネー化が進んでいく、このような大きな流れは受け入れるしかありません。しかし、どの電子マネーを使うのかについては検討すべきです。今でも、交通系やペイペイ、クレカなど、いろいろな方式が混在し、全てが使い勝手が良いわけではありません。そこは淘汰されていくべきことなのです。

予約は必要か

 皆さんは、飲食店に行く時に、まず予約をしてから出かけますか。それとも、いきなり訪ねていきますか。最近は、予約をしてから出かけるのが主流のようです。満席で入れないことを避けられるし、店側としても仕入れの予定を立てやすいとか、調理のタイミングを計りやすいなどのメリットがあります。
 電話が登場して、人の家を訪問する際、事前に連絡をしてからというのが普通になりました。テクノロジーの進化によって、時間が効率的に使われるようになっていくのです。
 飲食店だけでなく、飛行機や新幹線、ホテルなどは、以前から予約して利用されています。確かに必要な場面は多い。でも、予約することは本当に必要なのでしょうか。
 予約ありきの社会だと、混雑していなくても、人気のない場所でも、取りあえず予約をしておくかという意識になります。昔のように、ふらっと出かけて店に入る、なんてことはできなくなります。
 確実に、予約ありきの社会に変化していく中で、その流れに乗れていない人たちには不利益になる場面が増えます。であるなら、それぞれの機械についても、もっと使いやすくする必要があるのではないかと思うのです。
 予約が前提となる社会は、仕組みとしては便利かもしれません。店側としては、事前にどのくらい集客があるのか想定できます。客側からしても、人気の店に待たずに入れるというメリットがあります。でも、この流れが進むと、事前に予約したものしか受け付けられなくなることになりかねません。
 そうなると緊急の対応は無理。商業的にいうと、アクシデントに弱い社会だと言えるでしょう。=談

 はやみず・けんろう 1973年、石川県生まれ。ライター、ポッドキャスター。コンピューター誌編集者を経て、フリーランスに。近著に『機械ぎらい 機械音痴のテクノロジー史』(集英社新書)がある。

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