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〈医療〉 閉経後に発症しやすくなる「子宮体がん」。早期で見つけやすいがんだといいますが… 2026年6月22日

  • 女性ホルモンのバランスの変化が発症に関与
  • 〈今日のポイント〉不正出血があれば婦人科へ

 がんの部位別罹患数で、女性の5番目に挙げられる子宮がんは、発生する部位によって「体がん」と「頸がん」とに分かれます。今回は「子宮体がん」について、エキスパートである大阪国際がんセンター婦人科の北井美穂部長に聞きました。

北井部長
北井部長
〈腫瘍〉子宮内膜に発生、肥満で起きやすく

 子宮の奥に位置する子宮体部の内側は、粘膜(子宮内膜)に覆われています。
 子宮内膜は、女性ホルモンの影響で受精卵の着床に備え厚くなります。着床がなければ、約4週に1回、剝がれ落ちます。これが月経です。子宮体がんのほとんどは、この子宮内膜に発生します。

 ――原因は?

 最大の原因は、女性ホルモンの乱れです。女性ホルモンには、子宮内膜の増殖を促すエストロゲンと、増殖を抑えるプロゲステロンがあります。この二つのバランスが崩れ、エストロゲンの働きが過剰になると子宮内膜が異常増殖し、がんが発生しやすくなります。
 遺伝性疾患(リンチ症候群)が原因で起こるケースも、まれにあります。
 かつてはアジア人に少なかったがんですが、食の欧米化による肥満の増加に伴って増えています。

 ――なぜ肥満になると発生しやすくなるのですか。

 脂肪が、エストロゲンを増加させる大きな要因だからです。私の実感として、患者の半分近くが肥満の方である印象です。
 不妊や更年期障害の治療で長年、エストロゲンを服用・蓄積してきた人や妊娠・出産経験がない人も、発症しやすくなります。
 プロゲステロンの分泌が低下する月経不順も、要因に挙げられます。
 喫煙や飲酒も、環境因子として挙げられます。

〈患者〉多くが閉経後、若者にも発症

 ――何歳ごろに起きやすくなるのですか。

 多くは閉経後に発症します。
 ただし、肥満や遺伝性疾患も原因になりますので、20代などの若年者に発症することも、まれにあります。私が診た最も若い患者さんは15歳です。

 ――症状は?

 最も多いのは不正出血です。下腹部痛やおりものの異常が起きる人もいます。

〈特徴〉初期症状で発見しやすい

 ――検診はありますか。

 子宮内膜の細胞をこすり取って行う検査(細胞診)はありますが、一定の割合で誤り(擬陰性)が発生して患者を見逃してしまうため、子宮体がんの定期的な検診は確立していません。
 ――早期に発見しにくいがんなのですね。
 いえ、検診がないだけで、ステージⅠという早期で見つけやすいがんです。
 分かりやすい初期症状があり、進行が比較的遅いからです。「子宮頸がん検診」の際、任意でエコー検査も行うとよいでしょう。子宮体部(子宮内膜)が厚くなっていることが検査で見つかり、それをきっかけに子宮内膜の組織検査を行い、体がんと診断されることがあります。子宮鏡による内膜ポリープの切除や検査で、がんが発見される場合もあります。ステージⅠなら5年生存率は95・7%で、Ⅱ・Ⅲでも73・2%です(Ⅳは20・1%)。まれに「転移しやすい」「悪性度が高い」型が存在するため、診断は慎重に行います。

子宮のがんは、体部に発生する「子宮体がん」と、頸部に発生する「子宮頸がん」に分かれる。発生部位だけでなく、原因も治療法も異なっている(イラスト提供:nenta/イメージマート)
子宮のがんは、体部に発生する「子宮体がん」と、頸部に発生する「子宮頸がん」に分かれる。発生部位だけでなく、原因も治療法も異なっている(イラスト提供:nenta/イメージマート)
〈手術〉腹腔鏡の適応、今月から拡大

 治療法は原則、手術で、子宮や卵巣、卵管を全摘します。進行度により周囲のリンパ節も切除しますが、下半身のむくみといった副作用リスクが上がります。
 初期の子宮体がんでは、開腹手術に加えて、体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術も行われています。今月1日から、子宮体がんに対する腹腔鏡やロボット支援手術の適応が拡大され、一部の中間リスク症例や傍大動脈リンパ節郭清を伴う手術も保険適用となりました。また、転移の有無を調べる生検も保険適用となり、不必要なリンパ節切除を減らせる可能性が出てきました。
 脂肪が障壁となって手術が難しくなる肥満の患者が多い病でもあり、体の負担を減らせる手術が広がることは朗報です。
 術後は、取り除いたがんの病理検査などから再発リスクを検討し、抗がん剤などの薬物療法を追加するかどうかを判断します。
 初期であれば術後の再発は少ないがんです。進行再発症例の場合は、近年、従来の化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用で高い治療効果が示され、治療成績が向上しています。
 なお、放射線で治療するケースは少なく、高齢や高度肥満のために手術できない方などに行う程度です。

〈妊娠〉可能性残す薬物療法も

 ――子宮を取りたくない患者に対する治療は、どうするのでしょうか。
 若い患者さんでは、将来の妊娠を希望し、子宮の温存を望むケースもあります。
 早期で一定の条件を満たす場合には、子宮を摘出せずに高用量の黄体ホルモン製剤による治療を行い、妊娠の可能性を残せることがあります。
 ただし、血栓症や体重増加などの副作用に加え、再発する可能性もあります。治療法の選択は、主治医と十分に相談し、慎重に検討する必要があります。

〈取材こぼれ話〉惑わされずに

 無秩序に増殖する一方で、消滅するものもあるがん細胞。北井先生いわく「代表的な症状である不正出血は、消滅したがん細胞を子宮が排出しているともいえます。“死んだ細胞を出す”という意味で、月経と同様の働きですが、がん細胞が存在・増殖している証しでもあります」と。
 「閉経前の女性は、知り合いから『更年期には不正出血はよくあるから』と言われて受診が遅れ、早期発見できないケースが多くみられます。そういった科学的根拠のない情報を、うのみにすることは危険です。更年期であっても、月経か不正か迷うような出血や、慢性的な痛みがあれば、ためらわず婦人科へ」と、先生は訴える。
 ◇ 
 善意があろうとなかろうと、ちまたに溢れる、医学的裏付けのない情報。体の異変が気になったら、それらに惑わされず、病院の扉をたたくことが肝要だ。医学的裏付けを持った医師らが、その扉の先に待っている。(聡)

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