〈新連載〉 わたしの「そろそろ」はまだまだ。 #アラサー #そろまだ。
〈新連載〉 わたしの「そろそろ」はまだまだ。 #アラサー #そろまだ。
2024年12月14日
- コラムニスト・ジェラシーくるみさん 「自分らしさは“着脱可能”なもの」
- コラムニスト・ジェラシーくるみさん 「自分らしさは“着脱可能”なもの」
30歳前後の「アラサー」は、結婚、出産、転職、留学など、「人生の次のステップ」へ踏み出す機会が多い年代。「自分はこのままでいいのか」「本当にやりたいことは何か」といった漠然とした不安や焦りにさいなまれるこの時期は「クオーターライフクライシス(QLC)」と呼ばれ、近年、関心が高まっています。
電子版新連載「わたしの『そろそろ』はまだまだ。」では、アラサー世代のさまざまな生き方を紹介していきます。
日々、社会や家庭の中でプレッシャーという名の「北風」にさらされながら、「自分らしく」という言葉の意味が分からなくなってしまったあなたへ、「意外とわたしだけじゃない」と感じてもらえる「太陽」になれれば、幸いです。
初回は「お昼はしがない会社員、夜はコラムニスト」として活動する、ジェラシーくるみさんにインタビュー。同世代だからこそ分かる悩みや、その向き合い方について聞きました。
30歳前後の「アラサー」は、結婚、出産、転職、留学など、「人生の次のステップ」へ踏み出す機会が多い年代。「自分はこのままでいいのか」「本当にやりたいことは何か」といった漠然とした不安や焦りにさいなまれるこの時期は「クオーターライフクライシス(QLC)」と呼ばれ、近年、関心が高まっています。
電子版新連載「わたしの『そろそろ』はまだまだ。」では、アラサー世代のさまざまな生き方を紹介していきます。
日々、社会や家庭の中でプレッシャーという名の「北風」にさらされながら、「自分らしく」という言葉の意味が分からなくなってしまったあなたへ、「意外とわたしだけじゃない」と感じてもらえる「太陽」になれれば、幸いです。
初回は「お昼はしがない会社員、夜はコラムニスト」として活動する、ジェラシーくるみさんにインタビュー。同世代だからこそ分かる悩みや、その向き合い方について聞きました。
――2000年代以降にイギリスで登場したといわれる「クオーターライフクライシス」との言葉ですが、近年、日本でも着目されるようになりました。
「クオーターライフクライシス」とは、人生の4分の1(クオーター)が過ぎる20代後半から30代前半に訪れる「モヤモヤ期」です。他人との比較や、理想の生き方と現実のギャップに落ち込み、不安や焦燥感を抱える時期を指します。私自身、20代中盤から、結婚や“妊活”、転職や人間関係の悩みを多く聞くようになり、“世代特有の悩みがあるのでは”と調べてみたところ、「クオーターライフクライシス」を知りました。
私たちの母親世代は、仕事と子どもは二者択一の時代で、子どもを持つ母親が会社経営や会社役員なんて夢物語でした。普段関わる人は自分と似たような境遇の人が多く、得られる情報も限られていました。しかし、今は違います。SNSを通じて、違うコースを走る人の様子や生活が見えてきます。
さらに、女子会に行くと、他人の失敗例や成功例を挙げて、本人は行動していないのに、「この場合は~」と言いながらシミュレーションを始める人もいる。「もっと知って自分の将来に備えたい」と情報を集めれば集めるほど、多様化した選択肢の中で迷ってしまいます。
――2000年代以降にイギリスで登場したといわれる「クオーターライフクライシス」との言葉ですが、近年、日本でも着目されるようになりました。
「クオーターライフクライシス」とは、人生の4分の1(クオーター)が過ぎる20代後半から30代前半に訪れる「モヤモヤ期」です。他人との比較や、理想の生き方と現実のギャップに落ち込み、不安や焦燥感を抱える時期を指します。私自身、20代中盤から、結婚や“妊活”、転職や人間関係の悩みを多く聞くようになり、“世代特有の悩みがあるのでは”と調べてみたところ、「クオーターライフクライシス」を知りました。
私たちの母親世代は、仕事と子どもは二者択一の時代で、子どもを持つ母親が会社経営や会社役員なんて夢物語でした。普段関わる人は自分と似たような境遇の人が多く、得られる情報も限られていました。しかし、今は違います。SNSを通じて、違うコースを走る人の様子や生活が見えてきます。
さらに、女子会に行くと、他人の失敗例や成功例を挙げて、本人は行動していないのに、「この場合は~」と言いながらシミュレーションを始める人もいる。「もっと知って自分の将来に備えたい」と情報を集めれば集めるほど、多様化した選択肢の中で迷ってしまいます。
25~30歳のユーザーが検索した、「クオーターライフクライシス」に関係するワード(ヤフー・データソリューション)
25~30歳のユーザーが検索した、「クオーターライフクライシス」に関係するワード(ヤフー・データソリューション)
――著書の一つ『そろそろいい歳というけれど』の“いい歳”が指すのは“30歳”の区切りですが、私たちはなぜ無意識に“30歳”のボーダーを引いてしまうのでしょうか。
合コンやマッチングアプリ、結婚相談所においても、29歳、30歳あたりからガクッとマッチする人が減る、なんてことはよく耳にしますよね。私自身、30歳が近づくにつれ、「結婚してぇ」ではなく「結婚……してぇのか? できるのか?」という疑問符付きの感情に出合いました。私たちの世代は、さまざまな場面で「私らしさ」や「個性」を強調されてきませんでしたか? 一方で、どこか旧来の「女性らしさ」という価値観にもしばられている。だからキツい(笑)。結果、自分の振る舞いやライフイベントにおいて「年相応」を過度に気にしてしまいがちです。
20代後半の私の知人は、彼氏の浮気が発覚した時に、「罰として結婚しろ」と迫ったそうです。話を聞いてみると、大学の同期6人の中で未婚が半数だったのですが、知人より後に交際を始めた人が、“ポンッ”と先に結婚したみたいで、彼女も彼女で焦っていたんです。「この人を逃すと30歳までに結婚できないんじゃないか」みたいな。
私自身、入社して間もない頃、未婚の先輩を見て「あの人、なんでまだ結婚してないんだろう」と疑問を持ったこともありましたが、浅はかでした。数年たって、「私は独身でもいいけれど、後輩から『あの先輩、癖が強いから結婚できない』と思われないか」と不安が募って……。要するに、「幸せでいたい」と「ちゃんと幸せに見られたい」はかなり近い場所にあったんだと気付きました。
「結婚」「キャリアアップ」「子持ち」「資産形成」……迫るボーダーまでにこの中からいくつ獲得できるか、といった社会や自分がつくりあげた分かりやすい「バッジ」で、すぐ自分や他人をジャッジする癖がついているんですよね。無数に存在するジャッジの目線が、ボーダーをつくりあげる一つの要素になっているのかもしれません。
――著書の一つ『そろそろいい歳というけれど』の“いい歳”が指すのは“30歳”の区切りですが、私たちはなぜ無意識に“30歳”のボーダーを引いてしまうのでしょうか。
合コンやマッチングアプリ、結婚相談所においても、29歳、30歳あたりからガクッとマッチする人が減る、なんてことはよく耳にしますよね。私自身、30歳が近づくにつれ、「結婚してぇ」ではなく「結婚……してぇのか? できるのか?」という疑問符付きの感情に出合いました。私たちの世代は、さまざまな場面で「私らしさ」や「個性」を強調されてきませんでしたか? 一方で、どこか旧来の「女性らしさ」という価値観にもしばられている。だからキツい(笑)。結果、自分の振る舞いやライフイベントにおいて「年相応」を過度に気にしてしまいがちです。
20代後半の私の知人は、彼氏の浮気が発覚した時に、「罰として結婚しろ」と迫ったそうです。話を聞いてみると、大学の同期6人の中で未婚が半数だったのですが、知人より後に交際を始めた人が、“ポンッ”と先に結婚したみたいで、彼女も彼女で焦っていたんです。「この人を逃すと30歳までに結婚できないんじゃないか」みたいな。
私自身、入社して間もない頃、未婚の先輩を見て「あの人、なんでまだ結婚してないんだろう」と疑問を持ったこともありましたが、浅はかでした。数年たって、「私は独身でもいいけれど、後輩から『あの先輩、癖が強いから結婚できない』と思われないか」と不安が募って……。要するに、「幸せでいたい」と「ちゃんと幸せに見られたい」はかなり近い場所にあったんだと気付きました。
「結婚」「キャリアアップ」「子持ち」「資産形成」……迫るボーダーまでにこの中からいくつ獲得できるか、といった社会や自分がつくりあげた分かりやすい「バッジ」で、すぐ自分や他人をジャッジする癖がついているんですよね。無数に存在するジャッジの目線が、ボーダーをつくりあげる一つの要素になっているのかもしれません。
――不安を抱えているからこそ、分かりやすい「バッジ」に飛びついてしまう……記者の心がチクッとします。同世代の友人からは、「ロールモデルがいない」との発言をよく耳にします。クオーターライフクライシスに悩む人たちと、このような発言は何か関係があるのでしょうか。
25歳前後の頃、女子会で近い将来の話をする時に、「ロールモデルいなくない?」と、耳にたこができるくらい聞きましたし、私も言っていました。「ロールモデル」とは、「行動や考え方の模範となる人物」のこと。身近に目を向けると、会社では重責を担い、部下をマネジメントし、帰宅して小学校に入りたての子どもの世話。けれどその大半の女性はいつも疲れていて、しんどそう。
もちろん、いつもハッピー!みたいな女性もいますが、開業医の夫と2馬力で働き、シッターさんを雇える経済的余裕の持ち主、体力おばけの体育会系ワーキングママなど「例外」な人たちばかり。私はそんな猛者になれる自信はないです(笑)。つまり、理想となる人はいるけれど、「自分でも大丈夫かも!」と思える“手の届きそうな人”たちが見つからないんですよね。
そんな文句を垂れていた私が、会社の同期と仕事終わりに日本酒を片手に、少し先の未来について会話していた時、思いがけないひとことをもらいました。
「今の日本って、独身でも専業主婦でも働く女性でも、女性が普通に生きてるだけで全部“意思表明”になるよね。これから何年、何十年かけて制度や世論が変わっていく中で、必ず誰かの参考になる」
自分の“ずるさ”に気付くには十分な衝撃でした。環境や自分自身を変える覚悟もないのに、誰かが手探りで紡いだ物語を、都合よく一段落だけコピペ(コピー&ペースト)しようとしていた。全く一緒なんて不可能なのに。結局、昔も今もちょうどいい「ロールモデル」なんていません。だから、先を見据えて、先人の背中を見て様子をうかがうより、自分の目の前にあることを手触り感を持って知ること、「ちょうどいい未来」より「私の欲しいもの」を自分に問い続けるほうが、納得のいく人生を送ることができる気がします。
――不安を抱えているからこそ、分かりやすい「バッジ」に飛びついてしまう……記者の心がチクッとします。同世代の友人からは、「ロールモデルがいない」との発言をよく耳にします。クオーターライフクライシスに悩む人たちと、このような発言は何か関係があるのでしょうか。
25歳前後の頃、女子会で近い将来の話をする時に、「ロールモデルいなくない?」と、耳にたこができるくらい聞きましたし、私も言っていました。「ロールモデル」とは、「行動や考え方の模範となる人物」のこと。身近に目を向けると、会社では重責を担い、部下をマネジメントし、帰宅して小学校に入りたての子どもの世話。けれどその大半の女性はいつも疲れていて、しんどそう。
もちろん、いつもハッピー!みたいな女性もいますが、開業医の夫と2馬力で働き、シッターさんを雇える経済的余裕の持ち主、体力おばけの体育会系ワーキングママなど「例外」な人たちばかり。私はそんな猛者になれる自信はないです(笑)。つまり、理想となる人はいるけれど、「自分でも大丈夫かも!」と思える“手の届きそうな人”たちが見つからないんですよね。
そんな文句を垂れていた私が、会社の同期と仕事終わりに日本酒を片手に、少し先の未来について会話していた時、思いがけないひとことをもらいました。
「今の日本って、独身でも専業主婦でも働く女性でも、女性が普通に生きてるだけで全部“意思表明”になるよね。これから何年、何十年かけて制度や世論が変わっていく中で、必ず誰かの参考になる」
自分の“ずるさ”に気付くには十分な衝撃でした。環境や自分自身を変える覚悟もないのに、誰かが手探りで紡いだ物語を、都合よく一段落だけコピペ(コピー&ペースト)しようとしていた。全く一緒なんて不可能なのに。結局、昔も今もちょうどいい「ロールモデル」なんていません。だから、先を見据えて、先人の背中を見て様子をうかがうより、自分の目の前にあることを手触り感を持って知ること、「ちょうどいい未来」より「私の欲しいもの」を自分に問い続けるほうが、納得のいく人生を送ることができる気がします。
――まず、自分の感覚を手の中に取り戻すことが大切なんですね。これから私たちが、クオーターライフクライシスとうまく付き合っていくヒントは何でしょうか。
執筆活動をする中で、20~40代女性のお話を伺う機会が多くありました。彼女たちとの対話を通して、社会的に、暗黙のうちに共有され、自分の中に刷り込まれた「幸せ」や「正解」が浮き彫りになったんです。それでも、手探りで行き着いた「現在地」を、肯定できるようになった女性たちと出会い、だいぶ息がしやすくなりました。
「現在地」が時間の経過とともに変わるように、自分の感覚や特性が変わることもあるかもしれない。だから私は、「自分らしさ」を“着脱可能”なものとして捉えています。「仕事で結果を出したい」と思っている時は、仕事へのモチベーションが上がっている時だけれど、それが下がることもあります。別のモチベーションが上がれば、その波に乗ってもいい。多様化した選択肢の中から無理に「自分らしさ」を追求するより、「自分らしさ」を多様化しちゃえばいいんです。
とはいえ、すっきりそう思えない時は、私は携帯のメモに“モヤモヤ”を言語化しています。言語化はどんな問題でも扱えるようにするための第一歩だと捉えています。
例えば、大掃除の時だったら、家にあるものいったん全てリビングに出してみれば、まずは可視化されます。しかし悩みは、手を伸ばして奥に突っ込んでも、全然届かないような感覚になる。だから、自分の腕の長さとか、はまっている穴の深さを把握するための作業が私にとっての言語化です。書くことだけでなく、女子会とか、同僚との愚痴大会とか、おしゃべりも言語化に当てはまります。
今回の記事を通して、同じ時代を生き、同じように思い悩む、記事の先のあなたとの“おしゃべり”が、新たな道への扉にはならなくても、小さな窓くらいになればうれしいです。
――まず、自分の感覚を手の中に取り戻すことが大切なんですね。これから私たちが、クオーターライフクライシスとうまく付き合っていくヒントは何でしょうか。
執筆活動をする中で、20~40代女性のお話を伺う機会が多くありました。彼女たちとの対話を通して、社会的に、暗黙のうちに共有され、自分の中に刷り込まれた「幸せ」や「正解」が浮き彫りになったんです。それでも、手探りで行き着いた「現在地」を、肯定できるようになった女性たちと出会い、だいぶ息がしやすくなりました。
「現在地」が時間の経過とともに変わるように、自分の感覚や特性が変わることもあるかもしれない。だから私は、「自分らしさ」を“着脱可能”なものとして捉えています。「仕事で結果を出したい」と思っている時は、仕事へのモチベーションが上がっている時だけれど、それが下がることもあります。別のモチベーションが上がれば、その波に乗ってもいい。多様化した選択肢の中から無理に「自分らしさ」を追求するより、「自分らしさ」を多様化しちゃえばいいんです。
とはいえ、すっきりそう思えない時は、私は携帯のメモに“モヤモヤ”を言語化しています。言語化はどんな問題でも扱えるようにするための第一歩だと捉えています。
例えば、大掃除の時だったら、家にあるものいったん全てリビングに出してみれば、まずは可視化されます。しかし悩みは、手を伸ばして奥に突っ込んでも、全然届かないような感覚になる。だから、自分の腕の長さとか、はまっている穴の深さを把握するための作業が私にとっての言語化です。書くことだけでなく、女子会とか、同僚との愚痴大会とか、おしゃべりも言語化に当てはまります。
今回の記事を通して、同じ時代を生き、同じように思い悩む、記事の先のあなたとの“おしゃべり”が、新たな道への扉にはならなくても、小さな窓くらいになればうれしいです。
“人生”という森を進んでいるけど、なんだかモヤモヤする……というあなた、一緒におしゃべりしませんか? ジェラシーくるみさんを招いて“オンライン女子会”を行います。
【日時】2024年12月22日(日)午前11時~12時
【パネリスト】ジェラシーくるみさん
【開催形式】オンライン(Zoom)
【参加方法】下記のURLからグーグルフォームで申し込み。完了後に事務局からメールでイベント情報が届く。
グーグルフォームURL
https://x.gd/rIIC4
【内容(予定)】
①ジェラシーくるみさんのおはなし(約15分)
②モヤモヤを聞いてみよう!質問会(約20分)
応募フォームから事前に質問を受け付けます。当日も、チャット機能を使って質問でき、聞くだけの参加も可能です。
●ご感想をお寄せください
youth@seikyo-np.jp
“人生”という森を進んでいるけど、なんだかモヤモヤする……というあなた、一緒におしゃべりしませんか? ジェラシーくるみさんを招いて“オンライン女子会”を行います。
【日時】2024年12月22日(日)午前11時~12時
【パネリスト】ジェラシーくるみさん
【開催形式】オンライン(Zoom)
【参加方法】下記のURLからグーグルフォームで申し込み。完了後に事務局からメールでイベント情報が届く。
グーグルフォームURL
https://x.gd/rIIC4
【内容(予定)】
①ジェラシーくるみさんのおはなし(約15分)
②モヤモヤを聞いてみよう!質問会(約20分)
応募フォームから事前に質問を受け付けます。当日も、チャット機能を使って質問でき、聞くだけの参加も可能です。
●ご感想をお寄せください
youth@seikyo-np.jp