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〈SDGs×SEIKYO〉 リユース業界の異端児・三浦哲郎さんに聞く! 未来を設計する力 2026年2月28日

2:43 ※エラーになってしまう時はYoutubeでご覧ください

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今回のテーマは「つくる責任 つかう責任」

 捨てるのが当たり前だった時代が、静かに終わりつつある。日本中に眠る「使われない財産」に光を当て、循環する経済をつくるーー。異端児と呼ばれながらリユース(再使用)業界の壁を打ち破ってきた鑑定士であり、現在、リユース事業グループ・トリアイナの会長を務める三浦哲郎さんが今、若者に問いかける。「あなたは、自分の未来を本気で想像したことがあるか」と。

 ――三浦さんにとって、リユースとはどのような仕事なのでしょうか。

 単に、物を買い取って売る仕事ではありません。「価値を見極める仕事」だと思っています。

 日本には、使われないまま眠っている財産が数多くあります。市場全体では100兆円規模ともいわれていますが、多くの人は、それを資産だと認識していない。使わなくなった瞬間に、「不要な物」だと考えてしまうからです。

 でも、価値が消えたわけではありません。必要としている人が、別の場所にいるだけなんです。私たちの役割は、持ち主と市場をつなぎ直すことにあります。

 現在は出張・店頭買い取りを起点に、企業間オークション、国内外販売、海外向けライブ販売まで一貫して手がけています。仕入れから販売までを自社で担うことで、物の価値をより正確に判断できる仕組みをつくってきました。

 ――三浦さんは19歳の時に飛び込みで入社した会社で営業職に就き、その後、独立しました。リユース業界に参入したきっかけは?

 もともとは店舗設計や集客の仕組みづくりをしていました。2009年に大手買い取り店の出店支援をした際、市場を調査したら、日本に巨大な未開拓市場があると分かったんです。
 
 当時、日本には数十兆円規模の資産が眠っているのに、流通はほんの一部でした。これは単なるビジネスではなく、社会の構造そのものが変わる産業になると思った。それでやっていた事業を全て譲ってリユースに集中しました。

■追い風では、実力は育たない

 ――参入当初の業界はどのような状況でしたか。

 かなり閉鎖的でした。新規参入者は信用されず、市場に出した商品が買われないこともありました。でも、構造が古いということは、変えられる余地があるということです。ノウハウをマニュアル化して他社にも公開しました。1社だけ成長しても業界は変わらない。業界全体が成長し、仲間が増えることで制度や法律も動き始めました。

 市場には追い風があります。でも追い風って怖いんですよ。市場が伸びているだけで、自分が成長したと錯覚してしまう。
 
 私は水泳に例えるんですが、前に進むほど水の抵抗は強くなる。でも抵抗が強いほど筋力がつき、推進力になる。だからあえて向かい風の方向を選びます。それは新規事業でも同じです。近年は年間で10社近く、会社を立ち上げたり、関わったりしていますが、基本的には「困っている経営者」を探しています。

 ――え? うまくいっている会社への投資ではなくてですか?

 普通はそう思いますよね。でも、私は逆で、銀行も貸さない、投資家も見放しているような会社に関わることが多い。最近も大阪で、経営が厳しくなったフィットネスクラブの相談を受けて立て直しに入りました。
 
 ゼロから会社を作るより、立て直しの方が価値があると感じています。そこには雇用がありますよね。5人でも10人でも働いている人がいるなら、倒産させるより、もう一度再生させたい。

 マイナスの状態にある人のエネルギーって、ゼロから始める人より強いんです。借金を背負って資金がショート寸前の経営者は、本気で変わろうとする。問題も自分の弱点も理解しているから改善が早い。
 
 実際、借金を抱えた状態から1、2年で数億円規模の会社に成長したケースもあります。先週も打ち合わせをした社長は、株式価値が一年で数億円規模まで回復しました。

 ――向かい風にこそ大きなエネルギーがあるんですね。扱う業種は決めているんですか?

 いや、特に。養蜂場にも投資しましたし、キャビア養殖にも関わっています。一見、リユースと関係ないように見えますが、全ては循環する経済をつくるためです。

 リユースは、特定のターゲットが存在しない産業なんです。年齢や職業、所得層を問わず、社会のほぼ全ての人が関わり得る。だから一次産業からITまで、あらゆる業態とつながることができる。

 それに、正直、勉強にもなる。自分の専門だけを見ていると、視野はどんどん狭くなる。全く違う産業に関わることで、経済の仕組みや人の動き方が見えてくるんです。

 経営って結局、人と社会を理解する仕事だと思っています。知らない世界に入るほど、自分の判断の精度が上がる感覚がありますね。

■「将来なりたい仕事」に

 ――鑑定士を育成するための学校も運営していると伺いました。鑑定士の国家資格化も目指しているそうですね。

 鑑定士という仕事は、大学生の進路の選択肢として、まだ十分に認知されていません。弁護士や税理士に比べると、職業像そのものが知られていないんです。

 でも、実際にやっていることは近いんです。資産を査定し、現金化し、相続や税務にも関わる。買い取りの際には税務申告の必要性も説明し、支払い調書も提出します。

 こうした対応をきちんとできる鑑定士は、社会に必要な存在です。リユースの社会的地位を高めるためにも、資格制度は欠かせないと思っています。優秀な若い人が「将来なりたい仕事」として選べる職業にしたいんです。

■リユースがつくる未来のインフラ
三浦さんの著書である『37兆円の地図』(ゴマブックス)
三浦さんの著書である『37兆円の地図』(ゴマブックス)

 ――今後のリユース事業の構想についても聞かせてください。

 長期的には、わざわざリユースショップに足を運ばなくても、コンビニエンスストアなどに物を持ち込めば、その場で査定ができるような仕組みをつくりたいと考えています。

 消費者は不要になった物をすぐ換金でき、私たちはそれを海外へ輸出して価値を生み出す。物が循環し、経済も回る。そうしたインフラを、日本で10年かけて構築していくのが目標です。

 リユースは単なる中古ビジネスではありません。知識と流通網を生かせば、資源問題や廃棄ロスといった社会課題の解決にも貢献できる産業だと思っています。

■「手放す時」から考える消費

 ――私たちは、物とどのように向き合っていけばよいと考えていますか。

 何かを買う時に、リセール価格(手放す時の価値)まで考えて購入する習慣を持ってほしいですね。これまでは「使い終わったら捨てる」という発想が当たり前でしたが、これからは「この物は将来いくらで売れるか」を考えながら消費することが大切だと思います。
 
 車を買う時に中古価格の下落幅を調べる人は、賢い消費者です。同じ発想を日常の買い物にも広げることで、実質的な手取り収入を増やすことができます。

 物を「使い捨て」ではなく、「循環するもの」として捉える。それがSDGsの掲げる「つかう責任」にもつながるのではないでしょうか。

■人生を「監督」と「主演」で考える

 ――三浦さんの考え方の原点には、どのような経験があったのでしょうか。

 子どもの頃の経験が大きいと思います。父は不動産業をしていて、当時は比較的ゆとりのある生活をしていました。ただ、バブル崩壊をきっかけに状況が一変し、家計は厳しくなりました。

 それまで当たり前だった暮らしが続かなくなり、物事の見え方が変わりました。同時に、学校でも周囲との違和感を強く感じるようになったんです。「みんながそうしているから」という理由に納得できず、興味を持てない授業では席を立ってしまうこともありました。周囲からは少し変わった生徒に見えていたと思います。

 でも、反抗していたわけではなく、「なぜそれをやるのか」を理解したかっただけなんです。納得できたことには自然と努力できるし、自分で選んだことなら最後までやり切れる。その経験から、「自分の選択には自分で責任を持つ」という感覚が少しずつ強くなっていきました。

 ――三浦さんのように常に挑戦の心を忘れないために、大切なことは何でしょうか。

 私自身、行動力があるわけではないと思っています。人は放っておくと怠けるし、楽な方向へ流れる。だから意志の強さに頼らないようにしているんです。

 私は、自分の中に「監督」と「主演」がいると考えています。監督の自分は、人生の設計をする役割です。「5年後どうなっていたいか」「どんな生活を送りたいか」「今日は何を優先するか」を先に決める存在ですね。一方で主演の自分は、その設計された物語を実際に生きる役割です。

 例えば朝、やる気が出ない日がありますよね。普通はその日の気分で「今日はやめておこう」と判断してしまう。でも、監督の自分がすでに「こういう生活を続ける」と決めているなら、主演はそれに従って動くだけなんです。

■「年収1000万円」の先にあるもの

 ――若い読者に向けて、仕事選びのアドバイスをお願いします。

 面接で学生に「将来どのくらい稼ぎたい?」と聞くと、「年収1000万円くらい」と答える人が多いんです。それ自体は悪いことではありません。目標を持つのは大切ですから。
 
 ただ、「その時、手取りはいくらになるのか」「どんな暮らしをしたいのか」「家族や時間の使い方をどう考えているのか」と話を進めていくと、急にイメージが止まってしまうことが多い。実際に、そこまで具体的に答えられる学生は、100人に1人いるかどうか、という感覚です。だからこそ、1年のうち1日でいいので、自分の人生を具体的に想像する時間をつくってほしいんです。

 5年後、どんな場所で、どんな人と働いて、どんな一日を過ごしていたいのか。そこから逆算すると、「どの会社に入るか」も、「何を学ぶか」も意味が変わってきます。
 
 30年先は誰にも分かりません。でも5年なら設計できる。未来を想像する時間の長さと、実現できる確率は比例すると私は思っています。

【プロフィル】
 みうら・てつろう リユース事業グループ・トリアイナの会長。一般社団法人全日本古物鑑定士協会代表理事。2010年にリユース業界に参入し、現在では15社を束ねるグループを率いる。2027年までに時価総額1000億円の企業づくりをビジョンにリユースの領域で幅広く活躍中。鑑定士養成学校「EyeJob」の運営など、業界の健全化と人材育成にも力を注いでいる。

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