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〈ヒューマン〉 革靴職人 菱沼乾さん 2025年9月4日

  • 履き心地と
  • 造形美の魅力――
  • それを追求したい。

 〈2024年、英国のロンドンで行われた革靴作りの世界大会に出場した菱沼乾さんは、最年少の世界チャンピオンになった〉

 ――優勝おめでとうございました。

 ありがとうございます。この大会では、主に定められたルールの中で表現する造形美やデザイン性などが問われます。私は、独自の構造を取り入れることを意識しました。
 この時は、土踏まずのソールをあえてなくした世界初の構造に挑戦しました。また、木型に合わせたデザインや、手縫いの美しさ・正確さにも徹底的にこだわりました。

 ――大会では造形美が重視されますが、普段の靴作りでは、履き心地も大切ですね。

 もちろんです。普段はオーダーメードの革靴を作っていますが、履き心地の8割は靴作りの基礎となる木型で決まります。お客さまの足に合わせた木型に細かい調整を重ね、その人の足が一番動きやすい形にしていきます。そうして作られた革靴は、骨格レベルで足にぴったりと合い、これ以上にない履き心地になります。

 ――革靴の魅力とは?

 まず、造形美です。スニーカーには出せない曲線や立体感は見ているだけで美しい。
 次に、履き心地です。革靴は硬くて靴ずれを起こすようなイメージを持たれがちですが、実際には硬さが原因ではありません。サイズや作りが、足に合っていないことが問題なんです。
 また、製法によって革を柔らかく仕上げることも可能で、支えるべきところは硬くし、動きの大きい部分は柔らかくできる。さらに革はなじみやすい性質もあり、その人の足の動きに沿った形になじんでいきます。加えて、革は吸湿性に優れ、汗を吸い取り、蒸れを防いでくれます。手入れをすれば、20年、30年以上、長く快適に履けるのが革靴なんです。

 ――今後の目標を教えてください。

 履き心地はもちろん、革靴の持つ芸術性を追求したいと思っています。
 革靴は、足の形から生まれる立体的な造形美を持っています。そんな芸術性をさらに高めたい。コンセプトカーが新しい車を生み出すように、革靴の芸術性の追求が、実用的な靴に新しいデザインや技術を生み出す。革靴の文化や価値そのものを高めていくと信じています。(浅)

 〈プロフィル〉
 1994年、神奈川県生まれ。2021年にオーダーメードの革靴ブランドである「キッシュザワーク」を設立。2024年、英国のロンドンで行われた革靴作りの世界大会で第1位に輝いた。

〈MEMO〉
 菱沼さんは、革靴を「記憶装置」と表現する。
 その時々の場面や状況に合わせて選んだ一足には、その日の思い出や経験が刻まれる。だから、ふと革靴を見た時、「履いた日の思い出がよみがえる」ことも。自分自身の人生の思い出を刻む「記憶装置」として、革靴を選んでみてはいかがだろうか。

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