• ルビ
  • シェア
  • メール
  • CLOSE

〈教育〉 家庭で“コミュ力”を伸ばす 2025年4月3日

自分も他人も尊重する心が根本
自尊他尊コミュニケーター 「ことばキャンプ」創業者 髙取しづかさん

 最近よく耳にする“子どものコミュ力(コミュニケーション能力)”。どうすれば身に付くのでしょうか。家庭で子どものコミュ力を伸ばすためのポイントについて、「ことばキャンプ」の創業者で、自尊他尊コミュニケーターの髙取しづかさんに聞きました。

 
■話すことより聞くこと

 友達といい関係を築く、大人になって仕事をするなど、生きていく上でコミュニケーション能力は欠かせません。そんなコミュニケーションには二つの側面があります。

 一つは、自分の気持ちを大事にして相手に伝える、つまり自分を尊重する側面。もう一つは、相手の気持ちを大事にして話を聞く、つまり他人を尊重する側面です。

 この「自尊」と「他尊」のどちらか一方だけでは、良好なコミュニケーションは取れません。両方をバランスよく持つことが大切です。“自分も他人も尊重する心”が根本にあれば、コミュニケーションのスキルはどんどん身に付きます。

 コミュ力と聞くと、話し方や伝え方に意識が向く人が多いかもしれません。しかし、ことばキャンプでは「話す力」より「聞く力」を優先して練習しています。まず「聞く」ことが相手に対する尊重なんですよね。

 子どもだけでなく親にも「聞く耳モード」を伝えています。聞く耳モードとは、①相手と目を合わせて②「うんうん」とうなずきながら③笑顔で④おへそを相手に向けて⑤さえぎらずにおしまいまで聞く、の五つを意識することです。

 聞く姿勢が身に付いてきたら今度は、自分の話を聞いてもらう体験をたくさんします。「ここだったら何を言っても大丈夫」と思える環境をつくり、話してもらいます。それは、子どもの言葉を引き出す上で大切な土台です。慣れないうちは、自分の気持ちを言う時、ドキドキするものです。「そうなんだ」「そう思ったんだね」と、子どもの言ったことを否定せず、安心感を与えるように心がけます。

 相手が途中で口を挟まずに、じっくり聞いてくれると、話しやすくて“心地いい”ものです。自分が「尊重」された感覚を味わうことで、人の話も「尊重」して聞けるようになってくるのです。

 
■「どっちにする?」ゲーム

 話す力を身に付けるには、自分が何を感じているのかを言葉にしてみることから始めましょう。ことばキャンプでは「どっちにする?」ゲームを毎回しています。例えば「パンとご飯、どっちにする?」「犬と猫、どっちが好き?」と二者択一で選んでもらい、その上で「どうしてかっていうと」と選んだ理由も言ってもらいます。

 ポイントは、「どっちでもいい」は却下。今の気持ちで答えてもらうこと。問いかけられると、子どもは自分の心をのぞき「自分はどう思っているのか」を決めて「どうしてかっていうと」と言語化することに慣れてきます。自分なりの考えを論理的にまとめて伝える練習になります。ただ、どうしても決められない場合は「難しいね」「両方好きなんだね」とフォローしましょう。無理に答えを迫らないようにしてくださいね。

 ご家庭の会話に「どっちにする?」を、取り入れてみてください。初めは遊びのようにやってもいいですね。お互いの気持ちが分かって、楽しいですよ。

 「どうしてかっていうと」と子どもが言い出すと、「屁理屈を言うようになった」「理屈っぽいのは嫌われる」と思う人もいるかもしれません。しかし、屁理屈は論理的な思考の芽。考える力が付いたと肯定的に見てあげてください。

 納得できない時は「屁理屈を言うな」ではなく、「それはつじつまが合わないよ」とか「相手の気持ちを考えたら、○○ではない?」などと対応し、親子で一緒に論理的な思考を楽しみましょう。

 
■気を付けたいNG行動

 親として“子育てに失敗したくない”と思うのは当然かもしれません。ただ、一生懸命に子育てしているつもりが、子どもを追い詰めている場合もあります。気を付けたい親のNG行動をいくつか紹介します。


●命令・指示が多い

 「早くしなさい!」「言う通りにしなさい!」などと、命令や指示ばかりしていると、子どもは親の言われた通りにしか行動せず、受け身の姿勢になっていきます。時には厳しさも必要ですが、親主導では、自分で考えて話すようにはなりません。

●ジャッジし過ぎる

 いつも親に正解か不正解かでジャッジされてきたため、言葉が出てこない子どももいます。「これを言ったら間違えているだろうか」とビクビクしていたのでは、自分の気持ちが言えなくなってしまいます。

●先回りして代弁する

 子どもの答えを待てず、親が代わりに答えてしまうと、いつしか自分から話すことを諦めてしまいます。言葉を伝える練習だと捉えて、先回りせずに子どものペースに合わせてあげてください。

●「ほら!」「早く!」とせかす

 子どもが頭の中で「何を話そう」「どうやって話そう」と試行錯誤を繰り返している時に「ほら!」「早く決めて!」などとせかすと、子どもは言うことを躊躇してしまいます。時間はかかるかもしれませんが、子どものペースに合わせて待ってあげましょう。


 「コミュ力は何歳から意識すればいいか」と、よく聞かれます。親子間の会話を意識するのに早過ぎることはありません。アメリカでは、親や先生は子どもに「どうしてそう思ったの?」「あなたの考えを聞かせて」とよく質問していました。なんと赤ちゃんにも、おもちゃを二つ見せて「どっちが好き?」と聞いて選ばせると聞き、びっくりしました。たとえ小さな子どもでも「意思や気持ちを持っている」という考え方があるからです。

 子どもを一人の人格として尊重し、接していく。そうした親子間の会話が豊かになっていくことが、子どものコミュ力の向上につながっていきます。

髙取さんの著書『ことば力のある子は必ず伸びる!』(青春出版社)
髙取さんの著書『ことば力のある子は必ず伸びる!』(青春出版社)

動画

SDGs✕SEIKYO

SDGs✕SEIKYO

連載まとめ

連載まとめ

Seikyo Gift

Seikyo Gift

聖教ブックストア

聖教ブックストア

デジタル特集

DIGITAL FEATURE ARTICLES デジタル特集

YOUTH

劇画

劇画
  • HUMAN REVOLUTION 人間革命検索
  • CLIP クリップ
  • VOICE SERVICE 音声
  • HOW TO USE 聖教電子版の使い方
PAGE TOP