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〈Seikyo Gift〉 銚子電気鉄道 代表取締役社長 竹本勝紀さん 2021年4月4日

  • まずい時ほど、笑って進もう

 千葉県の最東端を走る銚子電気鉄道(銚電)。鉄道会社でありながら、売り上げの約8割が、ぬれ煎餅の販売など副業によるものという異色のローカル線だ。1923年の開業以来、何度も経営破綻の危機に見舞われたが、起死回生のアイデアで乗り越えてきた。代表取締役社長として陣頭指揮を執り、自らも電車を運転する竹本勝紀さんに、試練に立ち向かう信条を語ってもらった。

ユーモアとアイデア商品で危機に挑む
「ぬれ煎餅」
「ぬれ煎餅」

 ――銚電は1995年に銚子名産の「ぬれ煎餅」を売り始めました。
 はい。その売り上げが、数年後には鉄道事業の収入を上回りました。だからうちは、20年以上前から煎餅屋なんです(笑い)。
 倒産の危機が訪れたのは2004年。当時の社長が会社の金を横領して逮捕され、しかもその約1億円の借金を背負うことに。この不祥事で、行政の補助金や金融機関の融資もストップ。鉄道というのは線路や車両の修理など、維持するだけで膨大なコストがかかるので、死活問題となりました。電車屋なのに自転車操業です(笑い)。
 私が銚電に初めて来たのはその頃です。お世話になっていた弁護士の方に「千葉の外れにつぶれそうな鉄道会社がある。面倒をみてやってくれ」と声を掛けられ、顧問税理士として関わるように。その時、税理士の本業以外の付随サービスとして、私がぬれ煎餅のオンラインショップを作りました。売り上げは悪くありませんでしたが、焼け石に水。
 とうとう追い詰められて、当時の経理課長がホームページに“ぬれ煎餅を買ってください!! 電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです”と書き込みました。その“悲痛なお願い”がネットで大きな話題になり、私が小遣いで借りたパソコンのサーバーがパンクするほど申し込みが殺到。売り上げが、なんと4億円を超えたのです。倒産を回避した「奇跡のぬれ煎餅」ということで、全国からお客さんが来てくださり、鉄道収入も増えました。

「自ギャグ」で乗り越える
スナック菓子「まずい棒」
スナック菓子「まずい棒」

 ――まさにV字回復です。しばらく黒字が続いたのですね。
 ところが今度は東日本大震災と原発事故の風評被害で売り上げがガタンと落ちて、また赤字に。2年近くたつと預金残高は50万、借金2億円以上と、またも倒産寸前の危機に陥りました。その状況を打開するために社長になった私は、行政に粘り強く働き掛け、補助金が10年ぶりに復活。副業にも力を入れて、18年に売り始めたスナック菓子「まずい棒」は累計250万本のヒット商品になりました。味はうまいのに経営状況がまずいという自虐ネタです(笑い)。コロナ禍の昨年9月に出した「まずい棒」の「か~るいチーズ味」に付けたキャッチコピーは「マズさ倍増⁈ さらにマズくなりました…経営状況が(涙)」と(笑い)。
 このような自虐ネタを、自虐+ギャグで「自ギャグ」と呼んでいます。でも私たちは、自虐は言いますが自己卑下はしません。100年近い歴史のある鉄道に携わる矜持を持って前に進んでいます。
 「まずい棒」が売れて黒字になるかと思ったら、近年の台風被害とコロナ禍でお客さんが激減して、今も厳しい状況は続いています。良い事っていうのは、長く続かないものですね。人生も会社も同じかも知れません。でも“厳しい、厳しい”とばかり言ってもしょうがないですから、ユーモアで笑って立ち向かっていきます。

突破口があると信じて

 ――社長として心掛けていることは何でしょうか。
 社長だからといって、重々しいことを言うのではなく、皆の気持ちが軽くなって思いが共有できるよう、冗談を言いながら、心をつなぐ“連結環”のような存在でありたいです。また、代表者は組織のピラミッドの頂点ではなく、逆三角形の末端です。お客さんと接する現場が一番上です。私自身、常に現場第一主義でいたいですね。
 銚電は銚子観光のシンボルの一つといわれていますが、実は海はほとんど見えなくて、森の中とか住宅街を走っています(笑い)。路線も短く(全長6・4キロ)、レストラン鉄道をやったとしても、前菜を食べているうちに終わってしまう(笑い)。
 だったら「日本一のエンタメ鉄道」を目指そうと、さまざまな企画を練って、映画を作りました。その名も「電車を止めるな!」。「鬼滅の刃」より面白いと言って励まされています(笑い)。また、YouTube「激つらチャンネル」も頑張って配信しています。ローカル鉄道は地域住民の足であるとともに、情報発信基地でもあります。こうやって盛り上げて多くの人をもてなし、地域に恩返ししていきたいのです。
  
 ――試練に挑む人にアドバイスを。
 ある作家の方の言葉が私の信条になっています。“どんな問題も解決できる。むしろ、解決できるからこそ自分の身に起きたんだ”と。そう思うと、少し肩の荷が下りるんです。諦めないで一生懸命行動すれば、きっといいことがあります。どんな人にも、生まれてきた以上、何らかの使命があるはずです。
 銚電には「絶対に諦めない」というスローガンがありますが、口先だけでは駄目で、行動しなければいけません。どこかに突破口があると信じて、粘り強く動くことだと思うのです。
 薄いパイ生地が積み重なっているミルフィーユのように、小さな革新の積み重ねが重要です。ミルはフランス語で「千」、フィーユは「葉っぱ」、要するに「千葉」です(笑い)。そうやって笑いながら、何があってもふてくされずに、楽天的に生きることが大事かなと思います。(2月7日付)

鯖威張るカレー㊧と銚電らーめん
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 「ぬれ煎餅」「まずい棒」などが買えるオンラインショップは、こちらから

 YouTube「激つらチャンネル」はこちら。ぜひ見てください!

MAKURAGI STICK CAKE
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プロフィル

 たけもと・かつのり 1962年、千葉県木更津市生まれ。2005年に銚子電気鉄道顧問税理士、12年に代表取締役社長に就任。16年に電車の運転免許を取得。

 【記事】加藤幸一、歌橋智也 【撮影】笹山泰弘

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 メール wakamono@seikyo-np.jp
 ファクス 03―3353―0087

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