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Z世代の上司になったら――「受け入れる」よりも「置いておく」感覚で 自分の話を優先しない「1on1ミーティング」を! 2023年10月14日

  • 電子版連載〈WITH あなたと〉
  • NPO法人しごとのみらい理事長 竹内義晴さん

 Z世代(※)の記者が「Z世代」をテーマに連載を開始します。社会の変化が激しい今、価値観は多様化し、世代間ギャップが、ますます開いているように感じます。Z世代の価値観を深掘りする中で、世代を超えてより良いコミュニケーションを生み、誰もが輝ける社会に一歩でも近づいていくためのヒントを得たい。こうした問題意識のもと、取材を進めていきます。第1回は、NPO法人しごとのみらい理事長の竹内義晴さんに、職場でのコミュニケーションについて聞きました。(取材=菊池優大、松岡孝伸)

(※Z世代:1996年から2010年ごろに生まれた世代)

 ――Z世代の感覚や価値観を知る上で、竹内さんが挙げている例が参考になるなと思いました。「体調が悪いので休みます」と、上司にLINEで連絡をするのはありか、なしか。ビジネスマナーとしてはアウトなのは分かりますが、正直、LINEの方がお互いに都合がいい気がしてしまいます。連絡が素早くできるし、記録として残るし。あと、電話って相手の時間を奪う行為な気がして、少し気が引けます。
  
 Z世代は生まれた時からスマホなどのデジタル機器が身近にあり、SNSは日常生活で欠かせないもの。いわゆるデジタルネーティブと呼ばれるZ世代にとっては、LINEでやり取りをする方がしっくりきますよね。
 一方で上司は、「LINEで休みの連絡をよこすとは何事だ!」「様子が気になるから電話で声を聞きたい」と。育ってきた社会環境や時代背景によって、どうしても解釈のズレが発生してしまいます。

■「型」を見直すチャンス

 ――博報堂若者研究所のボヴェ啓吾さんは、Z世代は、「心地よくて無理がない。自然で、前向きで、継続性があるような状態であるヘルシーな生き方を好む傾向がある」と語っていて、しっくりきました。これまでのビジネスマナーは分かるんですが、それって不変なルールでもないし、ストレスを考えれば、LINEをうまく活用した方が、お互いにとって、ヘルシーだと思います。

 おっしゃる通りです。私たち先輩世代は長きにわたって、無意識に身につけてきた「型」があります。

・毎日、決められた時刻に出社しなければならない
・あいさつは明るくすべき
・仕事にはスーツで行くべきだ
・電話は若手社員が取るべきだ
・「報連相」は部下から行うべきだ
・リーダーは先頭に立って引っ張らなければならない

 テレワークをはじめ、働き方が大きく変わろうとしている今、残すべき正しい型もあれば、手放した方がいい型もあります。しかし、そうした型を見直すタイミングって思ったよりないんです。だから私は、「異なる世代との出会いが、当然と思っていた型を見直すチャンスになる」と訴えています。LINE連絡の解釈のズレが、上司にとってはチャンスになる。そのためにも、その人が生きてきた背景を知ることが重要になります。

 ――NPO法人しごとのみらいは、「楽しくはたらく人・チームを増やす」をテーマに、職場のコミュニケーションやコミュニティー、働き方などの改善に関する企業研修・講演を行っておられます。

 今、管理職やリーダーの立場にいる人の中には、1970年から1982年ごろに生まれた中堅世代も多いと思います。就職氷河期に社会人になり、バブル崩壊後の経済低迷の中を踏ん張ってきました。
 上の世代から「いいからやれ」と理不尽なやりとりをされ、「仕事って我慢しなきゃいけないものなんだ」とも教わってきた。私も51歳なので同じような経験をしました。

 しかし、今の時代、同じようなことをすれば、すぐにパワハラやモラハラだと言われてしまうんです。上司としては、どうすればいいんだろうという感じなんですよね。
 私も会社勤めの頃、管理職をやらなければならない事態になり、同じように悩みました。
 “ただでさえ、ストレスを抱えていて、自分の気持ちすらうまくマネジメントできないのに、どうしたら、メンバーをまとめられるのだろう”というのが率直な思いでした。

■多様な選択肢を持っておく

 ――なるほど。上の世代の背景を知ると、なんだかLINEで一方的に送るのも、ちょっと申し訳ないような気がしてきました。Z世代も上司を知る努力が大切ですね。

 その人が生きてきた背景を知ると、考えが少し変わりますよね。でも、だからといって、相手の考えに完全に同意する必要はない。「そういう考えもあるんだ」ぐらいで、相手の価値観を「受け入れる」ではなく、「置いておく」ような感覚でいい。

 ――その「置いておく」という感覚は、Z世代にとっては結構、普通な感じがします。「ああ、この人はこういう考えなんだ」って、上司をそう捉えている人は多いと思います。

 変化の激しい時代です。これまで正しいと思っていた価値観がガラリと変わることだってある。そんな場面で有効なのは、選択肢を一つではなく、多数用意しておくことです。
 自分とは異なる価値観を、「置いておく」というのは、つまり、多様な選択肢を持っておくのと同じです。「自分はこんな意見なんだけどな」と思いながらも、相手の意見も尊重していく。この姿勢でいれば、選択肢を増やすことができます。

 私は、これまで「世代間ギャップを埋める」と言っていたんですが、最近は、「世代間ギャップを生かす」と言っています。しかし、「最近の若者は」「これだから昭和世代は」のように世代論を語ると、むしろ、人間をひとくくりにして、分かったような気になる危険があるので、取り扱いには注意が必要です。
 Z世代といっても、一人一人、性格や個性は違うわけです。世代論は相手を知るきっかけにしか過ぎない。相手の行動の背景を知るために、どこまでも「1on1」が重要だと思うんです。

■「解釈のズレ」をチームの前進のきっかけに

 ――竹内さんが、職場のコミュニケーションを改善する一つの方法として提案されている、「1on1ミーティング」ですね。

 その名の通り上司と部下が一対一で行うミーティングです。私は毎月一人30分、チームのメンバーの近況や悩んでいること、仕事の状況を聞くことで、「何を考えているのか」を知るようにしています。この時、自分の話をするのではなく、あくまで相手の話を聞くことに徹します。

 上司が相手の話に歩み寄って共感してしまうと、ついつい意識が自分に向いてしまい、相手の話を聞くよりも自分の話を優先しがちになります。このバランスは難しいのですが、「自分は自分、相手は相手」ぐらいの冷静になれる距離感を保つことも、相手の話を聞く上では必要なことです。
 「この人は自分のことを理解しようとしてくれている」。こういうふうに思ってもらえたら、相手との信頼感が生まれるし、チームとしてのパフォーマンスはアップするでしょうね。

 ――自分の話を優先しがちになるというのは、世代に関係なく、すごく共感できる話ですね。うちの職場は特に多いんじゃないかな(笑)。自分の話を優先しない「1on1ミーティング」を、私も実践しようと思います。

 これからは個性と強みを生かす時代です。現代はモノが十分に行き渡り、個々人のニーズに対応していくような多品種・少量生産の時代になりました。このような時代には、消費者の多様なニーズに合わせていく必要があります。それだけ、アイデアや柔軟性が求められるということです。そのため、チーム内にも、いろんなアイデアや価値観を持った人が必要となり、多様なチームほど、成果を生み出しやすい流れになってきているんです。

 その上で、大事なことは、部下も上司も孤立しないこと。解釈のズレは常に生じるものです。でも、互いの信頼関係がなく、孤立したような状態でいれば、そうした解釈のズレは恐れであり、不安であり、ストレスになる。でも、チームに信頼関係があるなら、「じゃあ、どうしようか」という対話になり、チーム全体を前進させるきっかけにできます。楽しい仕事生活になるよう、皆さんの健闘を祈ります!

【プロフィル】
 たけうち・よしはる 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。NPO法人しごとのみらい理事長。17年からサイボウズ株式会社で「週2日フルリモート複業社員」として勤務。20年から地元新潟県妙高市のワーケーションや地域複業の事業に参画。著書に『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント』(翔泳社)など。

 ※次回以降、Z世代当事者のヒューマンストーリーや、博報堂若者研究所・リーダーのボヴェ啓吾さんのインタビューを載せる予定です。

 ●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ご感想をお寄せください。
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 ファクス 03-5360-9470

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