【電子版オリジナル】「ひきこもり」を読者の皆さんと考える〈投稿編〉――「生きていていいんだ」と思える社会を
【電子版オリジナル】「ひきこもり」を読者の皆さんと考える〈投稿編〉――「生きていていいんだ」と思える社会を
2022年11月5日
- 電子版連載〈WITH あなたと〉 #ひきこもり
- 電子版連載〈WITH あなたと〉 #ひきこもり
5年間のひきこもりを経験した中山里沙さん㊧(10月1日付より)
5年間のひきこもりを経験した中山里沙さん㊧(10月1日付より)
「ひきこもり」をテーマに連載してきた電子版オリジナル企画「WITH あなたと」。
連載当初から、たくさんの感想や投稿のメールをいただきました。今回は、読者の皆さまの投稿を紹介して、“あなた”と一緒に考えていきたいと思います。
(編集=掛川俊明、宮本勇介)
「ひきこもり」をテーマに連載してきた電子版オリジナル企画「WITH あなたと」。
連載当初から、たくさんの感想や投稿のメールをいただきました。今回は、読者の皆さまの投稿を紹介して、“あなた”と一緒に考えていきたいと思います。
(編集=掛川俊明、宮本勇介)
10年間のひきこもりを経て絵付師になった島谷武徳さん(9月10日付より)
10年間のひきこもりを経て絵付師になった島谷武徳さん(9月10日付より)
■投稿①――久しぶりに近くのコンビニへ買い物に行きました
■投稿①――久しぶりに近くのコンビニへ買い物に行きました
共感を覚え、涙しながら読んだ母親です。
高校3年の娘は、中学生の頃から時々、学校に行けませんでした。高校1年の秋、全く学校に行けなくなり、通信制の高校に転入。「登校できないのは、エネルギーがなくなっている状態」。私がカウンセリングを受けた時、そのことを初めて知りました。
本年度の3泊4日のスクーリングが迫っています。娘は「卒業したい。でも登校できない」。事前指導、スクーリング、認定試験を全てクリアしないと、卒業できません。
家からほとんど出られない状況で、4日間のスクーリングは、どう考えても厳しい。娘は「行ける気がしない」と泣きます。
最近、久しぶりに近くのコンビニに一緒に歩いて買い物に行きました。うれしかった! 親が焦ってはいけない。少しずつでも前に進んでいければ、私はうれしい。
でも、登校できないことに、ふと涙が出てしまう私です。おおらかでいないといけないのにね。
幸い、娘はドラマを見るのが好きで、“推し”がたくさんいます(笑)。アイドルやイラストを描くのが好き。娘が“推し”のことを楽しそうに話してくれたり、一緒にドラマを見たいと言ってくれたりするのが、うれしいです。
共感を覚え、涙しながら読んだ母親です。
高校3年の娘は、中学生の頃から時々、学校に行けませんでした。高校1年の秋、全く学校に行けなくなり、通信制の高校に転入。「登校できないのは、エネルギーがなくなっている状態」。私がカウンセリングを受けた時、そのことを初めて知りました。
本年度の3泊4日のスクーリングが迫っています。娘は「卒業したい。でも登校できない」。事前指導、スクーリング、認定試験を全てクリアしないと、卒業できません。
家からほとんど出られない状況で、4日間のスクーリングは、どう考えても厳しい。娘は「行ける気がしない」と泣きます。
最近、久しぶりに近くのコンビニに一緒に歩いて買い物に行きました。うれしかった! 親が焦ってはいけない。少しずつでも前に進んでいければ、私はうれしい。
でも、登校できないことに、ふと涙が出てしまう私です。おおらかでいないといけないのにね。
幸い、娘はドラマを見るのが好きで、“推し”がたくさんいます(笑)。アイドルやイラストを描くのが好き。娘が“推し”のことを楽しそうに話してくれたり、一緒にドラマを見たいと言ってくれたりするのが、うれしいです。
中山里沙さん(奥)
中山里沙さん(奥)
■投稿②――息子に記事を見せたら「その新聞、貸して!」と
■投稿②――息子に記事を見せたら「その新聞、貸して!」と
私の息子は15歳の時からひきこもりです。進学校を目指す小中一貫校で、勉強についていけなかったのです。「東京の学校なら行けるかもしれない」と、妻と息子を送り出し、高校受験は合格。何とか1年間は通いましたが進級できず、中退しました。その後、自宅へ戻り、現在25歳になります。
10年前に歯の矯正をしましたが、歯医者にも行けず、ずっと装着したまま。本人は、本当につらいと思います。髪も自分で切り、具合が悪くても医者にも行かず。親としては、子どもの前では“いつも通り”を心がけ、“何とかしてあげたい!”との一心で、ただただ祈ってきました。
誰にも相談できずにいたところ、ひきこもりUX会議の林恭子代表理事の記事(10月8日付)に目が留まりました。林さんの「ひきこもり状態は、『ガソリンの入っていない車のようなもの』」との一言が心に突き刺さり、早速、息子に記事を見せました。
「焦らなくていいんだよ、今はエネルギー充電の時だから。ポジティブな出来事や安心感、共感の積み重ねで一滴一滴、エネルギーがたまっていくから」と話しました。
すると息子は「その新聞、貸して!」と、部屋へ持っていきました。何を感じてもらえるか――それは分かりませんが、少しでも心が軽くなればと願っています。
私の息子は15歳の時からひきこもりです。進学校を目指す小中一貫校で、勉強についていけなかったのです。「東京の学校なら行けるかもしれない」と、妻と息子を送り出し、高校受験は合格。何とか1年間は通いましたが進級できず、中退しました。その後、自宅へ戻り、現在25歳になります。
10年前に歯の矯正をしましたが、歯医者にも行けず、ずっと装着したまま。本人は、本当につらいと思います。髪も自分で切り、具合が悪くても医者にも行かず。親としては、子どもの前では“いつも通り”を心がけ、“何とかしてあげたい!”との一心で、ただただ祈ってきました。
誰にも相談できずにいたところ、ひきこもりUX会議の林恭子代表理事の記事(10月8日付)に目が留まりました。林さんの「ひきこもり状態は、『ガソリンの入っていない車のようなもの』」との一言が心に突き刺さり、早速、息子に記事を見せました。
「焦らなくていいんだよ、今はエネルギー充電の時だから。ポジティブな出来事や安心感、共感の積み重ねで一滴一滴、エネルギーがたまっていくから」と話しました。
すると息子は「その新聞、貸して!」と、部屋へ持っていきました。何を感じてもらえるか――それは分かりませんが、少しでも心が軽くなればと願っています。
島谷武徳さん
島谷武徳さん
■投稿③――「生きていていい」と、私に言ってもらえたようで
■投稿③――「生きていていい」と、私に言ってもらえたようで
「生きていていい」。ひきこもりUX会議・林恭子代表理事(10月8日付)の言葉は、当事者の息子より、今の私に言ってもらえた言葉のようで、涙があふれました。
長男の障がい、次男の不登校。死ぬという選択肢はなかったけれど、生きるのがつらく、「このトンネルはどこまで続くのだろう」と、泣くこともできませんでした。
長男が特別支援学校を卒業した昨年から、心が苦しく、毎日誰かに話を聞いてもらいたいと思うように。カウンセリングに通い始めました。
これまでの長男の介助、次男の不登校のこと、じっくり聞いてもらえることはなく、知らず知らずに、私の心はむしばまれていたのかと。
次男にとって居心地の良い家でなければ。話を聞いてあげなければ。どう向き合うか。そんな日々に、心はすり減り、悲鳴を上げていたんだと思います。
“向き合うのではなく、肩を並べる”“未来を一緒に見る”。この言葉で、肩の荷が下りた気がします。
生きるための撤退。就労などの結果より、今のこの過程の方が大切なのだと考えられるようにしていけたらと思います。
まず、私自身が自分は生きていていい。このままでいい。自分がエネルギーをためていこうと。
「生きていていい」。ひきこもりUX会議・林恭子代表理事(10月8日付)の言葉は、当事者の息子より、今の私に言ってもらえた言葉のようで、涙があふれました。
長男の障がい、次男の不登校。死ぬという選択肢はなかったけれど、生きるのがつらく、「このトンネルはどこまで続くのだろう」と、泣くこともできませんでした。
長男が特別支援学校を卒業した昨年から、心が苦しく、毎日誰かに話を聞いてもらいたいと思うように。カウンセリングに通い始めました。
これまでの長男の介助、次男の不登校のこと、じっくり聞いてもらえることはなく、知らず知らずに、私の心はむしばまれていたのかと。
次男にとって居心地の良い家でなければ。話を聞いてあげなければ。どう向き合うか。そんな日々に、心はすり減り、悲鳴を上げていたんだと思います。
“向き合うのではなく、肩を並べる”“未来を一緒に見る”。この言葉で、肩の荷が下りた気がします。
生きるための撤退。就労などの結果より、今のこの過程の方が大切なのだと考えられるようにしていけたらと思います。
まず、私自身が自分は生きていていい。このままでいい。自分がエネルギーをためていこうと。
中山里沙さん
中山里沙さん
■投稿④――今は夫婦で地区部長、地区女性部長になりました
■投稿④――今は夫婦で地区部長、地区女性部長になりました
私は大学になじめず、3年の時に退学。25歳になる年まで、ひきこもりでした。
バイトは面接で落とされる。人とコミュニケーションが取れない。そんな自分が、嫌で嫌で仕方がありませんでした。
「このままではいけない」と思い始め、人とあまり話さなくてよい仕事を選んで、工場のライン作業に。人間関係や仕事の失敗で落ち込んだら辞める。それを繰り返しました。
1人暮らしをする中で、出会った学会の皆さんに励まされました。どうしようもなく落ち込んだ時でも、学会の先輩は訪ねてきてくれました。
自分を変えたい一心で、題目をあげ、学会活動へ。徐々に仕事が続くようになり、彼氏ができたり、車の免許を取ったり。少しずつ生活ができるように。
31歳で実家に戻ると、以前は信心に反対していた両親が、私の活動を理解してくれるようになりました。
その後、ホームヘルパー2級(当時)の講習に通い、デイサービスの事業所に就職。介護福祉士の資格も取り、8年2カ月、勤めることができました。
学会では女子部(当時)の地区リーダー、副部長として活動に取り組み、38歳で夫と出会って結婚。今は夫婦で地区部長、地区女性部長として、タッグを組んでいます。
私は大学になじめず、3年の時に退学。25歳になる年まで、ひきこもりでした。
バイトは面接で落とされる。人とコミュニケーションが取れない。そんな自分が、嫌で嫌で仕方がありませんでした。
「このままではいけない」と思い始め、人とあまり話さなくてよい仕事を選んで、工場のライン作業に。人間関係や仕事の失敗で落ち込んだら辞める。それを繰り返しました。
1人暮らしをする中で、出会った学会の皆さんに励まされました。どうしようもなく落ち込んだ時でも、学会の先輩は訪ねてきてくれました。
自分を変えたい一心で、題目をあげ、学会活動へ。徐々に仕事が続くようになり、彼氏ができたり、車の免許を取ったり。少しずつ生活ができるように。
31歳で実家に戻ると、以前は信心に反対していた両親が、私の活動を理解してくれるようになりました。
その後、ホームヘルパー2級(当時)の講習に通い、デイサービスの事業所に就職。介護福祉士の資格も取り、8年2カ月、勤めることができました。
学会では女子部(当時)の地区リーダー、副部長として活動に取り組み、38歳で夫と出会って結婚。今は夫婦で地区部長、地区女性部長として、タッグを組んでいます。
島谷武徳さん
島谷武徳さん
■担当記者のメモ――これまでの連載を振り返って
■担当記者のメモ――これまでの連載を振り返って
ひきこもりとは、どんな状態なのか――。
経験者の島谷武徳さん(9月10日付)、中山里沙さん(10月1日付)を取材すると、“自分を否定し尽くしていた”“自分自身にすら興味が持てなくなっていた”と。
変わりたい。でも、変われない。
そう悩む当事者にとって、より良いサポートとは何かを考えたい。その思いから各団体や企業で支援に携わる識者にもインタビューした。
訪問支援に携わる谷口仁史さん(9月17日付)は「まずは相手を否定しないこと」と。ゲームが好きなら、一緒にゲームをする。相手のニーズに寄り添う「価値観のチャンネル合わせ」が必要だと語る。
当事者の女子会を開催してきた林恭子さん(10月8日付)は、ひきこもりは「生きるための手段」と。いきなり「就労」や「自立」をゴールにはしない、「幸せになるための支援」を訴える。まずは「生きていていい」と思えることから。
その先に、自分らしく働ける環境もでき始めている。株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」は社員のほとんどが、ひきこもり当事者・経験者。代表取締役社長の佐藤啓さん(10月15日付)は「『在宅』であれば、現状を大きく変えなくても就労への一歩を踏み出すことができます」と。
取材するたびに、ひきこもりは、いつでも、誰にでも起こりうる状態だと感じた。100万人超の当事者がいるといわれるが、見方を変えれば、「社会の課題に敏感な、可能性に満ちた人たちが100万人もいる」(佐藤啓さん)。
可能性は無限大――誰もが生きやすい社会を目指し、今後も連載を続けていきたい。
ひきこもりとは、どんな状態なのか――。
経験者の島谷武徳さん(9月10日付)、中山里沙さん(10月1日付)を取材すると、“自分を否定し尽くしていた”“自分自身にすら興味が持てなくなっていた”と。
変わりたい。でも、変われない。
そう悩む当事者にとって、より良いサポートとは何かを考えたい。その思いから各団体や企業で支援に携わる識者にもインタビューした。
訪問支援に携わる谷口仁史さん(9月17日付)は「まずは相手を否定しないこと」と。ゲームが好きなら、一緒にゲームをする。相手のニーズに寄り添う「価値観のチャンネル合わせ」が必要だと語る。
当事者の女子会を開催してきた林恭子さん(10月8日付)は、ひきこもりは「生きるための手段」と。いきなり「就労」や「自立」をゴールにはしない、「幸せになるための支援」を訴える。まずは「生きていていい」と思えることから。
その先に、自分らしく働ける環境もでき始めている。株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」は社員のほとんどが、ひきこもり当事者・経験者。代表取締役社長の佐藤啓さん(10月15日付)は「『在宅』であれば、現状を大きく変えなくても就労への一歩を踏み出すことができます」と。
取材するたびに、ひきこもりは、いつでも、誰にでも起こりうる状態だと感じた。100万人超の当事者がいるといわれるが、見方を変えれば、「社会の課題に敏感な、可能性に満ちた人たちが100万人もいる」(佐藤啓さん)。
可能性は無限大――誰もが生きやすい社会を目指し、今後も連載を続けていきたい。
●連載のバックナンバーは、こちらから読めます
●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ご感想をお寄せください。
メール youth@seikyo-np.jp
ファクス 03-5360-9470
●次回は、58歳で仕事に行けなくなり、ひきこもりを経験した学校の先生に、当事者体験を聞いていきます。11月12日ごろ配信予定。
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