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〈ライフスタイル〉 視点が変わると、世界は変わる!旅作家・ドローンアーティスト とまこさん 2021年10月24日

 今回登場いただくのは、元秘境ツアー添乗員で、現在は旅作家・ドローンアーティストとして活躍する、とまこさん。これまで56カ国を訪れたとまこさんが、今「心を奪われている」という、日本の離島とドローン撮影の魅力について聞きました。

石垣島
石垣島
 
ドローンで新しい表現を

 小学5年生の時、新幹線の中でカムチャツカ半島の森に到着する夢を見たとまこさん。以来、旅に憧れ、大学生になるとバックパッカーに。もちろん、就職先も旅行会社。秘境ツアーの添乗員となった。

 やがて「椎名誠さんのような旅の本を書きたい!」と退社。成田空港へ向かう道すがら婚姻届を提出し、夫婦で南米へ。この旅をつづったのが、1冊目の本『気がつけば南米 いきなり結婚→南米へ! おきらくカップル180日間の旅』だ。

 「帰国後、イラストとともに無我夢中で執筆し、必死に売りこみましたが、多くの出版社に『旅の本は売れない』と断られ、実現したのは3年後です。その後も“本を書きたい”という一心で突き進みました。
 12冊目を出す頃、石垣島へ。それまで海外に目が向いていたけど、こんなすごい所が日本にあるのか!!と驚きました」

 この感動を伝えるには、これまでのフォトエッセーの手法では足りない。何か新しい表現を――。そう考えていると、友人が言った。「ドローンを飛ばしてみたら?」

 「その時はドローンのことをよく知らず、空飛ぶカメラかーという印象でした。最初はブレずに撮るための“ジンバル”すら分からず、飛んでるからいいじゃん、とジンバルカバーを付けたままブレた写真を撮り続けて数週間(苦笑)。
 それでも楽しい! 自分が飛んでるような感覚が気持ち良く、すぐにハマってしまい、離島から帰らない人になりました(笑い)。
 バイトを見つけ、宿と車を確保し、毎日飛ばし続けました。すぐに気付いたのは、ある程度良いレンズと良い景色があれば、誰でもそれなりに撮れること。でも、それだと意味がない。1年目の課題は、ちゃんと飛ばせるようになることと、私にしか撮れないものを探すことでした」

石垣島の朝
石垣島の朝
奄美大島の夕焼け
奄美大島の夕焼け
 
大自然と自分が共鳴する

 表現力を磨きたい。試行錯誤を重ねるうち“自分らしさ”が分かってきた。

 「景色の中に自分が入ること。美しい景色だけなのと、そこに人がいるのとでは臨場感が違います。見る人がワープした気分になれるような楽しさが欲しい。
 これは当初から変わらない私のテーマです。旅に出たくても行けない人も多いから、どこにいても、本を開いた瞬間に旅の気分を味わってもらいたい。それはドローンも同じです」

 潮位、地形、その日の雲、光、いろんな要素を考えて撮影場所を決める。洋服も日差しに合わせた色や素材、丈などを考える。自然にはない色の服を着たとまこさんが入ると、作品におしゃれさも加わる。

 2年目の課題は、自身が作品に写り込むスタイルを磨くこと。奄美大島で、自分が計算した以上に撮れるようになったと自覚した時、不思議とドローンの仕事も入るようになった。さらに1年ほどかけて、動画撮影の経験を積んだ。

 「海で撮る理由の一つは光。時々刻々と変化する空の写り込みや、光の反射はもちろん、服を着たまま海に入って撮影することで、さらなる光のマジックや波紋が起きて、自然と自分が共鳴し合えるんです。
 もう一つは、360度遮るものがないから。ひろーい空と海の中にポツンといると、何でも受け入れて、許せる感覚になる。許すのは自分のことです。他人はまだ許せるけど、自分を許すのは難しくて。
 もっと進みたい、まだやれる、負けるな頑張れ。そんな気持ちでいつもいるけど、大自然には絶対かなわないから、喜んで負けられる。委ねられる。すると本来の自分がメキメキ輝きだすのが分かるんです。それが味わえるのが海です」

宮古島
宮古島
奄美大島
奄美大島
 
心に風が吹きますように

 なぜ、許すという言葉が出てきたのか。実はとまこさん、のんびりした旅人というより、かなりストイックに“本を書く”ことを追求してきた人。

 「形になるまでは、ボツになっていちいち悲しんでたら先に進めないので、喜怒哀楽の怒と哀を捨て、超前向き人間でした。ゆとりがなく、周囲に『そんなに頑張らなきゃいけないの?』と思わせてしまう。ポジティブハラスメントですよ」

 結婚して7年がたった年の暮れ、夫から「そろそろ、離婚しよっか」と告げられた。

 翌年、とまこさんはインドへと旅立つ。

 「『離婚して、インド』にも書きましたが、感情を表に出す人たちと触れ合う中、さまざまな気付きがあり、喜怒哀楽を取り戻しました。すると、自分が怒と哀を感じなければ相手のそれにも気付けない、一番大切なはずの隣にいた人の気持ちを分かってなかったことを知りました。なんて頑固に生きてきたんだろうって。夢を追い掛けることは正しいと思っていたけど、それだけじゃない。
 心の中でたくさんの化学反応を起こした旅の最後、ヒマラヤで透明な雪解け水が流れるガンジス川の源流に入った時、自然の摂理を体感するんです。水は流れるけど、川底の水草は必要な養分をとどめている。だから魚も育つ。必要ないものは流れ、必要なものだけが残る。本当に大切なものは絶対になくならないから、失うことを恐れなくていいんだと確信しました。
 これを伝えたいけど、実生活で川に入ることはなかなかないので、風を意識するようになりました。ゆとりがなくパンパンだった自分の中に、風が吹き抜ける感覚。ドローンだと写真より風を感じられ、もっと伝えやすくなったと思います。
 あと、どこにいても、今、上から見る景色はどうかなと違う視点で考えたり、物事全てに対して、別の角度からも見られたりできるようになりました。いろんな見方があるね、という。世界って面白いですね。ドローン、ありがとう(笑い)。
 私の作品を見て、コロナ禍で鬱々としたものを吹き飛ばす疾走感みたいなものを、感じてもらえたらうれしいです。
 あなたの心に、風が吹き抜けますように――」

石垣島
石垣島
香川県観音寺市
香川県観音寺市

 とまこ 旅作家、ドローンアーティスト。『離婚して、インド』(幻冬舎文庫)など既刊12冊。2017年からドローン撮影を始め、旅先での美景、絶景の撮影、動画編集を手掛ける。講演、TV・ラジオ番組出演など多方面で活躍中。奄美観光大使。香川県観音寺市PR助手。

★公式YouTubeチャンネル「とまこドローン」はこちらから

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life@seikyo-np.jp

【編集】加藤瑞子
【写真】とまこさん提供

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1937年、兵庫県生まれ。磁性物理学を専攻し、東京大学大学院数物系研究科応用物理学専攻博士課程修了。工学博士。米国ブルックヘブン国立研究所、東北金属工業株式会社中央研究所、東京都立工科短期大学助教授を経て、80年よりフリーの活動家・研究者として、平和・軍縮・民主化・人権問題に取り組む。90年より準備委員長としてピースデポ創設の中心を担う。長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)では初代センター長を務めた(2012~15年)。近著に『北朝鮮の核兵器―世界を映す鏡―』(高文研)がある
 

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