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〈教育〉 子どもの人間関係 2023年7月13日

発達段階に合わせてサポートを
埼玉学園大学大学院教授 藤枝静暁さん

 「友達と仲良くできているか」。親にとって子どもの人間関係は、学校での様子が見えない分、心配なものです。子どもに伝えたい人付き合いのコツや、親の関わり方について、埼玉学園大学大学院の藤枝静暁教授に聞きました。

 
誰でも身に付けられる

 私は長年「人間関係がうまくなる方法の解明」をテーマに研究を続けてきました。もし、お子さんが、友達や先輩との付き合い方、先生との接し方に悩んでいたら、それは特別なことでなく、普通のことです。心配しなくて大丈夫です。そもそも人間関係、つまり“人付き合い”は難しいものです。しかし、安心してください。人付き合いにはコツがあるのです。

 社会の中での人付き合いの技術(スキル)のことを「ソーシャルスキル」と呼んでいます。なぜ「スキル」と呼ぶかというと、繰り返し練習すれば誰でも身に付けられるからです。親御さんの話を聞かせていただくと「うちの子はマイペースだから」「ああ見えて頑固なんで」など、性格のせいにして諦めている場合があります。性格を変えることは難しいですよね。人付き合いが上手な人と苦手な人との違いとは、決して性格の違いではなく、人付き合いのコツが身に付いているかどうかなのです。

 人付き合いが上手になると人間関係が円滑になり、対人関係でのストレスが少なくなります。また、友達と本音で話すことができ、相手と信頼関係を築くことができます。ソーシャルスキルは子ども時代だけではなく、大人になって社会に出てからも、一生役に立ちます。

 
全ての基本はあいさつ

 良好な人間関係を築くための第一のコツは「自分からあいさつをすること」です。あいさつをされた相手は「自分は拒否されていない」と感じるため、その後も話しやすくなります。「おはよう」「ただいま」「ごちそうさま」など、日常のさまざまな場面であいさつがありますよね。

 あいさつができないと、それだけ人間関係につまずくきっかけが多くなるとも言えます。あいさつができる子になってほしいと思ったら、まず親がお手本を見せてあげましょう。朝起きたら、「おはよう」と声をかけて、あいさつをすると、お互いに気持ちがいいということを教えてあげましょう。食事の後で、「ごちそうさま。おいしかったからまた作って」と言われたらうれしいですよね。

 あいさつ以外では、「感謝する」「話を聞く」「謝る」「質問する」といったスキルはコミュニケーションの基本でもあるので、小さい頃から繰り返し練習して身に付けてほしいですね(表参照)。

 子どもの人間関係の悩みや問題を理解するためには、子どもの発達段階を知っておく必要があります。幼児期の子は、自分と友達を同質のものと捉えています。それが小学1、2年生くらいになると、自分と相手は違うことに気付き始めます。3、4年生になる頃には、目に見えない相手の気持ちに気付いて共感できるようになります。5、6年生では、相手が自分をどう思っているかという他者視点が分かるようになります。もちろん、これらは目安であって人によって発達の個人差はあります。

 
まずは信じて見守る

 例えば小学校低学年の場合は自己中心性が強く、状況説明がうまくできません。「順番に教えてね」と学校で起きたことや友だちにされたことなど、状況を整理しながら聞いてあげる必要があります。

 高学年になると、他人がどう思っているのかで悩むかもしれませんし、親に相談してこなくなるかもしれません。そんな時は、親として「見守る」「話を聞く」「相談に乗る」の3段階の関わり方を勧めています。

 「見守る」とは、高学年になると解決策も自分で考えられるようになるので、子どもを信頼して見守ること。「親」という字は、「木」の上に「立」って、「見」ると書きますよね。一定の距離を保ちながらも、近くに立って見守るのが親にとって大切な役割だと思います。子どもが悩みを自力で解決しようとしている段階では、家庭を心安らげる場にして見守ってあげてください。

 その上で、子どもが話しかけてきたら、していることを止めて「話を聞く」。この時、求められていないのに意見を言ったり、アドバイスをしたりするのはNG。子どもは「聞いてほしいだけなのに」とかえって逆効果になりかねません。

 子どもから意見や助けを求めてきた時や、いじめなど深刻な状況の場合は「相談に乗る」。その際は、「普通はそんなことしないよね」といった一般論ではなく、「ママだったら、こうすると思うな」などと、自分を主語にした「Iメッセージ」で伝えるといいでしょう。必要であればすぐに対応に動いてください。このように子どもの発達段階に合わせて、必要なサポートを心がけてください。

 人付き合いは、大人になっても悩むものです。それが子どもならなおさらです。人付き合いに悩んだ時、相談に乗ってくれたり、気持ちを分かってくれたりする味方がいれば、不安が減りますよね。子どもにとって一番の味方は親です。子どもと一緒にソーシャルスキルを学び、いろんな人に試していきながら、お互いに磨いていってほしいと思います。

 
《小学校低学年から身に付けたいソーシャルスキル》

●感謝するスキル
 
 感謝を伝える時は、相手を見て、はっきりと、笑顔で、届く声で、うれしい気持ちを伝えましょう。誰でも「ありがとう」と言われたら、うれしい気持ちになるものです。家族や親しい友達には言うのが面倒だと感じるかもしれませんが、ささいなことでも「ありがとう」と言い、相手に感謝を伝えることで、お互いに気持ちよく過ごすことができます。


●話を聞くスキル

 人は、自分の話をしっかりと聞いてくれる相手に対して安心感や信頼感を持ちます。話を聞く時は、まず相手の方を向き、作業している手を止めましょう。相手の目を見て、うなずいたり、相づちを打ったりしながら聞きます。相手の話を最後まで、口を挟まずに聞くことも大切です。


●謝るスキル

 笑顔や軽い口調では、反省の気持ちがうまく伝わらないので要注意。謝るときは「頭を下げる」「申し訳なさそうな表情をする」など、言葉以外でも反省の気持ちを表しましょう。まず「ごめんなさい」などの言葉で謝罪します。どうしてそうなったのかという理由や事情とともに、相手の反応を見ながら、解決策や反省の言葉も伝えましょう。


●質問するスキル

 ポイントは①相手に質問していいかを確認する②具体的に質問する③お礼を言う。また、質問をする時に心がけたいことは「相手の都合を確認すること」です。相手が話し中であったり、忙しかったりすると、対応してもらえないだけでなく「自分の都合しか考えていない人だ」と誤解されてしまうこともあります。

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