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〈インタビュー〉 ハリウッド映画に携わるスター・ウォーズ大好き日本人CGアニメーター 島田竜幸さん 2023年5月8日

  • Z世代の学生記者がつくる職業図鑑「JOB INDEX」
  • FILE.8 CGアニメーターの世界
  • 失敗を恐れて挑戦しないのは本当にもったいないこと
写真は全て本人提供
写真は全て本人提供

 電子版オリジナルの連載「職業図鑑『JOB INDEX』」では、本社所属のスチューデントリポーター(学生記者)がインタビューを通し、さまざまな職業の世界を紹介しています。
 
 第8回は、スパイダーマンやスター・ウォーズなどといったハリウッド映画の制作に携わるCG(コンピューター・グラフィックス)アニメーターの島田竜幸さん。カナダ西部の都市バンクーバーに住む島田さんにオンラインで話を聞きました。(取材=学生記者・サンヘッド)
 

仕事内容

 CGで作られたキャラクターなどを自由自在に動かすことで、まるでリアル(現実)に存在するような映像として表現するVFX(視覚効果)アーティストの一分野。必ず取得しなければならない資格や試験はないものの、細部にまでこだわった表現を創り上げるためには、CGの基本的なスキルはもちろん、観察力や発想力も求められる。
 

2024年公開予定のハリウッド版「ウルトラマン」の制作にも携わっている(前列一番右が島田さん)
2024年公開予定のハリウッド版「ウルトラマン」の制作にも携わっている(前列一番右が島田さん)
 ――私は、スター・ウォーズやスパイダーマンをこよなく愛する大学4年生です。私にとって、島田さんは、スター・ウォーズのジョージ・ルーカス監督が設立した会社「ルーカスフィルム」で働く、あこがれのCGアニメーターです! 普段どんな仕事をされているかを教えてください。

 まずは、一般の方には、CGアニメーターといっても、なかなかイメージが湧かないかもしれないので、簡単に説明させてもらえたらと思います。

 例えば、スパイダーマンは、クモの糸を伸ばしながら、ビルの上を自由自在に動いたり、空中で敵と戦ったりしますよね。

 そういった動きは、俳優やスタントマンではできません。代わりに、私たちCGアニメーターが、CGで作られたスパイダーマンを一こま一こま動かしてシーンをつないでいくんです。“パラパラマンガ”でキャラクターを紙一枚一枚に描いて動かすのと同じようにです。

 リアルにはあり得ないような映像を作るVFX(視覚効果)アーティストには、CGアニメーターのほかにも、さまざまな分野があります。

 CGアニメーターが動かすキャラクターは、パソコン上で立体物を彫刻するモデリングの仕事をする人が作っています。

 さらに、キャラクターに光を当てて影をつけるライティングの仕事をする人、爆発や煙をシミュレーションする人、画像を合成する人等々、それぞれの分野のスペシャリストが協力して作業を進め、リアルに存在するような映像が作られています。

作業する島田さん
作業する島田さん
 ――CGアニメーターをはじめ、VFXアーティストにあこがれている同世代も多いです。島田さんが目指すようになったきっかけは何ですか。

 大学受験するまでは、自分の将来について、特に何も考えていませんでした。

 私はずっとラグビーに没頭していたんです。合格できる大学もなく、浪人してしまいました。

 そんなある日、電車のつり革広告の“目指せハリウッド映画!”みたいな言葉が、ふと目に留まりました。ある専門学校の広告だったんですが、それがきっかけで、自分が幼い頃からスター・ウォーズが大好きで、海外の映画に関わる仕事にあこがれていたのを思い出したんです。自分の中に“好きなことを仕事にする”という仕事観が芽生えた瞬間でした。

 実は、スター・ウォーズが大好きになった背景には、父親の存在があります。宇宙の研究者である父は、スター・ウォーズの大ファンで、よく見せてくれていました。

 ただ、研究熱心で仕事人間だった父のことを当時は、“つまらないおやじ”と思っていました。でも、そんな見方は、自分が本格的に“CGの世界に進みたい”と考えるようになり、“おやじは好きな研究に没頭し、楽しんで仕事しているのかもしれない”と変わっていきました。
 

 ――そこから、実際にハリウッド映画を作るCGアニメーターになるまでの道のりが始まったんですね。

 受験は急きょ、方針を転換し、CGを学べる大学に進学しました。

 しかし、実際は進学後、ラグビーに没頭してしまいました。あまり勉強していませんでしたが、だんだんと“本格的にCGを学ぶには、専門学校に通う必要がある”とも感じるようになり、大学3年生のある日、思い切って両親に「中退してもいいから、専門学校に通わせてほしい」と言ったんです。はじめは反対されたものの、引き下がらず、結果として、ダブルスクールという形で、専門学校にも通わせてもらえるようになったことに加え、両親が共に応援してくれるようにもなりました。

 とても忙しかったんですが、好きなことを学ぶのは楽しく、また、やる気があって志の高い友人にも恵まれ、授業は遅刻もせずに、1番前に座って受けていました。

 卒業制作で、モデリングからアニメーション、ライティング、編集までを行い、ラグビーのキャラクターが試合をするショートフィルムを作りました。CG制作の工程の中で一番楽しいと思ったアニメーションの仕事を志望し、CGアニメーターとして就職したのが、自分のキャリアの始まりです。
 

会社にあるスター・ウォーズの像と
会社にあるスター・ウォーズの像と
 ――その後、どうキャリアを積み、海外で働くことになったのでしょうか。

 日本の「ポリゴン・ピクチュアズ」という会社に入社した頃、同社が、あこがれの「ルーカスフィルム」から、テレビシリーズ「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」シーズン5の受注に成功したんです。

 当時、まだまだ実力が伴っていませんでしたが、私は、上司に「スター・ウォーズが大好きです。このプロジェクトチームに絶対に入れてください!」と、振り返れば、本当にしつこいほどアピールをしたんです。すると、「腕は足りないけれど、スター・ウォーズが好きなところは認めるよ」と、何とかプロジェクトチームに参加させてもらいました。

 日本にいながら海外の作品、とりわけ念願のスター・ウォーズに関われて最高の日々でした。ただ、その製作は、わずか1年、1シーズンで終わってしまいました。“関わり続けたい”と思った私は、シーズン1から制作に関わる唯一の会社、台湾の「CGCG」という会社に転職することにしました。
 

現在勤めている会社ILM(インダストリアル・ライト・アンド・マジック)の同僚らと(前列中央が島田さん)
現在勤めている会社ILM(インダストリアル・ライト・アンド・マジック)の同僚らと(前列中央が島田さん)
 ――いよいよ海外で働く第一歩を刻んだんですね。

 CGの世界で働く人は皆、自分が、どの作品の、どのパートを担当したかをまとめたデモリールという映像集を作っています。

 海外で働くにあたり必要なことは、そのデモリールをレジュメ(履歴書)と一緒に送って実力を証明するだけです。実力とタイミングが合えば、オファーが来ます。

 “英語の勉強をしてから受けなきゃ”とか、“実力がついてから受けなきゃ”っていうことはなく、記念受験じゃないけれど、受けてみなければ、何も進みません。

 ちなみに、台湾の会社に転職する時、私は“ある勘違い”をしていました。

 主にアメリカのテレビシリーズを制作する会社で、面接や契約などについては英語でやりとりしていたので、実際に訪れるまで、台湾を英語圏の国だと思っていたんです。

 しかし、飛行機が着陸したとたん、漢字が街中にあふれているわけです。違和感を覚えた私は、空港の職員に英語で「Excuse me?」と話しかけると、案の定、中国語で返事がありました。そこで初めて、台湾は中国語圏の国だったと分かったんです(笑)。

 台湾では、中国語も学びましたが、英語も、日記をつづりながら、少しずつ話せるボキャブラリー(語彙)や友人を増やし、会話に自信を付けていきました。

 加えて、台湾では、目標を強く意識する大切さも学びました。いずれの分野でも、海外に目を向けている人が多いんです。私の同僚も、ハリウッド進出という夢を語る同僚がいっぱいいました。その姿に、自分も“ハリウッド映画の制作に携わりたい”という夢へ挑戦し続けることができました。

 台湾で4年間働き、その後、カナダへ来ました。現在は「ルーカスフィルム」のVFX制作部門「インダストリアル・ライト・アンド・マジック」で働いています。

 同僚は、とんでもない経歴の持ち主ばかりなんですけど、皆、本当に優しいんです。彼らと仕事を共にする中で、これからもいろいろなハリウッド作品に関わっていきたいという目標と同時に、“こいつと一緒にやりたい”“こいつをチームに入れたい”って思ってもらえるような人間になるという目標も、もつようになりました。
 

会社のパーティーで
会社のパーティーで
 ――これまで、さまざまな悩みや苦しみと向き合ってきたと思います。

 日本にいた20代前半は、ちょっと生意気なところもあった自分への風当たりで悩むこともありましたし、海外に行った時は、言語の壁はもちろん、才能あるアーティストとの力量の差を感じて落ち込むこともありました。それでも、“楽しい”という気持ちが勝って、続けてくることができています。
 
 また、“ハリウッド映画の制作に携わっている”といっても、それは、どこまでもリアルな表現を追い求め、関節や筋肉など、細部にまでこだわり、一つ一つの映像にしていく地道な作業であることに変わりはありません。作品の公開日が迫ってくると、土日も職場にこもって仕事をすることがあります。

 それが全て報われるのは、完成作品を劇場の大きなスクリーンで見た後、エンドクレジット(キャストやスタッフのリスト)に自分の名前が載っているのを見た時です。ハリウッド作品に関わるようになってしばらくたちますが、今でも変わらず、毎回、本当にうれしい瞬間です。

 ――最後に、私と同世代の学生や若者に向けてメッセージをお願いします。

 今の世の中は、仕事の選択肢が無限にあるので、まずは、自分の興味があることに、とことん挑戦するのが大事だと思います。

 私も、ラグビーやCGの勉強に没頭しましたし、興味をもったミシンを使いたくて、学生時代はユニクロでバイトをしていました。

 もちろん、それが仕事につながるかは分かりませんが、興味をもったことには挑戦してみる。失敗をするよりも、失敗を恐れて挑戦しないのは、本当にもったいないことだと思います。
 
 ●島田竜幸さんのTwitterはこちら

 ●島田竜幸さんのデモリールはこちら
 

編集後記

 取材を通して学んだのは、仕事において、自分で限界を作らず、目標に向かって突き進むこと、そして何より、どんな状況でも“楽しむ”気持ちでいることの大切さです。

 「人に楽しんでもらう前に、まずは自分が楽しむ」――こうした信念が、島田さんを、世界中の人を魅了するCGアニメーターたらしめているのかなと思いました。
 
 
 
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