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〈ブラジル教育リポート〉② 創価三代の理念が学校に根付く街 2025年7月16日

  • サンジョゼ・ドス・カンポス市
善と平和の方向へ
先端技術の価値を創造

 ブラジルの空から撮影した一枚の写真に、「牧口」「戸田」「池田」――創価三代会長の名を冠した公共施設が全て写っています。サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市は、約25年前に「牧口常三郎通り」「戸田城聖公園」「池田大作先生図書館」「池田香峯子庭園」を設置しました。理由は、この街が「教育」に力を注いでいる点にあるようです。本年3月、2人の創価の教育者を訪ねました。(記事=大宮将之、写真=種村伸広)

サンジョゼ・ドス・カンポス市の上空から撮影した一枚。中央の緑の木々が茂るスペースが「戸田城聖公園」で、広さはサッカーコート約1・5面分。公園に面する道路が「牧口常三郎通り」。左下にある白い屋根の建物は「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」という公立の教育機関で、ここに「池田大作先生図書館」と「池田香峯子庭園」が設置されている。池田先生は同市の「名誉市民」でもある
サンジョゼ・ドス・カンポス市の上空から撮影した一枚。中央の緑の木々が茂るスペースが「戸田城聖公園」で、広さはサッカーコート約1・5面分。公園に面する道路が「牧口常三郎通り」。左下にある白い屋根の建物は「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」という公立の教育機関で、ここに「池田大作先生図書館」と「池田香峯子庭園」が設置されている。池田先生は同市の「名誉市民」でもある
1999年12月23日付の本紙。サンジョゼ・ドス・カンポス市に「戸田城聖公園」が開園したことを報じている。地元の同志が大切に保管していた
1999年12月23日付の本紙。サンジョゼ・ドス・カンポス市に「戸田城聖公園」が開園したことを報じている。地元の同志が大切に保管していた
「戸田城聖公園」にある戸田先生の胸像。碑文には「教育者であり、人間主義の指導者であり、生存の権利と核軍縮に努めた守り人」と刻まれている
「戸田城聖公園」にある戸田先生の胸像。碑文には「教育者であり、人間主義の指導者であり、生存の権利と核軍縮に努めた守り人」と刻まれている
胸像と碑文が立つスペース
胸像と碑文が立つスペース
サンジョゼ・ドス・カンポス市の牧口常三郎通り
サンジョゼ・ドス・カンポス市の牧口常三郎通り
「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」の校長を務め、創価学会のメンバーでもあるスザナ・ミヤ・キセンさん(中央)が、池田香峯子庭園で生徒たちと語らう
「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」の校長を務め、創価学会のメンバーでもあるスザナ・ミヤ・キセンさん(中央)が、池田香峯子庭園で生徒たちと語らう
「オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校」の教員であるレチシア・アレサンドラ・サントスさん(前列中央)が、生徒たちと笑顔で
「オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校」の教員であるレチシア・アレサンドラ・サントスさん(前列中央)が、生徒たちと笑顔で
貧しい人たちにこそ
豊かな“学びの場”を

 ブラジルの国立宇宙研究所がある。世界有数の航空機メーカー本社もある。あまたの企業や起業家が集まり、技術革新を生み続ける人口72万の先進都市、サンジョゼ・ドス・カンポス――。こう形容されることが多いため、国内でも「経済的に豊かな街」というイメージを抱く人は少なくない。

サンジョゼ・ドス・カンポス市にある、ブラジル最大級のイノベーション施設「テクノロジーパーク」。300社以上の民間企業と、行政機関、教育・研究機関が連携して、新しい技術の研究開発や新事業の創出などを進めている
サンジョゼ・ドス・カンポス市にある、ブラジル最大級のイノベーション施設「テクノロジーパーク」。300社以上の民間企業と、行政機関、教育・研究機関が連携して、新しい技術の研究開発や新事業の創出などを進めている
テクノロジーパーク周辺の風景
テクノロジーパーク周辺の風景
テクノロジーパーク内にある一室
テクノロジーパーク内にある一室

 実際に訪れると、全国的な課題である「経済格差」と決して無縁ではないことも分かる。しかし、それを「教育格差」にしない環境づくりに、同市の“真の豊かさ”があるのだろう。
  
 中核拠点の一つが、公立「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」である。開校25周年。貧困世帯の15歳以上の人々に、上限年齢なく、無料もしくは安価で、「看護」「機械工学」「化学」などの高度な専門技術を習得できる場を提供する。本年、校長に就いたのがスザナ・ミヤ・キセンさん(地区婦人部長)だ。「開校時は、ここの一教員だったんですよ」

スザナ・ミヤ・キセンさん
スザナ・ミヤ・キセンさん
「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」。貧しい人々に尽くした偉大な教育者の名を冠している。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「平和」「人権」等の理念に基づく国際的な教育ネットワーク「ユネスコスクール」にも認定されている
「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」。貧しい人々に尽くした偉大な教育者の名を冠している。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「平和」「人権」等の理念に基づく国際的な教育ネットワーク「ユネスコスクール」にも認定されている

 真っ先に案内してくれたのは、「池田大作先生図書館」「池田香峯子庭園」である。開校時に設置され、落成式典には当時の教育大臣が出席。これに先立つ1997年に「牧口常三郎通り」、99年には「戸田城聖公園」がそれぞれ、同校の目の前に誕生していた。
  
 なぜ創価の三代会長をたたえるのか。それは「価値創造の教育学」を確立し、実践者を世界中に広げたことにあるという。

「池田大作先生図書館」で、生徒たちが読書にいそしむ
「池田大作先生図書館」で、生徒たちが読書にいそしむ
図書館の銘板。池田先生を“平和・文化・教育の守護者”とたたえている
図書館の銘板。池田先生を“平和・文化・教育の守護者”とたたえている
「池田香峯子庭園」の銘板。“平和のために戦い続ける女性の象徴”と
「池田香峯子庭園」の銘板。“平和のために戦い続ける女性の象徴”と

 科学技術といっても、その価値を善にするか悪にするか、平和のために使うか戦争に利用するか。方向を決めるのは人間にほかならない。「人格の価値を高めんとするのが教育の目的」であり、目的達成の手段を明らかにするのが創価教育学だ(『創価教育学体系』)。同市の行政・教育関係者は学会員を通してその理念を知り、教育現場に取り入れてきた。
  
 スザナさんも自ら体現しようと努めてきた。「一番、心を砕いてきたのが『対話』です」。それは、校長になった今も変わらない。

校長のスザナさん(中央)が、化学の授業を終えた学生たちと
校長のスザナさん(中央)が、化学の授業を終えた学生たちと

 時間を見つけては校内を歩き、教職員や生徒を気遣いながら「調子はどう?」「困っていることはない?」と笑顔で声をかける。校長室も常にオープン。「そのアイデア、いいね!」「率直な意見をありがとう!」と言われた相手は何ともうれしそう。人格を磨く活力も革新の知恵も、一人一人を尊重し、より良き“解”を共に更新し続ける対話から生まれるのだ。
  
 図書館で読書に励む生徒に話を聞いた。「牧口先生・戸田先生・池田先生の人生が伝えるメッセージとは何か。何のために学ぶのか――日頃から皆で考え、語り合っています。この学校は、私たちの誇りですね」

生徒たちが図書館で、池田先生の書籍を手に
生徒たちが図書館で、池田先生の書籍を手に
教育本部の実践から
市の最優秀賞受賞が

 ブラジルの各自治体はこの四半世紀、学校教育を段階的に進化させてきた。呼称を「教育2.0」「教育3.0」「教育4.0」と掲げ、子ども主体の学びへ、情報通信技術の本格的な活用へ、AI時代における問題解決能力を育む教育へ――。
  
 サンジョゼ・ドス・カンポス市は、いち早く「教育5.0」への移行を宣言した自治体である。一言すれば「テクノロジーと人間性の融合」。家庭や地域と連携・協働しながら、一人一人が「より良く生きよう」とする心の豊かさを育むことが、最大の目的だ。

オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校(中央の青い建物)と街並みを望む
オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校(中央の青い建物)と街並みを望む

 公立の小・中学校「オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校」で教員を務める、レチシア・アレサンドラ・サントスさん(創価ユース・分圏青年部長)を取材した。

レチシア・アレサンドラ・サントスさん
レチシア・アレサンドラ・サントスさん
オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校の案内板
オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校の案内板

 彼女は第一に「夢を持つ喜び」を生徒に喚起させる。“今の世界にないものを、新たな価値を、君もあなたも創ることができる。地球のどこかで、その実現を指折り数えて待つ人がいる!”――レチシアさんは、それを本気で信じてやまない。祈りを欠かさない。自身が「夢に向かう楽しさ」にしびれているからこそ、生徒をしびれさせることができるのだ。

 昨年、7年生(日本の中学1年生に相当)と挑戦したのが、「金融教育」や「民主主義」について視覚的に楽しく学べる資料を、タブレット端末で作るプロジェクト。資料の完成で終わりではない。皆が教室を飛び出し、事前に学校から協力依頼をしている周辺の家々を訪ね、「この資料が、どんな価値をあなたにもたらすのか」を説明するのである。他者との関係の中で初めて「価値」が生まれることを、生徒は体験的に学ぶ。

レチシアさんの生徒がグラフィックデザインのソフトを駆使して作成した「世界各国の金融」に関する資料
レチシアさんの生徒がグラフィックデザインのソフトを駆使して作成した「世界各国の金融」に関する資料
「この点について、どう考える?」――レチシアさんの授業は常に対話的に
「この点について、どう考える?」――レチシアさんの授業は常に対話的に

 この取り組みは、市が主催する「教育起業プロジェクト」で高い評価を受け、生徒の1人が最優秀賞に。レチシアさんも「教師部門」で特別賞に輝いた。だが最大の勲章は、生徒からの手紙だったに違いない。「レチシア先生が忍耐強く一生懸命、私たちのために取り組んでくれたことが一番うれしい」「私が助けを必要とした時、親身になってもらったことに感謝しかありません」「先生の一つ一つの仕草が、大好きです!」

レチシアさんが生徒からもらった手紙。「レレ先生」の愛称で親しまれている
レチシアさんが生徒からもらった手紙。「レレ先生」の愛称で親しまれている
へナタ・ジャルジン・マランゴニ校長。「レチシア先生がいるからこそ、わが校は『教育5.0』を力強く進めることができます」と称賛を惜しまない
へナタ・ジャルジン・マランゴニ校長。「レチシア先生がいるからこそ、わが校は『教育5.0』を力強く進めることができます」と称賛を惜しまない

 ほかにも「両手のない人が顔のメークをできるアプリ」を開発するため、パラリンピックの選手にインタビューを重ねた生徒など、人道的な価値観を備えた“未来の起業家”が次々と育っている。
  
 本年4月、同市のホームページの広報に次の一文が掲載された。「創価学会が提唱する『価値創造』の教育理念が、わが市の学校に根付き、実を結び始めている」

レチシアさん(左端)が生徒たちにエールを送る
レチシアさん(左端)が生徒たちにエールを送る

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【ファクス】03-5360-9613
  
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