〈インタビュー〉 1年ごとに進化する、「俺」と「俺のお茶」の味
〈インタビュー〉 1年ごとに進化する、「俺」と「俺のお茶」の味
2023年2月18日
- 電子版オリジナル連載〈素材心 生産者と食す〉
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電子版オリジナル連載「素材心 生産者と食す」。今回は、奈良県奈良市で収穫・栽培されている「茶」を紹介します。永井光一さん=常勝長(ブロック長)=が経営する「Cha茶Family」で育てられる「お茶」のストーリーを追いました。
電子版オリジナル連載「素材心 生産者と食す」。今回は、奈良県奈良市で収穫・栽培されている「茶」を紹介します。永井光一さん=常勝長(ブロック長)=が経営する「Cha茶Family」で育てられる「お茶」のストーリーを追いました。
――栽培のこだわりを教えてください。
――栽培のこだわりを教えてください。
肥料かな。科学的根拠に基づいて配合した肥料のほかに、魚を加工したものを肥料にしています。そうすることで、独特の甘みをもったお茶が生産できるんです。
肥料かな。科学的根拠に基づいて配合した肥料のほかに、魚を加工したものを肥料にしています。そうすることで、独特の甘みをもったお茶が生産できるんです。
うちの農園は、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として、自然の力で生産された食品に与えられる「有機JAS」の認証を受けたお茶です。
つまり「オーガニック」のお茶なんです。さらに「ASIAGAP」という、信頼できる農場と消費者を結ぶ認証制度や、厳しい審査をクリアした農園にしか与えられない、「レインフォレスト・アライアンス認証」も取得しています。
うちの農園は、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として、自然の力で生産された食品に与えられる「有機JAS」の認証を受けたお茶です。
つまり「オーガニック」のお茶なんです。さらに「ASIAGAP」という、信頼できる農場と消費者を結ぶ認証制度や、厳しい審査をクリアした農園にしか与えられない、「レインフォレスト・アライアンス認証」も取得しています。
――お茶ってたくさんの種類があるんですね。
――お茶ってたくさんの種類があるんですね。
ブランドとしては「静岡茶」や「鹿児島茶」なんかが有名ですよね。うちの農園で作っているお茶は、地域としては「大和茶」にあたります。
お茶は、加工方法によって「緑茶」「ウーロン茶」「紅茶」などに分かれます。その中でも「緑茶」は不発酵茶と呼ばれています。さらに関西方面では栽培段階で茶畑に覆いをする被覆栽培という手法を使い、お茶を栽培します。
新芽の成長期に遮光して葉にうまみ成分を蓄えると、露天で栽培される煎茶(緑茶の一種)にはない、急須で入れた時に、鮮緑色と独特の香りが生まれ、まろやかなお茶になるんです。
ブランドとしては「静岡茶」や「鹿児島茶」なんかが有名ですよね。うちの農園で作っているお茶は、地域としては「大和茶」にあたります。
お茶は、加工方法によって「緑茶」「ウーロン茶」「紅茶」などに分かれます。その中でも「緑茶」は不発酵茶と呼ばれています。さらに関西方面では栽培段階で茶畑に覆いをする被覆栽培という手法を使い、お茶を栽培します。
新芽の成長期に遮光して葉にうまみ成分を蓄えると、露天で栽培される煎茶(緑茶の一種)にはない、急須で入れた時に、鮮緑色と独特の香りが生まれ、まろやかなお茶になるんです。
私の農園では「てん茶(抹茶の原料)」と呼ばれるお茶を中心に生産・加工・販売まで行っています。
〈お茶の世界はものすごく深くて、話し出すと止まらない永井さん(笑)。飲ませていただいた永井さんのお茶は、深緑色で、まろやかな香り、強い甘みとこくのあるお茶でした〉
私の農園では「てん茶(抹茶の原料)」と呼ばれるお茶を中心に生産・加工・販売まで行っています。
〈お茶の世界はものすごく深くて、話し出すと止まらない永井さん(笑)。飲ませていただいた永井さんのお茶は、深緑色で、まろやかな香り、強い甘みとこくのあるお茶でした〉
――確かに深い(笑)。特徴を捉えるのが難しいですね。
――確かに深い(笑)。特徴を捉えるのが難しいですね。
うちの農園で扱っている「深蒸し茶」は、茶葉の形が短く、つぶれていて、やや黄色みを帯びた濃緑色で見た目は粉が多く混じり、見栄えは良いとはいえません。「見た目の良さより、飲んでおいしいお茶」。これが「深蒸し茶」の最大の特徴といえます。
うちの農園で扱っている「深蒸し茶」は、茶葉の形が短く、つぶれていて、やや黄色みを帯びた濃緑色で見た目は粉が多く混じり、見栄えは良いとはいえません。「見た目の良さより、飲んでおいしいお茶」。これが「深蒸し茶」の最大の特徴といえます。
――普段飲んでいる「お茶」の見方が変わってきました。
――普段飲んでいる「お茶」の見方が変わってきました。
お茶の苗は、植えてから収穫できるまで5~6年かかります。でも、1度植えたら30~50年収穫できます。それでも収穫は1年に1度。だから、毎年、お茶に限らずだと思うけど“農家1年生”の気持ちでお茶を育てないと、良いお茶は絶対に収穫できないと思っています。
お茶の苗は、植えてから収穫できるまで5~6年かかります。でも、1度植えたら30~50年収穫できます。それでも収穫は1年に1度。だから、毎年、お茶に限らずだと思うけど“農家1年生”の気持ちでお茶を育てないと、良いお茶は絶対に収穫できないと思っています。
――なぜ、お茶農家になったのですか?
――なぜ、お茶農家になったのですか?
実家は先祖代々の茶農家。私は8代目にあたります。社会人になって2年たつ頃、7代目の父が腰を痛めてしまって。そんな姿を見ていたら、実家に迷惑ばかりかけていられないと思って、後を継ぐ決意をしました。
標高300メートルの場所にある畑は、柳生と呼ばれる地域で、お茶の収穫が“周囲に比べて最も遅い”と言われています。そのため「静岡茶」の収穫がピークの時期に、凍霜害に遭うことも多くて、悩んでいました。
実家は先祖代々の茶農家。私は8代目にあたります。社会人になって2年たつ頃、7代目の父が腰を痛めてしまって。そんな姿を見ていたら、実家に迷惑ばかりかけていられないと思って、後を継ぐ決意をしました。
標高300メートルの場所にある畑は、柳生と呼ばれる地域で、お茶の収穫が“周囲に比べて最も遅い”と言われています。そのため「静岡茶」の収穫がピークの時期に、凍霜害に遭うことも多くて、悩んでいました。
就農当初は父のもとで働いていたんですが、周囲の農家と同じように茶を生産して出荷するだけだと、「大和茶」の価値を見いだせないと思い、独立を志すようになったんです。
信心に励み始めたのもその頃です。創価学会男子部の先輩に誘われて、創価班大学校(当時)に入りました。先輩は厳しくも温かく包み込んでくれました。時には、叱咤激励されることもありましたが、今思えば、“生半可な気持ちで家業を継ぐな”ということだったと思います。
就農当初は父のもとで働いていたんですが、周囲の農家と同じように茶を生産して出荷するだけだと、「大和茶」の価値を見いだせないと思い、独立を志すようになったんです。
信心に励み始めたのもその頃です。創価学会男子部の先輩に誘われて、創価班大学校(当時)に入りました。先輩は厳しくも温かく包み込んでくれました。時には、叱咤激励されることもありましたが、今思えば、“生半可な気持ちで家業を継ぐな”ということだったと思います。
――就農してみて、どうですか?
――就農してみて、どうですか?
父が農業を退いた後の2008年、農家仲間と借金をして、「Cha茶Family」を設立し、共同経営者になりました。その5年後、相方が辞めてしまい、一人で多額の借金を背負ってしまったんです。
父が農業を退いた後の2008年、農家仲間と借金をして、「Cha茶Family」を設立し、共同経営者になりました。その5年後、相方が辞めてしまい、一人で多額の借金を背負ってしまったんです。
起業したばかりで給料もままならないし、妻と子ども2人がいる中での出来事。どうしたらいいか分からず、ただ立ちすくむだけでした。でも、すぐに“良いお茶を生産して見返したろ!”と前を向けたのは、創価学会の同志の励ましがあったのと、先輩が“祈り方”を教えてくれたからだと思うんです。
起業したばかりで給料もままならないし、妻と子ども2人がいる中での出来事。どうしたらいいか分からず、ただ立ちすくむだけでした。でも、すぐに“良いお茶を生産して見返したろ!”と前を向けたのは、創価学会の同志の励ましがあったのと、先輩が“祈り方”を教えてくれたからだと思うんです。
――祈り方ですか?
――祈り方ですか?
永井家は、祖父母の代から信心を始めました。私が、自分から学会活動するようになったのは、社会に出てからです。しかし、就農したての頃は、何かあった時だけ祈るみたいな感じでした。「今の状況をなんとかしてください」というような“神頼み”の感覚でした。でもね、地域の座談会や男子部の会合に参加していくうちに、祈る姿勢が変わっていったんです。
借金を抱えてへこむ私に先輩は、「信心は、熱意をもってやるか、何も考えずにやるかで結果は違ってくる。そしてそれ以上に、行動を起こしていかないと結果はついてこない。だから、その分、功徳もすごいぞ」って、励ましてくれました。
永井家は、祖父母の代から信心を始めました。私が、自分から学会活動するようになったのは、社会に出てからです。しかし、就農したての頃は、何かあった時だけ祈るみたいな感じでした。「今の状況をなんとかしてください」というような“神頼み”の感覚でした。でもね、地域の座談会や男子部の会合に参加していくうちに、祈る姿勢が変わっていったんです。
借金を抱えてへこむ私に先輩は、「信心は、熱意をもってやるか、何も考えずにやるかで結果は違ってくる。そしてそれ以上に、行動を起こしていかないと結果はついてこない。だから、その分、功徳もすごいぞ」って、励ましてくれました。
以来、会合の“一人一言”で決意を述べる場が、私の“誓いの場”になりました。“絶対に実現しよう”って。皆の前で決意すると、自然と仏壇の前に座って唱題するようになったんです。
「てん茶」は、栽培管理によって、仕上がりの味や香り、色に影響するためとても大切な作業です。その年の気候によって芽の出来に違いがあるため、“感覚”が重要な作業でもあるんです。さらに適した湿度も保たねばならないので、収穫期にもなると寝る間も惜しんで加工場で品質管理をします。農閑期は有名な茶農家に教えを請うたり、肥料研究をしたり。そうこうしている間に、茶畑の規模も3ヘクタールから、20ヘクタールまで拡大。借金もまもなく完済します。
以来、会合の“一人一言”で決意を述べる場が、私の“誓いの場”になりました。“絶対に実現しよう”って。皆の前で決意すると、自然と仏壇の前に座って唱題するようになったんです。
「てん茶」は、栽培管理によって、仕上がりの味や香り、色に影響するためとても大切な作業です。その年の気候によって芽の出来に違いがあるため、“感覚”が重要な作業でもあるんです。さらに適した湿度も保たねばならないので、収穫期にもなると寝る間も惜しんで加工場で品質管理をします。農閑期は有名な茶農家に教えを請うたり、肥料研究をしたり。そうこうしている間に、茶畑の規模も3ヘクタールから、20ヘクタールまで拡大。借金もまもなく完済します。
――永井さんの確信が実証に結びついていったんですね。
――永井さんの確信が実証に結びついていったんですね。
そうなんです。希望になったのは、借金返済中、聖教新聞で連載中だった小説『新・人間革命』です。多額の借金を残して行方が分からなくなり、負債を背負った人の体験が描かれていました。その中で山本伸一はこう語っていたんです。
「苦労しなければ、惰弱な人間になってしまう。だから、苦労が大事なんです」
そうなんです。希望になったのは、借金返済中、聖教新聞で連載中だった小説『新・人間革命』です。多額の借金を残して行方が分からなくなり、負債を背負った人の体験が描かれていました。その中で山本伸一はこう語っていたんです。
「苦労しなければ、惰弱な人間になってしまう。だから、苦労が大事なんです」
めちゃくちゃ励まされました。“今が頑張りどきや!”って。
毎年、試行錯誤を重ねていく中で、おいしいお茶が生産できるようになって、今では外資系大手カフェチェーンの抹茶に使われたり、お茶栽培の師匠から「おいしくなった」と言われるようになったり。多くの人に愛されるお茶になったことが、一番うれしいですね!
めちゃくちゃ励まされました。“今が頑張りどきや!”って。
毎年、試行錯誤を重ねていく中で、おいしいお茶が生産できるようになって、今では外資系大手カフェチェーンの抹茶に使われたり、お茶栽培の師匠から「おいしくなった」と言われるようになったり。多くの人に愛されるお茶になったことが、一番うれしいですね!
――すごいですね! 将来の夢はありますか。
――すごいですね! 将来の夢はありますか。
かつて製茶業が盛んだった、私のいる地域も過疎化が進み、耕作放棄地も増えました。将来はそうした土地を茶畑によみがえらせて、雇用を生み、再び活気のある“茶の町”にしたいんです。
間もなく新茶の季節が到来します。ここ奈良は、日本一お茶の収穫が遅い地域としても有名です。それを逆に付加価値として、日本一おいしいお茶を発信していけば、奈良の「大和茶」も有名になるかな?(笑)
かつて製茶業が盛んだった、私のいる地域も過疎化が進み、耕作放棄地も増えました。将来はそうした土地を茶畑によみがえらせて、雇用を生み、再び活気のある“茶の町”にしたいんです。
間もなく新茶の季節が到来します。ここ奈良は、日本一お茶の収穫が遅い地域としても有名です。それを逆に付加価値として、日本一おいしいお茶を発信していけば、奈良の「大和茶」も有名になるかな?(笑)
お茶農家を続けて23年。毎年、味が違うから面白いし、無限の可能性を感じます。味が進化するのは、毎年変わる気候や環境に耐えようとしているから。
もちろん手をかけた分だけ、お茶がおいしくなって応えてくれるから、自分自身も農家として成長し続けていこうって思えるんです。その向上心は、創価学会の活動で培ったといっても過言ではありません。
お茶農家を続けて23年。毎年、味が違うから面白いし、無限の可能性を感じます。味が進化するのは、毎年変わる気候や環境に耐えようとしているから。
もちろん手をかけた分だけ、お茶がおいしくなって応えてくれるから、自分自身も農家として成長し続けていこうって思えるんです。その向上心は、創価学会の活動で培ったといっても過言ではありません。
――ありがとうございました!
――ありがとうございました!
新茶を飲み損ねたと感じたら「大和茶」を思い出してください。ちょうどその時が新茶の季節ですから(笑)。
新茶を飲み損ねたと感じたら「大和茶」を思い出してください。ちょうどその時が新茶の季節ですから(笑)。
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