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〈インタビュー〉 “白いゴーヤー”を見たことはありますか? 記者が初めて聞いた種苗店の仕事 2023年5月20日

こんにちは。
聖教電子版連載「素材心 生産者と食す」担当の石ちゃんです。
写真のコレ、何だかわかりますか?

はい。ゴーヤーなんですね。白いイチゴじゃないですよ。
実はこのゴーヤー、本州などではめったに手に入らないゴーヤーなんです。
え……本州では買えない? 沖縄でしか育たないから? どういうこと? という人も多いと思うので、やってきたのがこちらのお店。

沖縄県那覇市にある「わかば種苗店」です。主に家庭菜園向けの「種」や「苗」を扱っています。ここは今回取材をする照屋清司さん=圏男子部長=のお父さまが社長を務める種苗店です。 

事務所にお邪魔したら、先ほどと同じ“白いゴーヤー”のポスターが貼られていました。なんだこのゴーヤーは……。

そう、照屋さんは、この“白いゴーヤー”「パールゴーヤ」の開発者だったのです。こんな上品で美しいゴーヤーは、見たことがない。これは、さぞかし長い年月をかけて研究を重ねてきたに違いありません。ぜひ、開発のあんなことや、こんなことを聞いてみたい!(ワクワク)

今、「パールゴーヤ」はあるんですか?

残念ながら、まだ収穫時期ではなくて。
種と苗ならあるんですが……(苦笑)。 

でも、完成までの経緯を聞いてください!

ぜひ! ちなみにこのゴーヤー、市場に出回っているんですか?

3年前に農林水産省に認められたばかりともあって、まだ本州では買うことができないゴーヤーです。名付けて「パールゴーヤ」! 

“これが目に入らぬか!”ばりに強調しますね(笑)

だって開発期間7年ですから。「パールゴーヤ」は私がここに就職して初めて開発した「種」の第1号です。このゴーヤーをつくろうと思ったきっかけは、海外視察でオーストラリアや台湾などに行ったことでした。

当たり前ですが「世界には野菜も果物も種苗もたくさんあふれているんだな」と肌で感じたんです。種や環境が違うだけで大きさも、色も、味も違ってくるんだなって。そんなオリジナルの農作物をつくって、地元・沖縄を盛り上げたいと思ったんです。 

沖縄というと、いろいろな面で人気があって、盛り上がっているイメージがありますが……。

確かに観光資源は多いし、沖縄を代表する島野菜だってあります。ゴーヤーもその一つですが、その仲間にもバリエーションがあっていいと思ったんです。

ありがたい話ではあるんですが、沖縄って移住者が多く、沖縄出身者以外の方々が活躍しているんですね。だからもっと地元出身者がさらに深い沖縄の魅力を発信できればと思って、「パールゴーヤ」の開発を決意したんです。確かに“白いゴーヤー”だから、周りの農家さんから白い目で見られたこともありましたが、自分の思いのままに突き進みました。 

そうだったんですね。ちなみに私、種苗店の方にお会いするのは初めてなので楽しみにしていました。

そんな、そんな(笑)。ぜひ種苗の話も聞いてください。 

種苗店って、皆さんにはなじみが薄いかもしれませんが、ホームセンターや園芸専門店に「種」や「苗」を出荷しているのが種苗店なんです。取引先には農家さんも大勢います。

どういうことかというと、「種苗」は「植物の増殖・生産」に必要な種や苗などのことで、種苗店は野菜などの新しい品種を研究したり、開発したりして、種苗を生産から販売までする店のことなんですね。

農作物を育てるのは農家さん。その作物を買い取って、そこから取れる種を選抜するのが僕たちの仕事なんですね。私たちが買い取る農作物は通常、農家さんが商品用に収穫する時期には収穫しません。例えばキュウリなら、大きくなるところまで完熟させ切ったものの中から採種するわけです。

僕もいまだに種苗業がつかめないですけど、種には、大きく区分すると「固定種」と「F1種(交配種)」と呼ばれるものがあって……。

(専門的すぎるので農林水産省のリンクを貼ります)

え……めちゃくちゃ専門的な話!(笑)

すいません(笑)。「わかば種苗店」は、沖縄で70年以上続く老舗で、沖縄の島野菜であるゴーヤーやパパイアの種苗のほかに、観葉植物の苗を大手ホームセンターやJAを中心に販売しています。

結構、種苗店って、手広くやってるんですよ。ホームセンターで栽培技術指導講習をしたり、研究栽培をするために農作業したり。ちなみに、みなさんが見たことあるものだと、こんなものですかね。 

400品種くらい扱っていますよ。種もコンビニのラーメン棚と一緒で、大根だけでも10品種くらいあるんですよ。 

分かりやすい(笑)。 種は一から開発するんですか。

そうです。ほとんどが一から開発するオリジナルの種ですね。僕たちが扱っている「種」と「苗」、それらの遺伝子が違うだけで、こんなに違う農作物ができるんだと思うと、種と苗には魅力がつまっているというか、ときめくというか、「つくりがいがある」という表現が正しいですかね(笑)。見てくださいよ。 

この種一粒から100以上の果実や野菜ができるんですよ!めちゃくちゃワクワクしませんか?

このときめきとワクワクがあったから、「パールゴーヤ」の研究開発にのめりこめたわけです。

なんか僕もワクワクしてきました……(笑)

でも、まさか自分が農業関係の仕事に就こうとは、以前はまったく思ってなかったんです。ましてや、家族がやっている会社に就職なんて……。 

え!? そうだったんですか?

そもそも、人生においてというか、物事において、自発的に「何かをやろう」と捉えるタイプではなかったし、家族の仕事にすら興味が湧かなかったんですね。 

僕、人と話をするのが好きなので、ファッション業界とか、大きい会社の営業でバリバリ動いてる感じの将来のイメージを持っていたし、親元で働くのって“ちょっとかっこ悪いな”とも思っていました。でも、心の奥底では、家族のやっていることを知らないのは“よくないぞ”って感じな思いが少しあったので、高校を卒業した後は県内の農業大学校に進学したんです。 

めちゃくちゃ農業の王道じゃないですか(笑)!

取りあえず農業大学校に行けば“理解できるかな”という単純な理由でした。そんな僕を見た両親は“興味を持ち出したんだな”というような表情を浮かべていたのを覚えています。まあ、今になってみれば自分でもこの道に進んだことは間違いなかったと思います。 

学校で種の勉強をしたり、実際に栽培したりしながら知識を増やしていって、卒業後は実際に農家に就職をして3年間、農業をしていました。 

えぇ! 農家の経験もあったんですか!?

ハマったら、とことんやり始めちゃって(笑)。農作物も、種もそうですが、その年ごとの気候によって生育状況が変わるんですね。

だから常に「なんで」成長しないのか。
「なんで」こうなったんだろうとか。
「なんで」市場がそうなっているんだろうとか。
背景を想像しながら研究を重ねました。
いつも、「なぜ」「なぜ」「なぜ」って考えています。

確かに原因究明しないと、納得できないですもんね。

昔は、そんなに追究するタイプではなかったんです。そこは自分の信仰が影響してるかもしれないですね。もともと両親が創価学会の信仰をしていて、別に僕は熱心でもなんでもなく、頻繁に集まりに行っていたわけでもなかったんですが、23歳の時、男子部の先輩から創価班大学校(当時の創価学会男子部の育成グループ)の話をもらったことが転換点になっていると思います。

〈清司、なんか仕事大変そうだね。学会活動すれば変わるきっかけになるから、創価班大学校入ってみない?〉

その時は今の会社に入社したばかりで、「パールゴーヤ」の開発、ノウハウもないのに園芸講師を任され、覚えることや、やることが多すぎて、僕自身、何度も辞めようとしていました。家族に内緒でハローワークに行ったこともあったくらい追い詰められていたんです。

そんな状況だったんですけど、自分でも“今の環境を変えたい”と思って創価班大学校に入ったんです。先輩は、いつも励ましてくれるんですが、なぜかいつも質問攻めしてくるんですね(笑)。

「今日の聖教新聞に載っている池田先生の指針は“なに”を伝えようとしていたと思う?」「この御書の意味分かる?(分かっているはずなのに聞いてきた)」などなど……。

でも、そうやって一緒に悩んで、一緒に答えが出るまで考えてくれたから、悩みに対しても考えるクセがついたんだと思います。

だから学会活動し出してから「なぜ信心をするんだろう」「なぜ友達に仏法対話するんだろう」「なぜ御書を読んでいるんだろう」と、常に自問自答を繰り返して活動しました。立ち止まった時は必ず先輩が支えてくれました。

(創価の哲学や生き方が社会にどんな価値をもたらし、いかなる意味を持つかを青年世代が訴える「青年想Ⅱ」に創価班メンバーの生き方が掲載されています。ぜひあわせてお読みください)

学会の先輩には苦手な人もいるけど、尊敬できる人もたくさんいました。そんな人になりたいと思える存在だったから、信心にも真剣に向き合えるようになったし、一番は「種」と向き合えるようになったと思います。

信仰を自分の考え方にスパイスとして加えるだけで仕事にもバリエーションが出るってわけですね。

そうですね。種一つ見ても、「なぜ」×100って考えるようになったから「この種があの農家さんに渡ったらこんなふうになるな」とか「この種は発芽時期が遅いからこんなふうになりそうだな」とか、一粒一粒の種からたくさん想像するようになって。物事一つの結果を見ても、きちんとその結果の背景を考えられるようになったんです。

「パールゴーヤ」の開発がその成功例だと思います。開発期間7年間の中で、たくさん疑問を持って、たくさん自問自答して、行動してきました。自腹はたいて、一人で1200坪の畑で試験栽培をしてみたり、夜中に畑で作業しながら作物と一緒に成長過程を感じてみたり(笑)。

す、すごい! 改めて学会の信仰のすごさってそういうところに表れますよね。

本当にそうですね。学会の信仰って、祈ると悩みが整理されて、やる気が湧いてくる。それに活動がついてくるから、大変だけど考え方の幅も広がる。だから種作りにも面白みが出てくるんだなって。自分の心が全て「種」に表れますからね。

一念三千(自身の一念が変われば周囲の環境や状況をも変えていけるという、仏法のダイナミックな原理)」ですね。

(創価学会ドクター部(医学者のグループ)の方が語る「一念三千」)

この考えは、僕からすると一粒から無数の野菜や果実をつける「種」にも言えることだと思っています。  

深いなぁー。あ、「パールゴーヤ」の写真だけでも見せてください!

これです。きれいですよね。 

農林水産省にも認められて、2年前には「パールゴーヤ」の名前も商標登録することができました。でも、通常のゴーヤーよりも採種できる数が極端に少なくて“種屋泣かせ”なんです(泣)。だから、まだまだ研究を積み重ねないといけないんですけどね。 

ありがとうございました! ぜひ、照屋さんの種とパールゴーヤ愛をご覧ください。
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