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ネットニュースに振り回されないために 2023年12月21日

  • 電子版連載【駒崎弘樹の「半径5メートルから社会を変える」】〈63〉

 連載「駒崎弘樹の『半径5メートルから社会を変える』」では、認定NPO法人フローレンス会長の駒崎弘樹さんに、さまざまな社会課題について聞きます。

 インターネット上では、誹謗中傷やフェイクニュースなどの情報があふれています。そういった情報に振り回されず、上手にネットと付き合っていく方法を考えていきます。

 ※今後、取り上げてほしいテーマを募集します。記事の最後に記載したメールアドレス宛てにお送りください。

■どうでもいいのに、どうでもよくないワケ

 ――芸能人の不倫のニュースに触れて、SNS上で憤りの感情をさらけ出す人たちがいます。気持ちは分かる部分もあるのですが、どうしてそこまで過度に反応するのかと不思議に思うこともあります。

 駒崎 芸能人の不倫など、本当は自分にとってどうでもいいニュースだと思いつつも、つい反応して怒りを表明する人たちがいます。ここで大事なのは、そういったニュースが「どうでもいい情報」であることを左脳では分かっていることです。その上で、右脳で感情の部分が反応してイラッとしたり、憤ったりしてしまうわけですが、実はここに自分を知るヒントがあると考えます。

 ――どういうことでしょうか。

 駒崎 不倫のニュースに怒るというのは、もしかしたら、「恐れる」という感情の裏返しなのかもしれません。心のどこかで、自分にとって大切なものが汚されたり、踏みにじられたりするように感じてしまう。これは本人の育ってきた環境や経験によるものなので、無理に否定する必要はありません。むしろ、ちゃんと把握しておくことが大事なんだと思います。

 “そういうふうに感じる自分もいるんだな”と、メタ認知できていれば、今後、不倫のニュースなどがあっても、うまく距離を取ったり、かわしたりできるようになるでしょう。

■すぐに反応しなくてもいい

 ――たしかに、自分を客観視するように努めれば、以前よりも情報に対して冷静に対処できるかもしれません。そのほかにアドバイスはありますか?

 駒崎 「自分を知る」とともに、「相手(発信者)を知る」ことです。ネットメディアやSNSは、視聴率などを稼ぐために、過激な見出しや内容で、執拗に不安をあおったり、正義感をたきつけたりすることが度々あります。ですから、そうした発信者側の意図を知った上で、そこに“餌や養分”を与えないようにするといいでしょう。

 コピーライターの糸井重里さんが以前、“強い言葉を使う人の言葉は少し引いて聞く”という趣旨のことをSNSで言っていて、なるほどなと思いました。
 「今の政府はおかしいから、なくすべきだ!」等、過度に暴力的だったり、センセーショナルだったりする物言いの場合は、少し距離を置いてみるということです。言葉が強いのには、「事実以外の何かが加えられている、もしくは事実のように見せようとする意図があるかもしれない」ということにも考えを巡らせてみるといいでしょう。

 ――情報をうのみにせず、慎重になることが大事だということですね。

 駒崎 特に、誰かを傷つける可能性があるような情報は丁寧に取り扱う必要があります。例えば、「パワハラにあいました」のような訴えなどです。パワハラはあってはならないことですが、反対側の意見も聞いていない段階で、一方的な情報のみを信じて第三者が発信をすれば、どうなるのか。良かれと思ったことが逆に、別の誰かを傷つけてしまう可能性もあるでしょう。
 ですから、そうならないためには、想像力を働かせるとともに、いったん深呼吸をして、「すぐに反応しない」という姿勢もあっていいんです。

 ――SNSの情報に関しては、すぐに反応した方がいいと思いがちなところがありますね。

 駒崎 SNSは人の喜怒哀楽の感情を増幅させることでエンゲージメントを高めようとします。その意味では、精巧につくられた“ドーパミン放出装置”ともいえます。でもSNSに反応しなくても死ぬわけではないですし、SNSがなくても、良き人生を送ることはできます。
 ですので、SNSやメディアと適切な距離を保っていこうとするならば、「自分を客観視すること」と、「強い言葉は少し引いて聞くこと」「一方的な情報で断定しないこと」を意識してみてください。

 ●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ご感想、取り上げてほしいテーマなど、ぜひお寄せください。youth@seikyo-np.jp

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YOUTH

認定NPO法人フローレンス会長。2004年にNPO法人フローレンスを設立し、社会課題解決のため、病児保育、保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組など数々の福祉・支援事業を運営。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長

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