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電子版連載〈WITH あなたと〉 #Z世代 いじめに遭い、今は幼稚園の先生に 2024年2月3日

  • 私らしく生きていい!

 連載「WITH あなたと」では、Z世代(1996年から2010年ごろに生まれた世代)について特集しています。第8回は、小・中学、高校の間、いじめの被害に遭い、今は「子どもの心を育みたい」と幼稚園教諭として奮闘する、大貫亜美さん(東京都江戸川区、華陽リーダー)の歩みを追いました。(取材=深山美香子、中野香峯子)

 初めて、いじめに遭ったのは小学校5年の時だった。仲良しグループの“リーダー格”の子どもと違う意見を言ったことから、仲間外れに。おびえながら過ごす日々が続いた。

 中学校の時は、仲良くなった数人のグループ全員が、いじめに遭った。靴の中に画びょうを入れられていたり、持ち物をトイレに捨てられたり。教室に入れず、学年が上がるにつれ、保健室で過ごす日が多くなった。

 高校に進学し“何かで人に勝るものを持とう”と考えた。そうすれば、いじめられないと思った。
 勉強は苦手。だから体育の授業と、小学3年から始めたダンスに懸けた。ダンス部に入り、発表会や大会では、たびたびセンターのポジションに。「それがまた、周囲の嫉妬を大きくさせたのかもしれません」

 高校3年になり「壮絶な、人生最大のいじめ」が始まった。ダンス部の同学年の女子との間で生まれた誤解が、教室や学年にまで広まり、全員から無視され、物を隠され、廊下を歩けば前から突き飛ばされた。

 “自分は何も悪いことはしていないのだから”と学校に行き続けた。

 「今、いじめられている子に接したら、“学校以外にも居場所は見つかるよ!”と言うけれど、その時の自分は、学校に行くという選択をしました」

 時には、トイレや階段、誰も来ない屋上の片隅で弁当を食べながら、もう消えてしまいたい、とも思った。毎日の昼休みには、母からLINEのメッセージが入る。そのやり取りで、気持ちは独りにならずに済んだ。

 さらに、心の支えとなったのは、中学校時代に母がくれた書籍『希望対話』。そこにつづられた、池田先生のメッセージの数々だった。

 「生きて、生きて、生きぬいてもらいたい。そのために、私が応援します! みんなが応援します! お父さんも、お母さんも味方です。創価学会の先輩も、みんな味方です。だれよりも苦しんだ君は、だれよりも人の心がわかる君なんです。だれよりもつらい思いをしたあなたは、だれよりも人の優しさに敏感なあなたのはずです。そういう人こそが二十一世紀に必要なんです! そういう人が活躍してくれるのを、世界中の人が待ちに待っているのです」

 いじめに苦しむ人へ、池田先生が贈った言葉に触れ、生きようと思った。

 ある日の選択授業で、他のクラスの子が、じっとこちらを見つめてきた。“また、何か思われているのかな”不安で下を向いていると、その子が近寄ってきた。

 「実は私もいじめに遭っていたんだ。私は、亜美ちゃんは悪くないと思っている」と声をかけてくれた。

 『希望対話』には、このようにもつづられていた。「いじめられている人がいたら『自分は味方だ』と伝えてあげてほしい。小さな『ひとこと』が、大きな『支え』になる」

 くしくも、池田先生の言葉通りの行動を起こす人と出会い、親友になった。そして決意した。

 “このまま、高校生活を終わらせてたまるか”――決めたのは、高校最後の文化祭でダンス部のセンターを取ること。朝から晩まで練習し続け、オーディションに臨んだ。3年全員が一斉に演技をし、顧問からセンターとして自分の名が告げられた時は、心の中で“やった!”と叫んだ。

 ドロドロした嫉妬も、生徒同士の“上下関係”も、ダンスという実力勝負の世界には入り込む余地がなかった。
 高校の卒業式の日。自分をいじめていた中心者が言い放ったという言葉を、人づてに聞いた。

 「大貫亜美は、強かった」

 “少しでもいじめをなくしたい。人の痛みを想像できる子どもを育てていきたい”

 そう思い、保育の専門学校を卒業。2歳からの保育も行う幼稚園の教諭として、3年目を迎えた。実際に子どもたちと関わると、悩む場面も多い。

 例えば、2歳で言葉が話せない頃は、周りの幼児をかんでしまったり、体力がついてくれば、より攻撃的になってきたりすることもある。
 
 園の教員たちとも相談し、園児には、何かしらの形で“大好きだよ”と伝えるよう心がけている。誰かに大切にされていることを感じてもらう――それが、子どもたちの幸福感を育み、いじめをなくすことにもつながる。

 「そう思わせてくれたのは、池田華陽会の人たちに出会ったことが関係しているんです」

 中学生になってからは、反抗期も重なり、会合に行く頻度が減った。社会人になり、久々に池田華陽会の会合に参加した時に、驚いた。

 「今日も来てくれてありがとう」「寒い中、お疲れさま」

 そんな言葉は、いじめられてきた8年間、ほとんど、かけてもらったことがなかった。

 「自分と違うタイプや、信心していなかったら仲良しになることもなかったと思う人もいます。でも、それでいじめようとか、一人にさせようとか思う人間は、華陽会には一人もいない。それを感じて、幸せだなあ、こういう場所が世の中に広がったらいいなあと思った」

本人提供
本人提供

 
 一昨年の華陽カレッジでは、仲間とダンスを披露した。

 「華陽会、めちゃくちゃ楽しくて。私、5人きょうだいの長女だから、“お姉ちゃん”がたくさんできて、頼れることがうれしいんです。華陽会は、どんな亜美のことも認めてくれて、私って自分らしく生きていいんだって思わせてくれた大切な居場所です」

 小学生の時に参加していた、学会の「富士鼓笛隊」や「水魚合唱団」の時のメンバーとも再会し、信心に励んでいる。

 これまでの歩みを振り返って、今、いじめを受けている子どもや、つらい思いをしている子どもがいたら、伝えたい。

 「つらい時は周りが見えなくなる。でも、自分を大切に思い、必要としてくれる人は、必ずいる」と。

 これからも池田先生から学んだ、生命尊厳の哲学を胸に、人間教育の道を歩んでいきたい。

 
■電子版連載「WITH」が待望の書籍化

 電子版連載「WITH あなたと」が書籍になりました。タイトルは『「生きづらさ」を抱えたあなたへ』(潮出版社)。メンタルヘルス、ひきこもり、発達障がい、性的マイノリティーをテーマに再構成し、当事者の体験、専門家へのインタビューを収録しています。

 ●最後までお読みいただき、ありがとうございます。ご感想をお寄せください。
 メール youth@seikyo-np.jp
 ファクス 03-5360-9470

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