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第45回SGI提言⑦ 日本で「気候変動と防災」の国連会合を 2020年1月27日

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気候変動を巡る問題に焦点を当て
日本で国連の防災会合を

災害の発生件数が10年で5倍に増加

 第三の提案は、気候変動と防災に関するものです。
 気候変動を巡って取り組みが迫られているのは、温室効果ガスの削減だけではありません。異常気象による被害の拡大を防止するための対応が待ったなしとなっています。
 
 先月、スペインのマドリードで行われた気候変動枠組条約の第25回締約国会議(COP25)でも、この二つの課題を中心に討議が進められました。
 COP25に寄せてNGOのオックスファムが発表した報告によると、気候変動による災害の発生件数は過去10年間で5倍にまで増加しているといいます。
 世界全体でみると、地震などの災害や紛争よりも、気候変動が原因で避難した人数が圧倒的に多い状況が生じているのです。
 
 そこで私は、「気候変動と防災」に関するテーマに特に焦点を当てた国連の会合を日本で行うことを提唱したい。 
 国連防災機関では、各国の政府代表や市民社会の代表などが参加する「防災グローバル・プラットフォーム会合(防災GP会合)」を、2007年から開催してきました。
 2年ごとに会合を重ねる中で、2015年には仙台で行われた第3回「国連防災世界会議」をもってその開催に代えられたほか、昨年5月にスイスのジュネーブで会合が行われた際には、182カ国から4000人が参加して討議が進められました。
 
 今後は3年ごとに開催される予定となっており、2022年に行われる防災GP会合を日本で開催して、異常気象による被害の拡大防止と復興の課題について集中的に討議していってはどうかと思うのです。
 5年前の国連防災世界会議で採択された仙台防災枠組(※注5)では、災害の被災者を2030年までに大幅に減少させるなどの目標が打ち出されました。
 これまで積み上げてきた各国の経験を生かしながら、異常気象による災害についても早急に対策を強化していくことが求められるのではないでしょうか。

昨年12月、スペイン・マドリードで開催された、気候変動枠組条約の第25回締約国会議(時事)。「パリ協定」の運用ルールの中で積み残しとなっていた、温室効果ガスの削減量に関する国際取引の仕組みについては合意が先送りされた
昨年12月、スペイン・マドリードで開催された、気候変動枠組条約の第25回締約国会議(時事)。「パリ協定」の運用ルールの中で積み残しとなっていた、温室効果ガスの削減量に関する国際取引の仕組みについては合意が先送りされた

 すでにインフラ(社会基盤)の整備については、インドの呼び掛けで「災害に強いインフラのための連合」が昨年9月に発足しています。
 これまで重点が置かれてきた地震などの災害への対応だけでなく、気候変動の影響にも強いインフラの構築を目指すグローバルな枠組みで、技術支援や能力開発に関する国際的な連携を進めるものです。
 異常気象による被害が相次ぐ日本もこの連合に参加しており、インドをはじめ他の加盟国と協力しながら、防災GP会合でこの分野における国際指針のとりまとめをリードしていくことを提案したい。
 
 また、防災GP会合の中心議題の一つとして、気候変動と防災に関する自治体の役割をテーマに取り上げ、その連携を大きく広げる機会にしていくべきだと思います。
 現在、国連防災機関が「災害に強い都市の構築」を目指して進めるキャンペーンには、世界の4300を超える自治体が参加しています。そのなかには、モンゴルやバングラデシュのように、すべての市町村がキャンペーンに参加している国も出てきました。
 キャンペーンが始まってから本年で10年になりますが、今後は異常気象への対応に特に重点を置く形で自治体間の連携を進めることが大切になると思います。
 
 世界の人口の4割は海岸線から100キロ以内に住んでおり、その地域では気候変動の影響によるリスクが高まっています。
 日本でも人口の多くが沿岸地域で暮らしています。中国や韓国をはじめ、アジアの沿岸地域の自治体と、「気候変動と防災」という共通課題を巡って互いの経験から学び、災害リスクを軽減するための相乗効果をアジア全体で生み出していくべきだと考えるのです。
 
 本年6月には、アジア太平洋防災閣僚級会議がオーストラリアで行われます。会議を通じて自治体間の連携に関する議論を深め、2022年の防災GP会合でその世界的な展開につなげることを目指していってはどうでしょうか。

2015年3月、宮城・仙台市での第3回「国連防災世界会議」の公式関連行事として開催された、SGI主催のシンポジウム。日本と中国と韓国の市民団体の代表らが出席し、「北東アジアのレジリエンス強化のための防災協力」を巡って活発に意見を交わした
2015年3月、宮城・仙台市での第3回「国連防災世界会議」の公式関連行事として開催された、SGI主催のシンポジウム。日本と中国と韓国の市民団体の代表らが出席し、「北東アジアのレジリエンス強化のための防災協力」を巡って活発に意見を交わした

誰も置き去りにしない社会へ
レジリエンスの強化を推進

障がいのある人を取り巻く状況

 加えて、次回の防災GP会合の開催にあたって呼び掛けたいのは、気候変動で深刻な影響を受ける人々を置き去りにしないための社会づくりについて、重点的に討議を行うことです。
 男女平等と社会的包摂の促進を掲げた昨年のジュネーブでの会合では、登壇者の半数と参加者の4割を女性が占めたほか、120人以上の障がいのある人が参加しました。
 
 SDGsのアドボケート(推進者)の一人で、会合に出席した南アフリカ共和国のエドワード・ンドプ氏は、災害時の社会的包摂への思いをこう述べました。
 「障がい者は世界人口の15%を占める最大のマイノリティー(社会的な少数派)ですが、一貫して存在が忘れられてきました」
 「(災害時に)障がい者を物理的に置き去りにしてしまう行為と、日常生活において排除が障がい者にもたらす極めて現実的な影響とは、つながりがあるのです」と。
 脊髄性筋萎縮症を2歳の頃から患ってきたンドプ氏は、災害が起きた時に最も危険にさらされる人々に対する「社会的な態度の再構築」が必要となると訴えていたのです。
 
 私は、防災と復興を支えるレジリエンス(困難を乗り越える力)の強化といっても、この一点を外してはならないと思います。
 普段の生活の中で「共に生きる」というつながりを幾重にも育む土壌があってこそ、災害発生時から復興への歩みに至るまで、多くの人々の生命と尊厳を守る力を生み出し続けることができるからです。

昨年11月、神奈川青年部が開催したフォーラム。国際通信社INPS編集長のラメシュ・ジャウラ氏が、防災と気候変動をテーマに講演を行った(横浜市の神奈川平和会館で) 
昨年11月、神奈川青年部が開催したフォーラム。国際通信社INPS編集長のラメシュ・ジャウラ氏が、防災と気候変動をテーマに講演を行った(横浜市の神奈川平和会館で) 

 また、ジュネーブ会合での災害とジェンダーを巡る討議でも、“目に映らない存在にされてきた人々”を“目に見える存在”にすることが大切になるとの指摘がありました。
 
 日常生活において女性が置かれている状況は、社会的な慣習や差別意識などによって当たり前のように見なされることが多いために、本当に助けが必要な時に置き去りにされる恐れが強いことが懸念されます。
 例えば、異常気象の影響で避難が必要になった時、女性は家を出るのが最後になることが多いといわれます。男性が離れた場所で働いている場合には、子どもたちや高齢者や病気の家族の世話をする必要があるため、家を出るのが遅れがちになるからです。
 
 しかしその一方で、災害が起きた時に、地域で多くの人々を支える大きな力となってきたのは女性たちにほかなりませんでした。

昼間の星々の譬え

 この点に関し、UNウィメン(国連女性機関)も、次のように留意を促しています。
 被災直後から発揮されるリーダーシップや、地域でのレジリエンスの構築に果たす中心的役割など、防災における女性たちの実質的な貢献とともに、潜在的な貢献は、大きな可能性を持つ社会資産であるにもかかわらず、あまり注目されてこなかった――と。

2018年8月、「持続可能な開発のためのアジア太平洋FBO連合」が、都内で開催した国際討論会。誰も置き去りにしない社会を築くために、信仰を基盤とした団体が果たす役割などについて意見が交わされた
2018年8月、「持続可能な開発のためのアジア太平洋FBO連合」が、都内で開催した国際討論会。誰も置き去りにしない社会を築くために、信仰を基盤とした団体が果たす役割などについて意見が交わされた

 明らかに存在するのに見過ごされがちになるという構造的な問題について考える時、私は大乗仏教の経典に出てくる“昼間の星々”の譬えを思い起こします。
 天空には常に多くの星々が存在し、それぞれが輝きを放っているはずなのに、昼間は太陽の光があるために、星々の存在に意識が向かなくなることを示唆したものです。
 
 日常生活においても災害時においても、地域での支え合いや助け合いの要の存在となってきたのは、女性たちであります。
 地震などの災害に加えて、異常気象への対応策を考える上でも、あらゆる段階で女性の声を反映させることが、地域のレジリエンスの生命線になるのではないでしょうか。
 
 本年は、ジェンダー平等の指針を明確に打ち出した第4回世界女性会議の「北京行動綱領」が採択されて25周年にあたります。
 そこには、こう記されています。
 「女性の地位向上及び女性と男性の平等の達成は、人権の問題であり、社会正義のための条件であって、女性の問題として切り離して見るべきではない。それは、持続可能で公正な、開発された社会を築くための唯一の道である」と。
 このジェンダー平等の精神は、防災においても絶対に欠かせないものです。
 
 その意味から言えば、災害にしても、気候変動に伴う異常気象にしても、インフラ整備などのハード面での防災だけでは、レジリエンスの強化を図ることはできない。
 ジェンダー平等はもとより、日常生活の中で置き去りにされがちであった人々の存在を、地域社会におけるレジリエンスの同心円の中核に据えていくことが、強く求められると訴えたいのです。

2017年5月、メキシコで行われた国連の「防災グローバル・プラットフォーム会合」。展示会場では、SGIがアジア防災・災害救援ネットワークと共同制作した人道展「人間の復興」も設置された
2017年5月、メキシコで行われた国連の「防災グローバル・プラットフォーム会合」。展示会場では、SGIがアジア防災・災害救援ネットワークと共同制作した人道展「人間の復興」も設置された

 私どもSGIも、信仰を基盤にした団体(FBO)として、災害時における緊急支援や、被災地の復興を後押しする活動に取り組む一方で、防災GP会合をはじめとする国際会議に継続して参加してきました。
 2017年のメキシコでの防災GP会合では、「FBOによる地域主導の防災――仙台防災枠組の実践」と題するシンポジウムを行ったほか、キリスト教やイスラム教などさまざまな宗教的背景を持つFBOと協力して共同声明をまとめ、昨年のジュネーブ会合でも引き続いて共同声明を発表してきました。
 
 また2018年3月に、他のFBOの4団体と連携して「持続可能な開発のためのアジア太平洋FBO連合(APFC)」を結成し、同年7月にモンゴルで開催されたアジア防災閣僚級会議に共同声明を提出しました。
 そこには、私たち5団体の共通の決意を込めて、こう記しています。
 「FBOの使命の根幹にあるのは、社会的な弱者を生む根本原因に対処する意志であり、社会の片隅に置かれた人々に希望と幸福をもたらすことである」
 「信仰を基盤にした団体は、防災とレジリエンスの構築と人道的な行動を地域で進める上で重要な役割を果たしている」と。
 
 今後も、この精神を他のFBOと共有しながら、すべての人々の尊厳を守るための社会的包摂のビジョンを掲げて、レジリエンスの強化を後押ししていきたいと思います。

⑧に続く

  * * * * *

 注5 仙台防災枠組
 2015年3月、仙台での第3回国連防災世界会議で採択された国際的な指針。2030年までの防災達成目標として、被災者数の削減や重要インフラの損害の削減などの7項目を掲げたほか、国や地方自治体が優先すべき行動として、災害リスクの理解をはじめ、効果的な応急対応に向けた準備の強化と「より良い復興」などの四つの事項を挙げている。

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